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♯9 GM降臨 ~ギルドにて~

興味のない方は読み飛ばしてください。

解説編です。

説明をしようと会話文で書いたら、本当に長くなり過ぎました。


興味のない方は読み飛ばしてください。←ココ重要

 ◇――◇――◇――◇

 ~前回のあらすじ~

 ▶城下町に出た

 ▶ギルド登録をした

 ▶アイテムストレージが謎の素材で一杯になってる……。

 ◇――◇――◇――◇

 2067年 3月 24日(金) 13:00

 ~{王国南門:ビギナーズギルド}~



 だめだ、完全にバグっている。


 ストレージはもちろん今確認したとおりだが、それだけじゃない。


 辺りの風景がストレージに目を落としているほんの一瞬の間に、モノクロになったのだ。

 石の壁も、観葉植物も、酒樽も、受付嬢も、周りのプレイヤーも。


 しかも時間が止まったかのように、だれも動かない。

 AIのネイティブ達はもちろん、プレイヤーですら息もせずに動かない。


 極めつけに、ここから見える酒場で、勇者パーティーの飲んでいた酒が机から滑り落ちて、中身が飛び出てこぼれる瞬間で止まっている。

 まるで絵画のように。


「いえ、バグではありません。

 お察しのとおり、時を止めたのとおなじようなことですよ」


 背後から声がし、突然過ぎてあまりの恐ろしさに体がビクッと震えた。

 ゆっくりと振り向くと、そこには。


 空間を切り裂いて……という表現しかできないが、まさに空間が縦に引き裂かれ、その裂け目からぴっちりとした営業スーツを着こなした、この世界には似合わない30代ほどの男性が、しゃんと背筋を伸ばして手を前に組み、にこやかに立っていた。

 身長は170センチくらいで、髪はワックスでぴっちりと七三分けにしてある。


「――驚かせてしまいすいません、はじめまして。

 アンリミテッド社、GMゲームマスターコール担当の神崎と申します。

 この度はこちらの不手際で、マーティーさんのスキルが「――――」にかかってしまったことを深くお詫びいたします。

 本当に申し訳ございません」


 GMコール担当……運営!?

 GMゲームマスターが、直々にやってきたのか!?

 突然の出来事に顔を驚愕の表情で固めていると、彼はニカっと笑った。


「そうです、運営ですよ。

 役割としては普通のGMとほとんど変わりませんね。

 ‎そんなに喜んでもらえて私も嬉しいです」


 神崎といった男は片手で頭の後ろをかき、照れているアピールをする。

 いや別に褒めたわけじゃあないんですが。

 というか、この空間は何なんだ?

 時が止まったようなものって言っていたし。


 僕がポカーンとしていると、神崎さんは続けて説明をし始めた。


「あ、この空間のことですか?

 ここはちょうどマーティーさんのいたDWSの世界をまるごとキャプチャして、私とマーティーさんだけのオフライン空間に持ってきたんです。

 なので時が止まったようなところ、という訳です。

 DWSの世界とは切り離された状態なので、あちらはあちらで時間が進んでますよ。

 ‎というか、マーティーさんもなぜ私が来たのか、そろそろ理解が追いついたんじゃないですか?」


 また超技術を。

 ……いや、これはスクリーンショットのように切り取るだけなのだから、そこまで凄いことではないのか。


 運営さんが来た理由なんて、そんなのわかるわけもない。

 僕が首を振ると、神崎さんは喜んで喋りだす。


「そうですか、それなら来た意味がありましたよ!

 あ、今回は報酬を渡すついでに参りましたが、これからは私から出向くことは普通ありません。

 もしも何かあれば、この呼び鈴を鳴らしてください。

 ‎3秒でこのように駆けつけますよ」


 そう言って手渡されたのは執事が持つような、手のひらサイズの、棒にベルがつけられたタイプの呼び鈴だった。

 僕はそれを両手で大事に受け取る。


「このアイテムは一度でもGMがプレイヤーに会うことがあれば渡しています。

 まあそんなことは本当にめったに無いので、多分持っている人は2桁もいないでしょうね。

 ‎一千万人の中の何人に入っているなんて、すごいことですよ!」


 シンバルを叩く猿のおもちゃのように拍手をして、僕のことを小馬鹿にするように褒めてくる。


 というか、本当になんだというのか。

 まあ、思い当たる節はありまくるし、何となく予想はついているが。

 ……うん、そう考えると僕の方も悪かったな。

 神崎さんだって面倒だと感じてるんだろう。


「いえいえ!

 私たちはそんなこと全く思って……はいますが、その分楽しませてもらっているので!

 ‎こんなプレイヤー、久しぶりですよ。

 ‎チュートリアルでイベントボスにラストアタック決めちゃうなんて。

 ‎倒したも同然じゃないですか!!

 チュートリアルでレイドボスを倒しちゃう!!

 うーん、最高!! Fantasticっ!!」


 両腕をピンと伸ばし、のけぞるほどに体を後ろに倒し、空に向かって大声で叫ぶ神崎さん。

 叫んだ後にもそのポーズで静止するから、沈黙が流れる。

 ただただ怖い。


 そして何事もなかったかのようにこちらに向き直り、真顔に戻ってまた話始める。


「‎……失礼しました。

 もちろん、ラストアタック報酬も配られますよ。

 でもこんな運の良さ、通常じゃあ、ありえないですね。

 ‎しかもほんとに偶然だったとは。

 思考解析を使用しても悪意は感じられませんしね。

 ただ純粋にゲームをしていただけでそうなったのなら、否は完全に私達の方にあります」


 そうか、なんか話がテンポよく進むと思ったら僕の思考を読んでたのか。

 白い人と同じ思考解析プログラムの利用だろう。

 僕が納得すると、神崎さんが手をポンッとたたき頷く。


「そうですね、あの導き手(コンダクター)が使っているのと同じです。

 もしこのイベントを乱すハッキング犯だったら、隠していても丸裸にするつもりだったのですが……本当に運がいいだけだったみたいで」


 すいませんでした、と重ねて謝られる。

 僕も心の中で反省すると、こちらこそ、と言ってまた謝った。


「そうだ、問うべきことを忘れていました!

 てっきり悪意のあるプレイヤーだと予測していて。

 なんだか拍子抜けだったのですっかりと失念していましたよ、はは。

 ‎―――マーティーさんはこれからこのDWSを続けて下さいますか?」


 いきなり真顔になって、そんな当たり前の質問を尋ねてきた。

 ピエロかこの人は。

 もちろん、続けるに決まっている。


 どうせ思考を読んでくれるのだから、大きく頷くだけにした。

 この決意は言葉じゃ伝わらないだろうから。


「そこまでこのゲームに思い入れが強いとは、驚きましたよ、はは。

 ありがとうございます。

 ‎運営担当として以前に、開発に関わったものとしてこれ以上嬉しいことはありません。

 ‎……それでは、マーティーさんには2択を選択して頂きたいです。

 ‎今回の緊急イベントの報酬を受け取り素材とスキルレベルもそのままで続けていただくか、それとも報酬無しで素材とスキルレベルをリセットするか。

 ‎出来れば結果発表の17:00までに決めて頂きたいです。

 ‎もし決まらないようなら、後者にさせていただきます。

 ()()()()()()()()()()()()、後者のほうがより楽しめると思いますよ」


 しきりに喜んだ後、にやにやとした顔のまま、声だけは至極真面目に問うてくる。

 いきなりの難題だ。


「ちなみにエナジーについて説明を受けたと思いますが、総スキルレベルが高く、所持エナジーが多いほど弱い敵が逃げていってしまいます。

 ‎これは先行した勇者プレイヤー新米勇者ニュービーの狩る分を狩れないようにするための仕様なのですが、マーティーさんの場合はプレイスキルが育ってもいないのに強敵と戦うことになります。

 そこも考慮して決断してください」


 うぅむ……。

 思わず顎に手を当て、うなってしまう。

 このまま俺TUEEEEで無双ができるなら、したいものだが。


 神崎さんの前で悩んでいると、そういえば、と肝心なことを思い出した。

 なんでこの選択をする必要があるかの説明をまだ受けてないじゃないか。

 僕がそう思うと、神崎さんもハッとした顔で、僕の脳内の疑問に答えた。


「そうそう!

 肝心のこの事件の真相を明かしてませんでしたね!

 でも今から言うことは、かなり面倒な話ですので長くなりますよ?

 とりあえず事の顛末をお伝えしましょう」



~~~~



 そこからの話は、正直完全には聞いていなかった。

 皆も流し聞きしてくれると嬉しい。



「まずあなたは今日の午前(AM)十一時五十五分(11:55)ごろから、王宮の中庭訓練場でスキルを放ちましたね?

 それがはじまりでした」


 白と黒と灰色によって描かれたギルド内部で、僕と神崎さんの二人だけ。

 この異様な空間で、神崎さんは英雄伝説のうたを唄うように、雄弁と語り始めた。


「まず[ストレングスソング]ですが、普段はプレイヤーにかけようとすればパーティー内のメンバーにしか、かかりません。

 ですが今回のような全プレイヤー協力型のイベント時のみ、パーティー枠が撤廃されます。パーティーメンバー以外のプレイヤーにもかけることができるようになるのです。

 加えて発動した【挑発の加護】のパッシブスキル[拡声]の効果により、破壊音でうるさい王宮内からでも、城外に面するバルコニーで待ち構えていた救済NPCに、城内から支援が届いたのです。

 さらに[拡声]は、ただ声を大きくするだけではありませんでした」


 神崎さんの声はなぜか眠りを誘い、聞いているうちにウトウトとしてきた。


「歌唱スキルは『三分間分の歌を聴いて理解できた者』なので、まず聞いてくれなくては意味がないです。

 拡声のスキルは、人工知能(AI)に対して興味を惹かせる、いわゆるヘイトを溜めさせる効果があるのです。

 周囲の人工知能の注意を一瞬でも惹きつけるという役目を果たしたのです。

 しかし、常に惹きつけられるわけではありません。

 人間のネイティブに対して効いたのは、一瞬でも興味を持って貰った後、そのまま聞き続けてくれたからであります。

 きっかけはスキルの力であったものの、それから合計三分間分を聞いてくれたのは、マーティーさんの実力によるものが大きいですね。

 これも一種のプレイスキル、というやつですか。

 制約が多い分、この歌唱スキルには強みがあるんですけどね……」


 なんなんだ、その強み、とは……!?

 教えてもらえたら、ぜひ教えて欲しい。

 だが頼むまでもなく、神崎さんは教えてくれる、と言った。


「それは後程お伝えしますよ。

 なお、この[拡声]とのスキルコンボは既に検証されていて、大半のプレイヤーは知っています。

 しかし【歌唱の加護】のそもそもの効果が薄く、そんな加護のためにもう一つの加護枠を割くなど、非効率この上ないコンボだったので、知っていても、もう扱う人は少ないでしょう」


 そうなのか、てっきり自分が見つけたコンボだと思っていたのに。

 そりゃ声を大きくして歌うことくらい、誰だって気づくわな。

 じゃあなんでそんなタイミングがよいのが、自分一人だけだったんだ?


「ではここで、そんなタイミングがよいのがなぜ自分一人だけだったのか? とも思うでしょう。

 今回のレイドボスは、周囲に高火力の範囲攻撃を、常時まき散らしていました。

 そのため支援系のスキルを持ったものは、誰一人としてレイドボスに近づかなかったのです。

 いや、近づけなかった、のですね。

 支援スキルの構成をするプライヤーは、後衛ポジションなこともありますし。

 救済キャラが王宮に現れたのはイベントの終わり直前、つまり既にレイドボスが王宮のすぐ前まで近づいていたときでした。

 そのため救済キャラに近づく手段は、11時頃以降に王宮内の中庭にログインするしかなかったのです。

 王宮のすぐ外にはレイドボスが待ち構えているので、救済キャラに支援スキルをかけられる範囲内に、王宮の外からは行けるわけがないですからね。

 ……まあ普通なら、[拡声]を使った[ストレングスソング]を撃ったところで届かないでしょう。

 発声方法がなっていない常人なら、こうはならなかったはずです。

 そこもまた合わせて、マーティーさんのプレイスキルチート、リアルチートとも言えますがね。

 なんでそんなに声が大きいんですか……。

 あれですか?

 実はその歳でオペラ歌手とか?』


 オペラ歌手……そういえば昔、遊びでオペラ歌手の発生方法を真似して練習していた頃もあったな。

 自分でも思った以上に声が出て、正直驚いた。


 神崎さんは苦笑したあと、まだ話を続ける。

 ここからはやり直すか選択する理由を話します、と一言置いてから話し始めた。


「今回のイベントでの経験値、素材アイテム、通貨エナジーの入り方は通常の戦闘とは違い、少し特殊なのです。

 まあ「所属:赤」の魔物が結界ルールを破って王国内に入れたこと自体が、既に異常イレギュラーなんですがね。

 スキルへの経験値は通常通り、マーティーさんの[ストレングスソング]が上昇させて与えたダメージに応じてボーナスが入っています。

 この支援スキルの経験値の入り方はデフォルトで鬼畜なのですが……それも後程言います。

 素材アイテムですが、通常は敵を倒してHPを削りきった後に入ります。

 ですが今回の場合はここが特例のようで、プレイヤーが加えた攻撃の一撃一撃に素材アイテムが一つドロップするかの抽選の判定が行われていました。ダメージが大きいほど当たる確率は高いですが、一撃に力を込め過ぎても素材は一個しか手に入りません。抽選が当たるなら、強い一撃よりも弱い多段の攻撃の方が大量のアイテムを獲得できます。つまり一撃のダメージ量が多く、より多段なほどいいという仕組みでした。

 そしてたった0.1%(0.001倍)のSTR上昇でも、アレにかかればマーティーさんが与えたことになるダメージは一撃、数万はくだらないでしょう。

 一万を超えるダメージがあれば、当然100%にほぼ近い確率で何らかの素材を一つ落とします。

 しかもアレは仕組みを理解していたようで、オーバーキルになるほどの高威力連撃を繰り出していましたし、マーティーさんがたくさんの素材を手に入れた理由もそのせいです。

 最後にこの戦闘ではエナジーは手に入りません。

 あまりにもエンドロギアスの所持エナジー量が多すぎて、王国の市場を崩壊させてしまうと管理AIが判断したためでしょう。

 ですが全く手に入らないのもモチベーションが上がらないため、ランキングをつくって賞金制にしたということみたいです」


 ん? GMの神崎さんは、報酬がなんなのか知らなかったみたいな言い方をするな。

 どうしてだ?

 だってゲームを開発したのは運営である神崎さんたちであろう?


「しかも救済キャラを召喚するという事実でさえも、私たちGMゲームマスターも知らない、ゲームシステムの管理AIが下した判断なのです。

 アレがわざわざ出てくるなんて、私たちも思ってもみませんでした。

 つまりマーティーさんがこの結果を得られたことは奇跡、としか言いようがないでしょう。

 ですが偶然とはいえ、あなたが手にした力は大きすぎます。

 まず「支援系統」のスキルは、軒並みレベルが上がりづらいのです。

 そのなかで【歌唱の加護】は、【舞踏の加護】と【演奏の加護】と並んで特に上げづらい。

 支援バフ系のスキルは、上昇した分のダメージがそのまま経験値ボーナスに反映されますから。

 低レベルの時ほど上げづらいのです。

 さらにさらに、根底としてMP消費型とSP消費型のスキルがあるのはご存知ですよね?

 MP消費型は連発ができないため、その分レベルが上がりやすいです。

 ですがSP消費型はSPが時間経過で回復するために、連発がMP消費型よりも可能なので、これらの三つの加護はさらにレベルが上がりづらいですし、倍率もかなり低いです。

 そのため支援と言えば、個人に向けて撃つ、倍率の高い【付与魔術の加護】が真っ先に挙げられます。

 ついで【紋章の加護】ですかね。こちらも対単数のためよく使われます。

 あとは【結界の加護】なんかもMP消費で範囲支援ができるので使われます」


 じゃあ、それこそ【歌唱の加護】は使われない加護じゃないか。

 加護がいくら変更可能だからといって、そこまで差があるのは、何かがあるに違いない。


 そう思うと、神崎さんは「ご名答」と僕に指をさしてつぶやいた。

 先ほどの強み、といっていたことだろうか。


「先に挙げた三つの範囲支援型のSP消費スキルは基本的にパーティーメンバーにしか、かかりません。

 ですが、協力イベント時にこそ真価を発揮します。

 協力系のイベント時のみパーティー制度の枠が参加者の全プレイヤーになるからです。

 前衛に行く実力がないのなら、後方支援か後方魔法スキルの固定砲台をやることになりますので、前者でよく使われます。

 まあその協力イベントも、今回を入れて三回しか開催されたことはありませんが。

 これでお分かりですか?

 【歌唱の加護】のスキルはたしかに使われるときはとことん使われるのですが、普段は物好きにしか使われない、かなり場面を選ぶスキルなのです。

 そのためこの加護のスキルのレベルを中心に上げている人は少ないのです。

 まあ一定数いるにはいますが、[ストレングスソング]というスキルでMAXのLv.100にたどり着いたプレイヤーは未だ一人もいません。

 こちらの想定では、支援スキルはインフレ防止のため、一年ほど経った後にようやく一つのスキルのレベルが100に到達するくらいの予定でしたのに……。

 こんなの裏ストーリークリアよりも難しい、エンドコンテンツ中のエンドコンテンツですよ。

 つまりマーティーさんのスキルは既に異常となってしまいました。

 大きすぎる力は、身を滅ぼしかねません。

 最初に言ったことと、以上が、選択を迫る理由ですね―――」



~~~~



 話が終わってもなお、僕は悩んでいた。


 たしかに神崎さんが言ったとおりの問題もある。

 でも僕が一番危惧しているのは、すぐに飽きてしまうんじゃないか? ということだ。


 待ちに待ったVRゲームを一気に攻略するのは、確かに楽しいだろうが。

 下手したら自分だけ強すぎて、何も面白みを感じられなくなるかもしれないことが、一番恐ろしい。

 まあ他プレイヤーを蹂躙するのも楽しそうだけど。


「飽きるなんてことは、あり得ないと思いますよ?

 なんたって、DWSの世界なんですから。

 今まで辞めていった人の中に、このゲームに飽きが来るほどプレイした人はいませんしね。

 多分、それは“飽き”ではなく“諦め”でしょうし」


 自分の作ったゲームを、そこまで自信満々に言えるとは。

 さすがはアンリミテッド社である。


 ……それだったら前者にするか。


「っ本当ですか!?

 失礼、取り乱してしまいました。

 わかりました、ありがとうございます。

 それでは、のちほどランキング報酬をメッセージにてお渡しいたします。

 本当にいいんですね?」


 僕が大きく頷くのを見るや否や、僕に笑顔で手を振ってから、すぐに踵を返して帰る神崎さん。

 足取りは軽く、スキップをしているようにも見えた。

 だが出てきた時に作っていた次元の隙間に右足を突っ込んだところで、思い出したようにこちらに振り返った。


「そうそう、最後に私から忠告いたします。

 私達から自由を咎めたりするつもりはありません。

 ‎過度な干渉するつもりも今のところはないですし、もし何か制限をしたとしても、それまでの実績を消すようなことは基本的にいたしません。

 それが私たちの理念ですので。

 ―――ですがそれは、自己責任というものがあなたにある、ということです。

 そのスキルを公表するのも“自由”ですが、よ~く考えて行動なさってくださいね。

 人生に後戻り(リセット)は存在しませんから……」


 不吉な言葉を言い残して、次元のはざまに帰っていくのだった。

〜DWSの豆知識〜

【今回の緊急イベント「終焉襲来」について】


システム……全プレイヤーレイド方式


経験値報酬……一撃のダメージに応じて、経験値獲得。


素材報酬……一撃を与える毎に、素材獲得の抽選が入る。そのダメージ量が多いほど、素材が手に入る確率が増える。なお、どの素材が手に入るかは関係がないため、いくらダメージ量が多いからと言って、レアアイテムが当たる確率が増えるわけではない。あくまで素材が手に入るか、入らないかの抽選である。


エナジー報酬……各種ランキングを設定。ランキング報酬にて、エナジーを配当。エンドロギアスのエナジーは莫大であるため、参加のみで相当なエナジー配布が予想される。


救済措置……倒しきれない場合、【始祖の勇者】である「―――」にトドメを刺してもらう。「―――」はランキングに入らないように設定。


※異例の絶対安全圏である王国に侵入してきた魔物である例外なので、イレギュラーな事態発生にも注意。

※期間中、王国北側のNPC店舗、NPC露店もろもろが使用不可能化。

※王国は魔物の進軍によるもので、スキルの影響が無いため、自動修復されないことに注意。→イベント終了後、NPCがプレイヤーへ建築系クエストを発注するよう設定。

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