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♯7 僥倖

〜ここまでのあらすじ〜

▶マーティーはログインし、ついにスキルのチュートリアルを開始する。

▶選んだ加護は【盾術の加護】【鑑定の加護】【光魔術の加護】【歌唱の加護】【挑発の加護】

 それから、何回か試した。

 だって一番やりたかったスキルだもの。

 時間をかけるに決まっている。


 まず、歌っている間はコストとして、SPを消費しているようだ。

 メニューウィンドウとステータスウィンドウを、同時に確認しながら歌っていたから、間違えない。


 3分間歌うことで、SPは30%削れる。

 細かく言えば、6秒間経つと1%がなくなっていった。

 これは[拡声]を使っても使わなくても、変わらなかった。

 拡声はパッシブスキルに分類されるからだ、と推測していたら、これもザヴォルグさんに聞けば後で教えてくれた。


『アクティブスキルは発動時にコストがかかる。[識別]みたいな一部例外もあるがな。

 もしコストが払えないようなら、そもそも発動ができない。

 トグルスキルは発動中にコストがかかる。

 コストが途中で払えなくなると、その地点で発動が終了する。もし効果が発動しきっていない途中でも、だ。

 パッシブスキルは発動時も発動中もコストはかからない。

 上から順に、効果が高いもんだ。

 あと、アクティブスキルは音声での発動、残りは視界のスキル欄から発動することが出来るぞ』


 トグルスキルは発動中コストを支払うと言っていたが、息継ぎをしている間、つまり歌っていない間は、当然SPが減らないようだ。

 スキルをONにして、なおかつ声を出している間が、この歌唱のスキルの発動中、ということか。

 だが初めにキャンセルしたときと同じように、何もせず10秒が経てば歌が終わったと判断され、スキルが自動でOFFになる。

 息継ぎする時間が長すぎてもダメなのか。



 ~~~~



「LaLaLa~♪」


 声を出して約3分が経ったところで、ステータスに変化が現れた。

 ステータスウィンドウの一番下、「状態」という欄に「STR × 1.01」という項目が追加されている。

 そのまま約3分間歌い続けても、またステータスに項目が追加される。

 ただ息継ぎの時間が入るため、正確には3分と少し、といったところか。


 息継ぎ時間は歌唱のスキル発動時間に含まれず、声を出している時間の合計、つまり累計時間が三分経てば効果付与、ということだろう。

 ちなみに、スキルは常時発動状態で、一度効果が出るたびに、いちいちタップしてONにするという必要はなかった。

 発動中は一連のスキル発動、として捉えられるのだろう。


 ~~~~


「少し~♪ 疲れてきたな~♪」


 これも自分が発見した、検証の結果だ。

 自分が歌と認識していれば発動するみたいで、替え歌のようにセリフを歌のように言うことでも、効果の付与が確認できた。


 なお、ミュージカル風に声の抑揚をつけて歌うのはダメだった。

 歌う意識が重要なのだろう。


 そして今歌った言葉のとおり、SPが少なくなることで、だんだんと疲れが出始め大声で歌うこともきつくなってくる。

 気づけばSPは一桁となっていた。

 それまではこんなにきつくなかったんだが……。


「もう~♪ 限界~になr」


 SPがなくなった途端、急にどっと疲れを感じた。

 酸欠になったときのように、意識がすっともっていかれ、体の制御が効かなくなる。

 膝を曲げる間もなく、体の力が抜けた。


 ―――なにが……起こったんだ?

 地面に向かって吸い込まれていくようだった。

 後頭部からゴツンと音を立てて地面にぶつかったが、痛みはカットされているおかげで、鈍いしびれのようなものが自分を襲った。こそばゆい。


『おいっ! 大丈夫か!?』


 今まで見ていたザヴォルグさんが慌てて駆け寄ってくる頃に、ようやくその現象の理解ができた。

 そういえば合唱部時代にも、本気で歌っていると酸欠で倒れたことがあった。

 その感覚によく似ている気がする。


『スキルを発動し続けると、コストによってどんどんSPは少なくなる。

 MPがなくなってくると、エナジー酔いが始まって、平衡感覚が保てなくなる。

 視界がぐるぐる回転して、立つことすらできないぞ。

 SPがなくなってくると、エナジー枯渇が始まって、疲れて体が動かせなくなる。

 勇者達は「酸欠でぶっ倒れる」とか言ってたな』


 ザヴォルグさんとの説明や雑談の途中、SPは1%回復し、かろうじて動けるようになった。

 1%でもあれば、立つことはできるようだ。


『普通はそうなる前に、きつくてやめちまうんだがな。

 まさか、ぶっ倒れるまで歌い続けるとは……。

 やはり俺の見込んだ漢だな!

 ガッハッハッハッハッ!!』 


 なぜか余計に、僕の株が上がりました。



 ~~~~



『そういえば、誰に効果がかかったかを確認する、ログ機能もあるぞ』


 ログ機能は、メニュー画面から選択することが出来た。確かにステータスの下にあったな。

 早速開くと、早くもいろいろな人が僕の歌を聞いてくれていた。


 ◇――◇――◇――◇

『ザヴォルグ・サラマンダーラ』に[ストレングスソング]をかけた

「Drago・Knight」に[ストレングスソング]をかけた

『ドラン・エルフィ』に[ストレングスソング]をかけた

『モーガン・ウィンディーネン』に[ストレングスソング]をかけた

『テリーレン・ノームズ』に[ストレングスソング]をかけた

「ジョン・ドゥ」に[ストレングスソング]をかけた

 ◇――◇――◇――◇


「Drago・Knight」と「ジョン・ドゥ」は名前の文字が緑で、それ以外は青色だ。


「Drago・Knight」さんは多分、さっきからこちらを見ているプレイヤーの方だろう。

 20メートルほど離れたところで、ザヴォルグさんによく似た教官がそばについている、自分と同じ格好をした人だ。

 頭上の緑アイコンに小さく、そう書かれている。

 光魔術の[光球ライトボール]を暴発させた時も、僕が酸欠でぶっ倒れたときも、自分の手を止めてじっと見てきていた。


 それぞれ周りにいた三人の勇者の専属教官も、実はチラチラとこちらを見て、ストレングスソングを盗み聞きしていた。

 三人ともアイコンは青色だ。


 おそらく緑色の名前は勇者プレイヤーであり、青色の名前はNPC、つまりネイティブの人であろう。


 だが「ジョン・ドゥ」という名前の勇者は見当たらない。

 どこから聞いていたのだろうか。

 それに他の勇者プレイヤーにはなんでかかっていないのだろう。


『かかってないのは、単純に聞いてくれなかったからだ。

 そして、普段は他の勇者にはかからない。

 これはちょうど今の、レイドボスと戦うときの協定からきてるな。

 今、王宮には強大な敵が向かっている。

 そういうときはギルドで決められた、「リミットオブカルテット」という制約が解除されて、誰にでも辻支援ができるようになるんだ。

 簡単に言えば、四人パーティーの制限が一時撤廃されるってことだ。

 普段だったら、まだパーティーを誰とも組んでないお前さんは、自分自身にしか支援がかからないぞ。

 イレギュラーなことが試せてよかったな!』


 ザヴォルグさんに質問をすると、背中をバシバシ叩いて即答してくれた。

 さすがは訓練長。

 今まで勇者プレイヤーがスキルを検証するのを見て、仕様についてここまで理解しているとは。

 それか、元々データが組み込まれているのかもしれない。


『「リミテッドオブカルテット」の制約については、ギルドに詳しく聞いてくれ!』


「分かりました、ありがとうございます!」


 その後も、SPを待つことで回復させ、再びスキルを試していた。

 SPは、立ち止まったり、座れば回復していった。

 少しでも歩いていたりして動くと、回復はしない。

 スキルなどで回復速度も変わるのだろうか。


 ―――残り時間が五分を切りました。皆様どうか諦めず、最後まで全力を尽くしてください―――


 歌うことに集中しすぎて、視界の下端にこの文字が映ったことも、全く気付かなかった。




 ~~~~




 2076年 3月 24日(金) 12:00



 ―――終了時刻となりました―――


「ん? なんの終了時刻だ?」


 もしかして、スキルのチュートリアルには時間制限があったのか。

 他にもプレイヤーが来るだろうし、時間交代のためにそういう設定があるのかもしれない。

 他のプレイヤーの三人は既にいなくなり、この訓練場に残るのは僕一人だけだ。


 とりあえずもう[ストレングスソング]の効果検証はいいかな、と思いOFFにしたことでふと気づく。

 そういえば、いつの間にか全く物音がしない。

 歌っている間は集中状態で聞こえなかったが、OFFにしたのに集中状態が続いているのか?


 試しにパン、と柏手を叩いてみたが、普通に聞こえた。

 先ほどSP切れで倒れたときは、スキルがONで発動中であったのに頭がぶつかった音は自分に聞こえなかった。

 つまり今手を叩いて聞こえたということは、スキルに関係なく静かだということだ。

 歌う前と比べて異常なほど静かである。

 まるで台風が過ぎ去った後のようだ。



 ―――過ぎ去った?


 とっさに自分の網膜に移るメニュー画面に描かれた時間を確認する。

 現在の時刻は……。


 ちょうど12:00になったところだった。




『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪』『パラララ、パッパッパー♪『パラララ『パラララ『パラララ……



 途端、頭の中に軽快なトランペットのファンファーレが鳴り響く。

 鳴りやんだと思ったら、またも鳴り、またも鳴り……と繰り返して、頭の中で鳴り続ける。

 音量もかなり大きく、頭がおかしくなりそうだ。

 うるさい、うるさすぎる!!


「止まってくれえええぇぇぇ!!」


 それでも頭の中で鳴り響き続ける。


 ―――そうだ、設定画面!

 この音をなんとか耐えながら、設定画面で音量設定を探したのだった。

 



 ~~~~




 ―――緊急イベント終了です。お疲れ様でした。順位報酬は13:00に配布されます。ランキングの発表は17:00です―――



「ああ、うるさかったぁ……」


 ゲーム内時間で5分くらい経っただろうか。

 ようやく鳴り終わった。


 まずは、何が起こったか整理しよう。


 まっさきに思いついたのは、この遠隔攻撃はレイドボスの最後の攻撃だったのではないか説。

 断末魔の雄たけびで攻撃してきたのではないか。


 ただ、これは違う。

 だってファンファーレが鳴り響いたんだ。

 敵の攻撃がファンファーレだなんて、さすがに間抜けすぎる。

 ましてや死ぬ間際のラストの攻撃だ。

 殺してくる敵を最後に祝福するなんて、狂気の沙汰もいいところだ。


 じゃあ、いったいなんだったんだ。


 全ての音が鳴り止んでしばらくした後、ピコンッという可愛らしい電子音とともに、メッセージが視界の端に浮かんだ。


 ◇――◇――◇――◇

 称号~高火力~

 称号~無双連撃~

 称号〜廃人の始まり〜

 称号~【歌唱】を極めし者~

 を獲得しました。

 ◇――◇――◇――◇


 ……。


 なんか、凄そうな称号をもらえました。


「いや、待て待て待てぇぇ!!

 なんだよ、この恐ろしい称号はよぉ!!」


 ステータス画面を確認すると、たしかに称号の欄に全て存在した。

 どれもオンオフで、表示するかどうかを変えられるようだ。

 ……本当に、何が起こっているのだか。


 取り敢えず、上から順に見ていこう


 ◇――◇――◇――◇

 ~高火力~

 一撃でダメージ一万以上を叩き出した勇者に与えられる称号。

 獲得者数︰21,312

 ◇――◇――◇――◇


 なんの事だが、心当たりがなくてさっぱり。

 ニ万人ということは、プレイヤー人口が一億人だから、五千人に一人が持っているのか。

 数字だけ見たら多く感じるが、かなりの上級者でしか取れない称号なんじゃないか。


 ◇――◇――◇――◇

 ~無双連撃~

 相手のHPを全損させる攻撃、オーバーキルを連続で十回以上当てることに成功した勇者に与えられる称号。

 獲得者数:312

 ◇――◇――◇――◇


 いつの間に無双をしたんですか僕は。

 全く心当たりがないし、ただ歌っていただけです。

 これに至っては取得者数が少なすぎて、レア称号もいいとこだろうよ。


 ◇――◇――◇――◇

 〜廃人の始まり~

 ログイン初期から一週間もたたずにスキルレベルを計50以上、上げた勇者に与えられる称号。

 そこまで急がなくとも、世界はここに存在する。自分のペースで楽しめばいいじゃない。

 獲得者数︰600,586,668

 ◇――◇――◇――◇


 これはまあ、取りやすい称号なんだろう。現に総プレイヤー数の半分以上が獲得しているようだ。

 皆やりこみ過ぎだろ。

 どれか一つを50にするのは難しいかもしれないが、大抵こういうのは満遍なく上げればすぐ達成できるのかもしれない。


 と、ここまではまぁいいんだよ。

 問題は最後だ。


 ◇――◇――◇――◇

 ~【歌唱】を極めし者~

 【歌唱の加護】によって覚えられるスキルのうち、どれか一つをLv.100にした者に与えられる称号。

 獲得者数︰3

 ◇――◇――◇――◇



 獲得者数、たったの3。



「おいおいおいおいおいおい」


『どうした?

 もうチュートリアルをやめるか?』


 いや、ザヴォルグさん、そんな目で見ないでください。こんな状況だもの、独り言ぐらい許してくださいよ。

 GMコールがあれば聞き出したい。


 彼は僕が黙っているままを肯定と捉えたのか、最後の話をし始めた。


 『……よし、スキルのチュートリアルはこれで終了だな。

 それにしても君の歌は、あの【歌唱王】ドン・パヴァロッティフの歌声を思い出した。

 懐かしかったよ、ありがとう』


 遠い目をしながら、唐突に僕の知らない人名が出てきた。

 これは、もしかして、もしかしなくても、ゲームに重要な人物なんじゃないか?

 訳のわからない現象は一度置いといて……いや簡単に置いとけはしないが、それでも今はその人について知りたい。


「あの、歌唱王ドン・パヴァロッティフって、どんな方なんですか?」


『彼は……一言で言えばうるさかったな』


 それから『もっと聞きたいか?』と聞かれたので、ぜひ、と答えた。

 ゲームのレアキャラの情報なら、ぜひ知っておきたい。

 ザヴォルグさんは一呼吸おいて、続きを語りだす。


『それはもう、大きな声だった。

 彼の声は、彼が幼い時からよく知っておったよ。

 息子みたいなもんだった。

 いつも歌ばかり歌っておって。

 そのおかげか、習得したスキルで王国の希望と、もてはやされたもんだ』


 彼のことがまるで自分のことのように、ふふっと自嘲気味に笑った。


『……だが先の、君たち勇者の先代―――ジョンドゥが召喚されるきっかけとなった第二次魔物世界侵攻によって、失った。

 狙われたんだ、支援は厄介だからな。

 今や王国に歌を響かせる、王国の希望となったネイティブはいない。

 彼の話は結局勇者の英雄譚に埋もれて、忘れ去られたよ』 


 お互いの間に、沈黙が訪れた。


「すいません、立ち入ったことを聞いてしまって……」


 ゲームに出てくる有名人物だと思って、深く聞いてしまったのが悪かった。

 ザヴォルグさんは、どんな気持ちなんだろうか。

 NPCなのに、という言葉が出てくる余裕がなかった。

 ただただ、僕は話をしてくれたザヴォルグさんのことを見つめていた。


 でも、ここでもまた気になる一人の人物名が出てきた。


「あの、何度も聞いて、すいません。答えにくかったら、答えていただたかなくて大丈夫なんですが……。

 そのジョン・ドゥって方に、先程ストレングスソングで支援がかかりまして―――」


『んなにっ!? 本当かっ!!』


 悲しそうな目つきから打って変わって、目を見開いて僕を穴が開くほど見つめてくるザヴォルグさん。その驚き様は、今日一番の表情だった。


『そうか、あの一番弟子が帰ってきたか……。今回城を救ったのも彼……いや、もしかしたらそれも彼の策略かもな。

 知らないことを聞くのはいいことだ、おかげで俺も助かった。

 ……よし、最後に、俺から大事なことを伝える。

 よく聞け』


 ザヴォルグさんは神妙な顔つきで、顔にしわをいくつも刻み、一言一言を渋い声で呟く。

 

『俺らネイティブは、外から来た君たち勇者には到底及ばん。

 加護もそうだが、食べ物だって、衣服だって、建物だって、お前らの作ったものはどれも素晴らしい。

 俺らは力だけでなく、技術でも劣っている。

 だからどうか、俺らを助けておくれ。

 お主の力で、この世界を、人間にとってよりよい方向に導いてくれ』


 今まで見ていた2Dゲームのムービーであれば、ただ声優が吹き替えたアニメであるが、これは違う。

 生身の人間が、自分達を救ってくれと懇願しているのと変わらない。

 王女と時と同じだ。


「分かりました、ザヴォルグさん。

 全身全霊をもって、この国をお救いいたします!」


 ロールプレイを本気でやるなんて馬鹿馬鹿しい、と思う人もいるかもしれない。

 だけどこの世界の生きる人(ネイティブ)に魅せられたら、そんなことは微塵も思わないだろう。

 放った言葉は本心だし、それを受け取ったザヴォルグさんもいい笑顔を返してくれた。


『ガッハッハッハッハッ!!

 それでこそ勇者だ!

 ではまず、王宮の正門からまっすぐ出て、この国の南門付近にある「冒険者ギルド」というところで冒険者登録をしてこい!

 そして、とにかくこの国に貢献するんだ!

 すればするほど、より難しいクエストを任せられる。

 そうやって、どんどん強くなっていくんだ……』


 訓練長はどこか儚げにそう呟いた。

 視線は空の彼方であった。

 はじめとは打って変わって静かになったこの美しい中庭で、彼は哀愁を漂わせるような雰囲気であった。


「分かりました、頑張ります!」


 ザヴォルグさんは、言い残したことはない、とでも言外に伝えるように、さっぱりと一言『おう、頑張れ』とだけ告げた。

 そして、王宮から出る門のところまで見送ってくれた。



 さあ、街に出よう。



〜DWS豆知識〜

 【スキルチュートリアルの中庭】

 王宮建物内部のみ、チャンネル式のオフライン空間のため、ここはオンライン空間である。

 外と繋がる空間は、どこもオンライン空間。

 そのため、同じ教官たちは一人しか存在しない。

 なお、精霊王から加護を授かった教官も四人存在し、空いていればその人たちに当たるようになっている。混んでいると、先着四名。あとは通常の衛兵が行う。

 【称号】

 称号に特殊効果は存在しなく、もしあるとしたら、『特殊スキルなどをもっているため、称号が得られた』という形で付与されている。

 だが、称号によって隠しパラメータであるNPCに対しての親密度が増減するんじゃないか、という意見もあり、検証班にて検証されている。親密度は数値化することが難しく、難航を極めている。

 称号は名前の下に常に表示されるが、隠すこともできるため、好きな称号だけ見せることが可能。

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