♯4 世界は既にハジマっていて、「主人公」がいなくても進んでいた
とにかく説明が多いため、後程それをまとめたものを出します。
面倒になったら読み飛ばして頂いて構いません。
自分の前に並ぶ文字列に対して、一個ずつ慎重に読み進めていく。
戦闘用は【剣術の加護】、【槍術の加護】、【弓術の加護】、【拳術の加護】などなど20種類以上の武器の加護や、【火魔術の加護】、【水魔術の加護】などの魔法の加護がある。
ゲームの基本である支援の【付与魔術の加護】だったり、回復の【回復魔術の加護】だってある。
生産だと【調薬の加護】、【錬金の加護】、【鍛冶の加護】、【料理の加護】、【絵描の加護】とか。
それこそ50種類ほど行くんじゃないだろうか。
他にも【跳躍の加護】や【察知の加護】など汎用性が高そうなものがあったり、面白そうなものだと【味覚の加護】だとか【嗅覚の加護】、【視覚の加護】といった五感強化系、【掘削の加護】や【釣りの加護】といった採取系のものまで。
【水泳の加護】や【走術の加護】なんていうのは必要なのだろうか……?
他のスキルを強化できそうなスキルを持ちそうな【詠唱の加護】や【瞑想の加護】なんてのも。
【紋章の加護】とかいう、中二病まっさかりのような加護まで。
【忍術の加護】って面白そうだな。
『レベルには加護レベルと、スキルレベルがあります。
加護レベルは、その加護で覚えられるスキルを使用する度に、熟練度が上昇することで、レベルアップします。
この加護レベルが上がることで、次のスキルが習得できますね。
スキルのレベルはスキル一つ一つに設定されており、そのスキルを使用する回数に加え、そのスキルの及ぼした影響でレベルアップします。
例えば【剣術の加護】の初期スキル[スラッシュ]を発動したとき、急所に当てた方がダメージが通ります。
その場合、獲得スキル経験値もダメージが多い方が増加するのです。
もちろん、こちらは敵の強さによっても変わります。
加護レベルは使った回数、スキルレベルはそれに加えて有効に使えたかどうか、という判定です』
加護レベルとスキルレベル、か。
これまたややこしいが、加護レベルをあげれば使えるスキルが増え、そのスキルを使えばより強くなるのか。
ずっと初期のスキルを極め続けるのも面白そうだし、ジャンジャン新しいスキルを使っていくのも楽しそうだ。
『加護についての質問はありますか?』
もちろん、ありまくりだ。
質問していいことなら、全部片っ端から聞いていきたい。
大きく、激しく頷くと、白い人は少したじろいだ。
『思考が湯水のようにあふれていますね。
それでも百聞は一見に如かずといいますし、物は試しです。
やってみるのが一番早いので、どうしても、ということだけ口に出してもらってもいいですか?』
「うーん……」
顎に手をあてて考え込む。
でも、調べようとすれば大抵はネットに乗っているだろうしな。
詰んでしまうようだったら、最悪調べればいいだけだ。
「じゃあ、この【剣術の加護】っていうのを取らないと剣が振れないとか、ダメージが入らないとかってあるんですかね?」
こういうシステムについてだけは、聞いておかないと、後々損することになりそうだ。
白い人は小さく頷き、質問にテレパシーで答える。
『それは半分正解で半分不正解ですね。
武器系の加護のスキルを取ると、「思考解析プログラム」で思考にあわせて自然と武器が動かせるようになる、スキルが使えるようになります』
ということは、加護がなくてもダメージ自体は発生するのか?
『はい、あなた方の世界を元にした物理演算プログラムで基本的にダメージは計算されます。
ただスキルを使わないボクサーのパンチと、スキルを使った一般人のパンチでは、スキルを使った方が圧倒的に強いですね。
スキルによりますが、レベル1スキルで、一般人でも岩が砕けるようになるほどです。
これがスキルの恩恵です』
そうか、スキルを使うことが何よりも重要ってわけか。
現実の世界にはいるわけがないバケモノと戦うのだ。
それぐらいの必殺技がなければ、ただの現代人はまともに戦えないだろう。
いくら加護をもっているからといって、スキルを覚えなくては意味がない、ということでもあるな。
じゃあ、スキルを使うとシステムに振り回されるのか?
『使い方が悪いとそうなりますね。
慣れれば、こう動かしたいという意思をうまく出し、武器をアバターの手先のように動かすことができます。
スキルによっては軌道が確実に決まっているものもありますが、それもイメージがあるとないとではかなり違います。
半分不正解、というのはこのことで、このアシストがないと武器を振り回せない方が大半だからです。
普段武器なんて振り回す機会がないですからね。
ですから、とくに重たい武器のスキルほど効果を実感できます。
それこそ説明するよりも、実際に使ってみたほうがよいでしょう』
確かに、百聞は一見に如かずだ。
いくらでも取りかえられるのだしやってみよう。
それともう一つ。
武器系の加護のスキルは武器の動きをアシストする、といっていたが、拳で殴るとかはどうなるのだろう。
『【拳術の加護】の場合は殴るときに追加効果を付与する、という意味合いが強いですね。
スキル発動時には一時的にですが、拳を武器と同じように扱うことができるので、武器を使わないで強力な攻撃が敵に通るようになる、というかなりの利点があります』
武器を使わないでもよい便利な加護か。
確かにリアルな戦いでは、武器が敵に取られたり武器を落としてしまう、とかありそうだからかなり有用そうだ。
剣道でも試合中に竹刀を落とすことは度々ある。
それが試合でなく命を懸けた戦いだからこそ、その一瞬が命取りとなる。
『ほかにもありましたらどうぞ。
ですが、やはり何事も実際に試す方が良いと思われます』
たしかにそうだ。
早く決めてイベントに間に合わせるとしよう。
『では、加護を5つお決めください』
~~~~
案外加護を決めるのには苦労しなかった。
実はやってみたい役があったし。
まず一つ目の加護は、
◇――◇――◇――◇
【鑑定の加護】
加護レベル: 1/3
熟練度: 0/2000
加護レベルアップまであと: 2000
習得スキル
●[識別]Lv.1
●[鑑定](加護レベル2で習得)
●[看破](加護レベル3で習得)
◇――◇――◇――◇
言わずもがな、鑑定大先生だ。
危険な敵と出会った時も、この加護のスキルのおかげで敵の弱点を知り、生き残ることができたという小説をよく読んだものだ。
この世界に通じるのかは分からないが、すぐに情報が調達できるという点で、かなり優れたものだと思う。
そして、二つ目はこれだ。
◇――◇――◇――◇
【盾術の加護】
加護レベル: 1/5
熟練度: 0/1000
加護レベルアップまであと: 1000
習得スキル
●[クイックムーヴ]Lv.1
●[シールドバッシュ](加護レベル2で習得)
●[ワイド・S・ガード](加護レベル3で習得)
●[犠牲の盾](加護レベル4で習得)
●[完全防御](加護レベル5で習得)
◇――◇――◇――◇
盾なんて持ったことがないし、入れて間違いではないはずだ。
重たい両手盾なら、加護の恩恵も最大限に受けられる。
片手に剣をもつスタイルなら、安定して戦える。
敵のHPが多く、長期戦が当たり前とネットに載っていて、消耗戦になると考えたので入れてみた。
それなら自分も倒されなければいい、という作戦である。
そして三つ目は、
◇――◇――◇――◇
【挑発の加護】
加護レベル: 1/3
熟練度: 0/1000
加護レベルアップまであと: 1000
習得スキル
●[拡声]Lv.1
●[カリスマの光](加護レベル2で習得)
●[存在証明](加護レベル3で習得)
◇――◇――◇――◇
ヘイト獲得スキル、つまり敵の注意を惹きつけるための加護だ。
パーティーを組んだ際に重宝されるのはタンク役、つまり敵の攻撃を受け止める役。
こちらに向けさせてから、盾スキルによってがっちりと相手の攻撃を無効化できれば、怖い物はない。
四つ目には、
◇――◇――◇――◇
【光魔術の加護】
加護レベル: 1/5
熟練度: 0/1000
次のレベルまであと: 1000
習得スキル
●[光球]Lv.1
●[光の祝福](加護レベル2で習得)
● [光矢](加護レベル3で習得)
●[光熱線](加護レベル4で習得)
●[光の審判](加護レベル5で習得)
◇――◇――◇――◇
第二スキルの開放で回復用スキルが覚えられる加護だ。
【回復術の加護】もあったのだが、こちらを選択。
なぜかって? 盾をもって味方を守るのだもの、聖騎士のロールプレイに決まってるじゃないか!
聖騎士といえば光魔術、みたいなイメージがあるからこちらを選んだ。
回復までできれば、サポート最強だろう。
敵の攻撃を全部受け止めて、減った体力は自分で回復していく。
その間に味方に攻撃を加えてもらえば、どんな敵でもハメ倒すことができる。
そういえばMPを消費するスキルだが、どうやらMPの回復手段は乏しいらしく、魔術系加護は入れても一つらしい。昨日のサイトに書いてあったのを見てしまい、少し後悔したのを覚えている。
そして、ラストの加護は、
◇――◇――◇――◇
【歌唱の加護】
加護レベル: 1/4
熟練度: 0/1000
次のレベルまであと: 1000
習得スキル
●[怪力の歌]Lv.1
●[忍耐の歌](加護レベル2で習得)
●[命の歌](加護レベル3で習得)
●[聖なる鎮魂歌](加護レベル4で習得)
◇――◇――◇――◇
味方を補助する支援スキル。
これで完全なる支援型の完成だ!!
なぜ歌唱にしたかって?
ポイントは戦場でも、街中でも、いつでも歌えるってとこだよ。
熟練度もスキルレベルも上げやすそうだし。
え? 恥ずかしい?
歌うことに関してだけ、そんな気持ちは、ゲームだから以前にそもそも持ち合わせていない。
単純に、僕は歌が好きだ。
むしろこれが一番ではあるのだが。
好きなことがゲームの中でもできて、もしかしたら歌がうまい人としてゲーム内で有名になれるかもと思うと、これ以上僕に合う加護はなかった。
この加護を見つけることが出来て、幸運だった。
ゲーム内で心置きなく歌えるのは素直に嬉しい。
『お決まりでしょうか?』
「はい、コレでよろしくお願いします」
加護を選ぶだけで楽しくて、自信満々に笑顔で答える。
笑顔、ではなくニヤニヤと表現するのかもしれない。
だが白い人はすぐに肯定せず、忠告をした。
『攻撃用の加護を1つは必ず入れておいてください。
もちろん、初期スキルで攻撃用のスキルが覚えられる加護と言う意味です。
必ず王女に言って、一つは交換してもらうように。
じゃないとろくに戦闘ができませんよ』
あ、そうなのか……。
そりゃスキルをバンバン使わないと、一般人には魔物に勝てっこないよな。
まあとりあえず今はこれでいいか。
『では、ここからは説明に入りたいと思います。
デスペナルティについてお話します』
白い人は忠告はもうしたから、と説明を淡々と続けていく。
『それでは、まずはあなた方の存在からお話しします。
こちらの世界であなた方の体は、エナジーと仮りそめの魂の二つで構成されています。
もし傷ができたとき、勇者のあなた方は本来の世界で赤い血液を流すでしょうが、この世界では「エナジー」を流してしまいます。
基本は魂が核となり、エナジーを魂に纏うことでアバターが成り立っています。
ここまではよろしいでしょうか?』
とりあえずそういうものだ、として捉え、ゆっくりとうなずく。
またかなり凝った設定が作りこまれていそうだな。
中二病真っ盛りなら、本当にゲームの中に異世界があるんじゃないかと信じ込むくらいに。
白い人はテレパシーを再び流し始める。
『なにか分からないことがあったら、気軽に質問してください。
それでは続きを話します。
勇者はこの世界の中では本当の意味で死にません。
なぜならあなた方の本当の魂は、違う世界に取り残されたままなのですから。
もし死んだ場合、王宮内の礼拝堂にてエナジーが集まることで体が構成され、その体に仮初の魂が宿ることで復活を遂げます』
ほう、つまり僕らはアンデッドということだ。
入れ物があればいくらでも蘇ることができる。
しかも思考能力があるアンデッドだ。
加護やスキルがなくても、これだけでも勇者っていうのは十分チートな設定だよな。
「復活、というのは大体どのくらい時間がかかるんですか?」
デスペナルティの重さによって、このゲームの難易度もかなり変わるぞ。
『あなた方の世界で12時間が経過すると体の構成が完了します。
あなたが初めに、スキャンを受けてから半日待ってもらったのもそのためです。
今頃は、王宮の召喚師たちが、あなたの体を作り終わったところでしょう』
そうか! そういう意味が、あのもどかしい時間にあったのか!
後付けの設定だったとしても妙に納得のいく設定だ。
でも、半日ログインできないのはでかいなあ……。
ゲームをやらせてくれない時間があればあるほど、他のプレイヤーとも差がついてしまう。
というか、デスペナでログイン不能時間をつけるなんて、ゲームとしては変わってるな。
おそらく、1回現実世界で落ち着いてから、もう一度出直してこいということだろう。
死ぬ記憶があるのなら、それはトラウマになりかねないからな。
『このデスペナルティの時間ですが、あなた方が所持してお金として扱う通貨用エナジーを、体を構成する生命エナジーに転換して使用することで、縮めることができます。
具体的には、1,000エナジーで一時間縮み、12,000エナジーを支払うことで時間的なペナルティは、なしになります。
まあ、皆さんすぐに払うことができるので、実質この時間ペナルティーはなしに等しいです』
――――金は命になる、か。
この言葉がしっくりくる。
時間を買う、という言い方もできる。
……ん?
でも実質なしに等しい?
それじゃあ、なんのためにあるデスペナルティなんだ?
疑問を抱いたが、白い人はそれに返答せず話を続けた。
『また、勇者と魔物―――所属が緑と赤の存在ですね。
これは倒した際に、素材、経験値、通貨エナジーを獲得することができます。
自分が倒された場合も同様に、相手に渡ります。
さらに勇者の死亡時には、街に一度も持ち込んでいないアイテムは全てその場にドロップしてしまいます。消費した消耗品はもちろん戻ってきません。
経験値も同じで、いくらフィールドでレベルアップをしていようと、一度王国に戻らなければ、死ぬことでリセットされます。
よいアイテムをゲットしたり、レベルアップをしたら、欲張らずにその場で探索を中断し、街に一度でいいので戻ってきましょう。
装備は例外的に落とすことはありません』
アイテムと経験値のリセット、所持金ロスのデスペナルティまであるのか。
死に戻り覚悟の当たって砕けろで、よりレベルの高いエリアに行けたとしても意味がない、と。
オープンフィールドで、初心者が一気に強いエリアまで行けてしまうからの対応策であろう。
そうだとしてもかなり重たいな。
そりゃ速度重視の魔法スキルでガス欠になるよりは、安定したスキルを選ぶ必要があるわけだ。
『もちろんエナジーは他人に譲渡することができません。
装備品の類も、市場を通してでないと譲渡ができません。
先ほども質問された「勇者自身にレベルはないのか」ということですが、スキルのレベルの成長合計、通貨エナジーの所持量、ステータスの合計値によって、より強い魔物に当たるかどうかが変わります。
上の三要素が多いということは、生態系ピラミッドの中で上位に存在する、ということになります』
つまり上の3つを鍛えれば鍛えるほど、より強い敵と戦ってさらに強くなれるのか。
所持しているお金まで強さに関わってくるのは意外だ。
多分これは格上のプレイヤーが弱い魔物を狩りつくし続けて、新規プレイヤーや初心者プレイヤーが魔物を狩れなくなるのを防ぐためだろう。
そういえば、ログアウトしたら自分の体はどうなってしまうのだろうか。
「あの、今だって体だけが礼拝堂にあると言ってましたし、もしかしてその場に残ってしまうとか?」
『はい、その通りです。
ログアウトをする、ということは体から魂を抜くことと同義です。
街の中でも安全ではありますが、NPCの方に心配されてしまいます。
できるだけ王宮の自室で行うか、宿などを取り、そこでログアウトをお願いします。
どちらも、入っている間は、誰かが押しかけてくることはないはずです。
あ、あちらの世界ではNPCのことを「ネイティブ」と呼んでいるのも、忘れないでください』
路上で酔い潰れているようにたくさんの勇者が突っ伏してる光景は、シュールを通り越して恐怖そのものである。
街の景観は損なわれること間違いなしだ。
『ここまで長々とお聞きくださり、ありがとうございます。
あと二つです。
PKについてお話ししたいと思います。
王国の結界が及ばない、一定以上離れた地区に限り、勇者同士で戦闘を行うことができます。
もちろん、倒すという“意志”を持った攻撃でないと勇者同士の攻撃は当たらないです。
これも「思考解析プログラム」の賜物ですね。
フレンドリーファイアで味方を殺してしまうことはないので、ご安心ください』
「よかった、味方殺しはないんですね」
VRだとやってしまった時の罪悪感が重たそうだからな。
『もしも勇者が「所属:青or緑」を倒してしまわれますと、倒した側の勇者は「所属」が緑から赤に変わり、頭上の名前は赤色文字に変わります。レッドネーム、というやつですね。
さらに貢献度ポイントはリセットで、GRが初期に戻り、以降「所属:緑」になるには様々な条件が課せられます。
条件をクリアすれば、どの門の横にもいる門番の方からギルドカード再発行のクエストを受けられるのですが……今まで無事に「所属:緑」に戻られた方は少ないですね。
「所属:赤」ですと、「魔物不可侵結界」によって王国に入ることすらできなくなります』
「勇者が魔物に墜ちる、ですか」
そこまでしてPKなんてする人は……多分いないだろう。
『当然ログアウト時はフィールド上にアバターが残りますし、倒されたときは王宮内の礼拝堂で復活することができません。
死んでから12時間以内に、即時復活に必要なエナジーの百倍、つまり1,200,000エナジーを一度に支払わなければ復活しません。
なお、例外的に、復活時はその場で復活し、礼拝堂で復活はしません。
復活が出来ない場合、以降そのアバターでログインすることができなくなります』
やはりVRはリアルだからか、制裁は厳しい。
このゲームの血の表現は、エナジーの放出という形で光のポリゴンが飛び散るだけに変わっているし、痛覚もほぼなしにカットしてある。
正座をし続けたときのような“痺れ”を感じるだけらしい。
だが犯罪を助長してしまうかもしれない、という可能性はぬぐい切ることができないからこその、厳しめな措置なのだろう。
百二十万エナジーがどれほどなのか分からないが、払えなければアカウント凍結というのは恐ろしい。
せっかく育てたアバターがなくなるのだもの、ショックはでかいだろう。
意思がなければ殺せないとは言っていたが、万が一間違ってしまったらと思うと危ないな。
常に気をつけるようにしよう。
『最後に、あなたにエナジーと、初期装備と、アイテムを授けます。
武器は各種、加護のチュートリアルを受ければもらうことができます』
そう告げられると、一瞬のうちにして自分の着替えが完了する。
全身を麻で編まれた生地の布でくるまれて、少しゴワゴワする。
足元には靴が履かせられ、浮いている感覚のまま足が覆われた。
手には銀でできた、大きめの鍵が持たされている。
30センチはありそうなピカピカの鍵、なにに使うのだろうか。
『それで、加護を変えていただける気には?』
「すいません、後で変えるので今はこれで」
僕は笑顔で大きくうなずく。
今はとにかく早くゲームを始めたい。
無理なら無理で一度戦闘してから思い知るのも悪くない。
白い人は僕を見て呆れたようで、最後の言葉を紡ぎ始めた。
『それでは、あちらでも準備が完了しているようなので、これからあなたをお送りします。
これからの空間、王宮の室内は、プレイヤー1人1人が並行世界に別れるので、あなたしかいません。
まあいわゆる、チャンネル式の一人用サーバーみたいなものです。
室内から一歩でも出ると、本当の世界の始まりです。
この先どんなことをしても自由ですが、あちらの世界の住人、ネイティブの方々もあなたと同じ様に、その世界で生きている、という事だけは忘れないように。
この世界を開発されてから、あなた方“プレイヤー”が初めて訪れるまでに、ゲーム内ではすでに何千年かの歴史が有りますからね。
それに今は、人工知能の人権についても騒がれていますので。
自由とは、責任が常につきまとうことをお忘れなく。
では、あなたに素晴らしい人生を……』
言葉の最後が聞こえるか聞こえないかのところで、鍵が手元からひとりでに空を開き、現れた真っ黒の空間が出現する。
その黒い空間は自分を覆っていき、またも意識がスッと持っていかれた―――。
いや、鍵ってそういう使い方じゃないだろ。
◇――◇――◇――◇
《名前》 :none
《所属》 :緑
《種族》 :勇者
《称号》 :none
《残り生命エナジー》:
HP:100/100
MP:100/100
SP:100/100
《GR》 :none
《クラン》:none
《貢献度》:0
《所持通貨エナジー》:
100,000
《装備》:
【初心者の服】VIT+1 ←NEW
【初心者の靴】VIT+1 ←NEW
【none】
【none】
【none】
《アクセサリー》:
【初心者のカバン】 ←NEW
《保有加護》:
【鑑定の加護】加護Lv. 1/3 ←NEW
【盾術の加護】加護Lv. 1/5 ←NEW
【挑発の加護】加護Lv. 1/3 ←NEW
【光魔術の加護】加護Lv.1/5 ←NEW
【歌唱の加護】加護Lv. 1/5 ←NEW
《能力補正値合計》:
STR:0
VIT:2 ←NEW
INT:0
MIN:0
DEX:0
《スキル》:
[識別]Lv.1
[クイックムーヴ]Lv.1
[拡声]Lv.1
[光球]Lv.1
[ストレングスソング]Lv.1
《状態変化》:none
◇――◇――◇――◇
2018/01/04 ・主人公の種族を人間→勇者に修正 ・ステータスの文字表記を修正