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【改稿前】チュートリアルでレイドボス倒しちゃってスイマセンでしたっ!! ~支援歌【エンハンソング】の悪用法を検証し成り上がる~   作者: デウス・X・マーティー
第二章  【初心者応援】 ドキドキ!? 春のサバイバルイースターエッグ祭り 【公式イベント】
20/22

19話 最強装備を金にモノ言わせてゲットだぜ! ~鍛冶屋ロリコソにて~

 ◇――◇――◇――◇

 ~前回のあらすじ~

 ▶自身のSTRで自滅!

 ▶残り時間を採集に費やし、イベント一日目が終了

 ▶「マッドサイエンティスト」というプレイヤーについての説明

 ▶「鍛冶屋ロリコソ」にて装備と能力補正値いわゆるステータスの説明

 ◇――◇――◇――◇

 店内で、ガラスケースに並べられた武器や防具、アクセサリーを見ていく。

 どれも高価なのが値段を見なくとも一目で分かる。

 高級感あふれるせいで、初心者の自分がいてもいい空間とは思えない。


 だが、その中でもいいものを見つけた。


「……お、これとか自分にあう効果じゃないか!!」


 ■△▼△▼△▼△▼△■

 【白兎(びゃくと)の懐中時計】

 分類:アクセサリー

 武器種:ネックレス

 所有者:ソフィア・ロリコソ・ノームズ

 STR:0 VIT:0 INT:0 MIN:0 DEX:0

 所持スキル:

 [状態変化延長]Lv.100

 ▶備考

「不思議の国のアリス」に出てくる白ウサギの懐中時計をモチーフにした装備。

 現在、553 個が出回っている。

 ■▽▲▽▲▽▲▽▲▽■



 ◇――◇――◇――◇

 ●[状態変化延長]

 Lv.100―固定―

 経験値:――

 分類:パッシブスキル

 ▶備考

 使用者にかかる状態変化の効果時間が延長される。

 ◇――◇――◇――◇



 ケースの中にあったのは、あの不思議の国の住人のウサギが持っていたような、かわいらしい金色の懐中時計。

 大きさは拳大であり、金の鎖によって首からかけられるようだ。

 時刻はきちんと現在時刻を示しているが、秒針が動く速度が異常に遅い。

 体感時間が二倍に伸びているのを、うまく調節して時間が進むようにしているのだろう。


「この装備、いいですね!!」


 僕が盾の時よりも興奮して尋ねると、ソフィアさんはう~んとうなりながら答えた。


『その装備かぁ……うーん。

 状態変化の効果時間を元の効果時間分プラスする、つまり1つ着ければ二倍、2つ着ければ三倍に伸びるようになる。

 たしかにそれだけ見れば強え。

 だがスキルは強くても、能力値補正が全部0なんだよなぁ……。

 追い打ちかけるように、敵の弱体化デバフ攻撃ですら効果時間が延長されるから、現環境じゃ使えやしねぇ。

 だがレアっちゃあレアだからな。

 今なら100,000(十万)エナジーで売ってやってもいいぜ』


 ……あれ?

 思ったより高くない……!?


 ()()()()……10万円?


『ま、これは上級者が使う、支援がパーティーにいるときに使うもんだ。

 初心者は使わんもんでぃ。

 またお金が貯まったら買いに来てくれればいい。

 それまでオレがとって置いてやるよ!』


 僕が動揺の顔を浮かべると、ソフィアさんは勘違いしたようで、僕にニヤニヤと笑いながら慰めの言葉をかけてくれた。

 先輩としての優しさをかけるドヤ顔が、子供っぽい無邪気な笑顔でかわいい。


 十万エナジーというと、たしか自分の初期金額全てだったか。

 そんなもん今なら、はした金だ。

 てっきり報酬のエナジーがインフレしているから、この世界の武器の価格もインフレしていると思ったのだが……。

 安いことに損はない、ぜひ買おう。


「ありがとうございます、じゃあ100,000エナジーで」


 そういうと、ソフィアさんは驚いたようにこちらを見て目をぱちくりさせる。


『お、おいおい、大丈夫か……?

 初期金額全部使っちまうきか?

 本当にいいんだな?

 後戻りはできないぞ?

 これで他の剣とかアイテムが買えなくて泣きついて来ても知らないぞ?』


 必死にソフィアさんは止めようとするも、僕は笑顔で答えた。

 なんたって所持金は一億を超えているのだから。


「はい、大丈夫です!

 でもこれ、なんで時計のアクセサリーがこの鍛冶屋にあるんですか?」


『そりゃもちろん、ソウたちのクランから買い取ってるからな。

 勇者たちが言う、現名装備リアルネームアイテムってやつだ』


 たしかソウもそんな名前を出していた気がするが、それはなんなんだ?

 僕がぽかーんとして、首をかしげているとざっくりと説明してくれた。


『とりあえず、現名装備っていうのはスキルがついたレア装備で、ゴッズダンジョンはそれが手に入るダンジョンのことだ!

 あー、現名装備やゴッズダンジョン、放浪魔物や魔物ランクの話は、王女様かソウ坊、四人衆に聞いてくれ!!

 オレは説明するのに疲れた!!』


 なにかと文句を言いながらでも教えてくれるあたり、ソフィアさんはいい人というのが伺える。

 聞いたらなんでも答えてくれるので、ついつい全部聞いちゃうんだよな。


 そしてまたも、知らない単語が出てきた。

 湯水のように新しいことがあふれ出すな。

 これも聞くしかない。


「……四人衆とはなんなんですか?」


『あー! またやっちまった!

 しょうがない、それは教えてやる!

 四人衆ってのはこの王国の唯一の戦闘系ネイティブの生き残り、精霊から加護を受けた精名をもらった王国騎士四人衆伝説、最強のカルテット、この国の最後の希望だぜ。

 まあ今じゃ四人とも老いぼれて王宮で隠居生活しているらしいがな』


 もしかしたらそれって、ザヴォルグさんのことだろうか……?

 チュートリアルからかなりすごい人に教えてもらっていたのかもしれない。

 最後の希望って、大袈裟過ぎるとは思うが。


 そうだ、ソフィアさんならもしかしたら、【歌唱王】について何か知っているかもしれない。

 昨日【歌唱王】についてネット上のヒットするワードを検索したが、どれもDWSには関係ないことばかりで、結局見つからなかったからな。


「ありがとうございます。

 ……あ、あとそれと、ソフィアさんは『歌唱王ドン・パバロッティフ』という方をご存知ですか?」


 だがソフィアさんは難しい顔をして、首を横に振った。


『んー、知らないな。

 なんせオレがこの王国にやってきたのは、第一次人魔大戦が終わった後だったからな。

 もうあらかたの戦力になる人間は全て死んだ後だった。

 そのおかげで亜人と呼ばれるオレがこの王国で店を構えられるんだがよ。

 あとはほんと、大通りのハーフのドワーフのおっちゃんのおかげだ。彼には足を向けて寝れねーぜ。

 あ、オレはクォーターのドワーフだから、そこんとこよろしくな。

 ……ついでに現存するネイティブについても教えるか?』


 ソフィアさんの質問に当然うなずいた。

 こういった情報収集も、RPGの醍醐味だ。

 僕はしきりに頷いて熱心に聞いていた。


『そんなにオレの話に興味があるのか!

 そうだな、あと有名なネイティブといえば……。

 銀細工のシルバニアさん、木工師のモコさん、王国調薬師の婆ちゃん、呉服店の裁縫爺、あと釣具屋のスズキさんとかも実は強いって有名だな。

 王国最高級レストランオーナーのトニーさんに、芸術家のアトーリエさん、建築家のミネクラさん、考古学者のインディーさん、【懺悔王】のエドさん、農家のトキオさん、大通り商店のローガンスさん、美容師のカットリーヌさん。

 それと王国を語るに忘れちゃいけねえ、歯車技師の【機構王】ギア二スト。

 あとはさっきも言った大通り鍛冶屋のハーフドワーフのおっちゃんか。

 あ、あと錬金術師とかいう胡散臭いのも一人だけいたな。

 名前はたしか……ラブラブだっけな?

 残っているのは全員、多分非戦闘系のネイティブだな』


 言われた人を、逐一メモをとる。

 多分、生産系のスキルのマニュアルモードの詳しいやり方を説明してくれるNPCたちだろう。

 初めの方にマニュアルがどう、とかこぼしてたしな。


『オレが知ってるのはそれくらいかあ。

 あ、あと調教師のハーフエルフたちの集団が、この国にやってきてるって聞いたぜ。

 多分勇者の変革に合わせたもんだろうな。

 祭りにも参加するだろうし、運が良ければなにか話せるんじゃねーか?

 エルフも長命だし、もしかしたらその【歌唱王】っていう人について知ってるかもしれねえ』


「ほんとうですか!?

 ありがとうございます!」


 やった!

 これで歌唱に関するレアNPCを見つけられるかもしれない。


 今更だが、なぜこんなにも僕が彼を探すのに躍起になっているのかって?

 それは当然、この【歌唱の加護】を使ってトッププレイヤーに追いつきたいからだ。

 神崎さんが言っていた強みというのも、彼を見つけられれば解明できそうだし、マニュアルモードの説明のように裏技が存在するのかもしれないと思っている。


 勝手な妄想だが、それで違うとしても、僕によく似た歌声をぜひ一度会って聞いてみたい。

 できればデュエットとかしたいな……。


 そうと決まれば、その時までにこの世界の歌とかも覚えとかなきゃいけない。

 やることがまた一つ増えた。


『おーい、聞いているか?』


「すいません、考え事をしてました」


 ソフィアさんはお前が聞いてきたのに……といって、呆れた顔でやれやれと首をかしげている。

 すぐ考えにふけっちゃってすいません。


『まあ、オレから教えられることもこれくらいだな。

 そいじゃそいつを買ってくんだっけな。

 ちょっと待て、今値段をいじるから……っと。

 よし、できた。

 自分のギルドカードをそのネックレスにかざして、YESをタップしてくれ』



 ◇――◇――◇――◇

 【白兎びゃくとの懐中時計】を購入しますか? (残り 4個)

 所有者:ソフィア・ロリコソ・ノームズ → マーティー

 必要エナジー:100,000 エナジー

 購入個数:1個

 ▶YES

  NO

 ◇――◇――◇――◇



 ギルドカードはICカードか何かなんだろうか……。

 ときたま出てくる超テクノロジーはこの世界に似合わない。

 だがまあ便利だから、否定することはないけれども。


『よし、出来たか。

 じゃあまた何かあったらいつでも来てくれ!

 ソウに免じていくらでも教えてやる!』


 両腕を組んで仁王立ちし、にんまりと笑顔を浮かべるソフィアさん。

 その背伸びしている姿が実にかわいらしい。

 何度も言うが、僕はロリコンではない。





「あ、そうだ。

 たしかVITの値って、体の物理的な頑丈さを上げるんでしたよね?」


『そうでぃ。

 それがどうした?』


「もしSTRだけが極端に高くて、VITが極端に低い時。

 そういうときって、どうなりますか?」


 僕の質問に、ソフィアさんは両腕を組んで堂々と答える。


『そりゃもちろん、下手したら体が動くだけで悲鳴を上げて自壊する。

 VITが高けりゃ高いほどいいっていったのはそのためだ』


 うわ、そんなことにまでなるのか。

 VITの能力補正値が0だったから、あんな現象が起きてしまったんだ。

 だが一つ疑問が残る。


「僕の[ストレングスソング]ですが、STRが0なのに、何倍かしても意味ってあるんですかね?」


 僕が昨日起こったイベントでの出来事、STRが高すぎて自滅した話をすると、ソフィアさんは腹をかかえて笑い出した。


『くっはっはっは!! そいつぁ傑作だっ!! はっはっは!!

 ……装備って言うのはあくまで補正。

 もともと生物には基準のステータスがあって、勇者はそれを装備で引き上げているにすぎねえ。

 当然1.1倍っていうのは装備だけじゃなく、生身の体に影響を及ぼすんでぃ』


 なんだ、そういう意味だったのか。

 てっきりSTRの値は0だから、歌っても熟練度上げにしか意味がないと思っていた。


 ソフィアさんが笑うのを落ち着かせたところで、僕は本題にはいった。


「その、もしよければでいいんですが。

 あのソフィアさんの最高傑作、売ってくれませんか?

 えー、……『オレロリコン=アイギス』。

 ……名前言うだけでも恥ずかしいなぁ。

 たしか、売れ残りなんですよね?」


 僕はこれ以上に無いほど、にんまりと笑顔を浮かべた。


『はいはい、あの「オレロリコン=アイギス」だな』


「え、いいんですか?」


『そりゃもちろん、なんでもうちの店は売れるなら売るぜ。

 オレロリコ……って、は?』


 適当に相槌をうって合わせていたソフィアさんは、僕の言っていることに気付いて、驚きの声をまたもあげて笑い転げた。


『おめえ何言ってんだ?

 初心者が買えるわけねえだろっ!!

 くっはっはっは!!

 オレをどんだけ笑わせてぇんだよ!

 いつか買えるようになったらな、いいぜ、くれてやる!』


 またもソフィアさんはひとしきり笑った後、僕に()()()()()()


「それじゃあ、お言葉に甘えて!」


 店の奥のあの盾まで、足を運ぶ。



 ◇――◇――◇――◇

 【オレロリコン=アイギス】を購入しますか? (残り 1個)

 所有者:ソフィア・ロリコソ・ノームズ → マーティー

 必要エナジー:66,500,000 エナジー

 購入個数:1個

 ▶YES

  NO

 ◇――◇――◇――◇


 やはり最強を名乗るだけあって、値段が桁違いだ。

 六千万、四捨五入して七千万円。


 名前が不名誉ではあるが、これで自分の力のせいで自滅する、なんてことはなくなるはずだ。


「ありがとうございます、これでなんとかやっていけそうです!」


 僕が盾を自分のストレージにしまうと、ソフィアさんは喜んだ顔でこちらに笑顔を向けて答えた。



『おう! その盾も使ってもらえないでここに飾られるよりかは嬉しいはずだ!

 大事に使って、くれ、よ……。

 ……って、ふえええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??』




 ソフィアさんの驚き声が、店内中にこだました。

 狭い店内のため、甲高い声は反響してエコーがかかって聞こえた。


「ソフィアさん、おそらく素のロリキャラが戻ってますよ」


『おい! おめえさん!

 今なにした!?』


「だから、購入を……」


『いいや、こんな大金、初心者が持っているはずがねえ!

 まさか盗んだな?

 返せ! ほら!

 衛兵呼ぶぞ!』


「っちょ! 痛っ!

 強い!

 ソフィアさんのSTR高すぎですって!!」


 それからこれまでの事情を説明して、納得してもらえるまでに、約二時間がかかったのであった……。

 これなら驚かせようとするべきではなかったなぁ。

 



 ~~~~




 同時刻


 {王国:路地裏・東}



 路地裏の光が全く当たらない場所で。

 男が一人、壁に寄りかかってぶつぶつとつぶやいている。


『やはりあの存在、非常に気にナル……。

 なんなのデスカ、あのちぐはぐな存在ハ。

 まるで井の中の神魔。

 あの入れ物に力が収まりきっていないじゃないデスカ……』


 真っ黒のロングコートに全身を包み、顔に日が全く当たらないようペストマスクを被ったその声の主は、ただただ先ほどの存在に懐疑の念を抱く。


『まるで人という枠に閉じ込められた神のよう二……。

 もしや、あれが……いや、それはないはずデス……。

 では一体全体……』


 雨に当てられるのも全く気にせず、雨ざらしにされながらも思考をめぐらすことはやめない。


『私をあぶりだすために気づかないふりをしているのカ、はたまた本当に気づいていないのカ。

 一体、彼は何者なんでショウ……。

 次は私から声をかけてみましょうかネ……』

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