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【改稿前】チュートリアルでレイドボス倒しちゃってスイマセンでしたっ!! ~支援歌【エンハンソング】の悪用法を検証し成り上がる~   作者: デウス・X・マーティー
第二章  【初心者応援】 ドキドキ!? 春のサバイバルイースターエッグ祭り 【公式イベント】
17/22

16話 魔王ヘル=ラース・オークの出現 と 密会

 ◇――◇――◇――◇

 ~前回のあらすじ~

 ▶イベント一日目開始だが、上級者エリアに入れられる。

 ▶「ラース・ゴブリン」にボコボコにされる。

 ▶だが、ボーナスエリアを発見! ……。

 ▶一日目の目標は「採集でいろいろ集める!!」

 ◇――◇――◇――◇

「めっちゃある、めっちゃある!

 とってもとっても、取りつくせないんじゃないか!?」


 タマゴバイキングというボーナスエリアに突入し、ようやく努力が報われる……という矢先。



 ―――ズドン。


 あと数メートルという距離で、僕とタマゴの間に、何か巨大な物体が降ってきた。

 突然のことであり、予期せぬ出来事のため、思わずしりもちをついてその場に倒れこんでしまう。


『グオォォ……』


 身長3メートルの巨体、横綱のような体型。

 人型であるが、顔だけは豚である。

 その肥った体についているのは、見た目に反して全てが躍動する筋肉。

 毒々しい黄色の皮膚に、強烈な悪臭。

 体を纏うのは腰蓑こしみのだけであり、手に持つのは、禍々しいほどの黒さを持つ、2メートルはありそうな巨大こん棒。


 生物の直感的に悟ってしまう。


 ―――こいつにはどうあがいても勝てない、と。


「なんだ……なんなんだよ、こいつ……」


 先ほどのラースゴブリンなんて比にならない恐ろしさ。

 身長の高さ、体格の良さでまず足がすくみ、その場から動けなくなる。

 表示しっぱなしのステータス画面には、ご丁寧に【状態変化:恐慌】の文字が。


「か、か、[鑑定]!!」



 ◇――◇――◇――◇

 【ヘル=ラース・オーク】

 Lv.―[識別]で判定不可―

 ランク:魔王

 名前:―[識別]で判定不可―

 所属:赤

 種族:―[識別]で判定不可―

 種族スキル:―[識別]で判定不可―

 所持スキル:―[識別]で判定不可―

 ◇――◇――◇――◇



 ランク、魔王。


 ヘルラースオークはこちらを睨みつけて一歩も動かない。

 ここは絶対に通さない、と目で訴えかけてくるように。


「いや、僕なにも取ろうとはしてないです……!!

 ただここを通りがかっただけでして……」


『グオォウ?』


 そう言い訳をすると、僕の言葉を理解したのか、さっきまでの殺気はどこへやら。

 途端におとなしくなって、僕に背を向けて、タマゴを通り越して歩き始めていった。


「なんだ……よかった」


 ほっと胸をなでおろして、立ち上がる。

 緊張が取れると、恐慌状態も解除された。


「それじゃあ、今のうちに……」


 オークがいなくなったのを見計らって、タマゴを頂くとしましょう!!


 一個、二個、三個、四個……。

 あ、やばい、オークと目が合った。


『―――グルオォォォォ!!』


「急げ急げ、早くストレージに詰め込まなきゃ……!!」


 オークが力をこめて腰を落とすと、下半身の筋肉が、これでもかと収縮する。

 持っているこん棒を思い切り上に振りかぶって、こん棒の勢いと共に激しい跳躍をした。


 地面が震え、大気が揺れた。


 ゴブリンしかり、この島の魔物はどれもジャンプ攻撃を得意とするようだ……なんて冷静な分析をしていると。


 今度は一撃で殺された。




 ~~~~




 {夢幻の島:北の海岸}

 イベント一日目 残り時間 11時間:00分:36秒



「よしよし、これでタマゴはまだ残っているな!!」


 作戦大成功!

 やはりドロップしたのは一つだけで、残りのタマゴ9個は全て手元に残っている。


「それじゃあここで待機としま―――」


 ―――ズドン。


 突如、飛来してくる謎の物体により、僕はまたも死んだ。

 復活リスポーンした瞬間に、やられた。

 何が起こったのか、理解が追い付かなかった。



「ちょっとちょっと!

 何が起こっているんだ!?」


 理解が追い付かない。

 だが、即時復活すると、やはりもうその攻撃してきたものはいなかった。


「よし、毎回ランダムでリスポーン地点は決まるから―――」


 ―――ズドン。


 またも、死んだ。

 それはタマゴがなくなるまで繰り返された。


「え―――」


 ―――ズシン。


「ちょっと―――」


 ―――ゴズン。


「待て!! 話せば分か―――」


 ―――ドスリ。


「返す! 返すかr―――」


 ―――ゴツン。


「ちょm―――」


 ―――ドズン。



 ~~~~



 {夢幻の島:北の海岸}

 イベント一日目 残り時間 10時間:50分:20秒


「プレイヤーのレベル別にリスポーン地点が分けられているし、クラン単位で復活リスポーンが可能なのは、難易度が高いことへの救済処置……。

 これはおそらく……いや、確実に詰みだ」


 タマゴを手に入れている限り、なぜか知らないが魔物は寄ってくる。

 そしてタマゴがなくなるまで攻撃される。


 さらに、どこまでも追跡してきて、タマゴを無くすまで復活後即殺し(リスキル)してくるクソオーク。

 1つ安全地帯に持ち込めたからそのまま籠城しておけばいい……と思っていたのに。

 まさか砂浜は安全地帯でないとは。

 それほど、この超難易度の北エリアは甘くないらしい。


「これだったら[ストレングスソング]はリセットして、報酬をもらわないほうが良かったかもなぁ……」


 今更ながら神崎さんと出会ったあの時の選択を後悔し、言われたことを思い出した。

 『身の丈に合わない力は身を滅ぼします』だっけか。

 たしかにそうだ。

 後悔先に立たず、本当に悔やまれる。

 まさかペットを飼うのに、こんなにも厳しい条件を突きつけられるとは。


「でもデスペナルティがないのがせめてもの救いだなぁ。

 スキルのレベルアップは着実にしているし。

 ……いや、デスペナルティがあれば、タマゴが2個手に入ったときにやめられたのに。

 んー、どうしよう……」


 誰もいない静かな海岸線。

 自然と独り言が漏れてしまう。


「とりあえず海岸線を歩いてみるか……」


 ついでに[ストレングスソング]をONにして、熟練度を貯めながら悲しみの歌を歌い、とぼとぼと歩いて行くのだった。






 歩いても歩いても、変わらない景色が続く。

 海は常にきれいな水平線を引いているし、森は生き物の声で溢れている。

 時刻を確認すると、すでにこちらの時間で1時間が経過していた。


 歩くたびに砂に足を取られるところは、リアルを忠実に再現している。

 蹴るたびに跳ね上がる砂が、時たま靴の中に入り、少しジャリジャリする。

 ここは再現しなくてもいいほどに気持ちが悪い。

 相変わらず細かすぎる。

 どんな強靭なサーバーを使っているのだろうか。


「お、きれいな貝殻だ」


 ふと足元を見ると、キラキラと輝くものが。

 右手でそっと拾い上げるとそれは、虹色に輝く貝殻であった。

 加護レベルが上がり解放された[鑑定]を使うと、その貝殻がレインボーシェルというものだとわかった。


「そういえば、このイベントはタマゴだけじゃないもんな!

 今日のところは採集を楽しんでおくか」


 手をかかげて太陽の光を当てると、なぜか透明にもなる不思議な貝殻だった。


「これもそうだが、どんだけこのゲームは自由なんだよ……」


 落ちているもの全てがアイテムと判定されて拾えるなんて、自由度が高すぎじゃないだろうか。

 いくら科学技術が進歩しているからって、オーバーテクノロジーもいいところである。


 それに、たった三日のイベントに、オリジナルフィールドまで作るなんて。

 どれだけ金が有り余って、なおかつ優秀な人材がアンリミテッド社にそろっているのだろうか。


 ま、そんなことを僕が考えたところで、この現状が変わるわけではない。

 もうタマゴだけに執着しないで、今後はこの安全な海岸で、アイテムに専念しよう。



 ~~~~



 {夢幻の島:北の果て}

 イベント一日目 残り時間 9時間:58分:01秒



 さらに歌いながら採集をしながら、一時間以上歩くと、海岸の岩場に出た。

 岩には藻やフジツボがくっついている。

 満潮になると、ここは海に沈むのだろうか。


 近づくにつれて、誰かが叫んでいる声が聞こえる。

 岩場からそっと体を隠して覗き込むと、そこには数人のプレイヤーがいた。

 僕は歌うのをやめて、その岩場に身を潜めた。


「おい、これって本当に魔物なのかよっ!?

 攻撃してもビクともしねっぞ!?」


「ですが、しっかりと魔物の反応はしています。

 現に上のHPバーも……かなりわずかですが減少していっています」


「でもよぉ、この調子じゃあイベント期間が終わっちまうぜぇ?

 お前らのマスターってぇ、本当は無能なんじゃねぇか?」


「貴方、マスターに口出しするのですか!!」


「おぉ、怖い怖い。

 あのマスターの信者はやっぱ気狂いばっかだな。

 さすがは【Odd(オッド)Mad(マッド)Head(ヘッド)】だぜ」


 どうやら、人数は5人。


 うち3人は兵隊のように全身を迷彩服で包み、ヘルメットまでもしっかりとしている。

 ミリタリーオタクの集団なのだろうか、手に持つのは銃剣であり、3人ともが必死に先っぽの剣でちまちまと、目の前の巨大な岩に攻撃を繰り返している。

 ……実に地味だ。


 残り二人は白衣に眼鏡、というThe・研究者といった風貌。

 一人は辺りをしきりに警戒し、もう一人が兵隊部隊ともめていた。


 しばらくして、もめていた研究者が虚空に向かってしゃべっていた。

 おそらく、フレンドコールだろう。


「そんな、マスター……!!

 でも、本当に教えてもよいのですか!?

 ……あれはブラフだったのでは?

 ……ええ……ええ。

 かしこまりました……。

 ……マスターから許可が下りました、心臓の使用許可と、スキルの使用許可です。

 三銃士の皆さん、よく聞いてください」


「おっ!! 待ってましたっ!!」


「よっしゃあ! これでようやく本調子で殴れるぜ!」


「さぁ、どんな裏技があんだよぉ?

 早くぅ、教えてくれよぉ!!」


 三人の態度が一変し、子供のようにはしゃぎはじめた。


「この神魔の討伐と引き換えと言ったのに……。

 マスターに感謝しなさい。

 ただし、絶対に他人には言わないでくださいよ?

 これは今までのDWSのパワーバランスが崩れるほどの、大発見なのですから。

 No.6さん、近くに危険な強い反応はありますか?」


「大丈夫だ、問題ない」


「……それじゃあ、教えますね。

 まず、この手に入った心臓を、()()食べてください」


 一人の研究者が言うと、兵隊は全員が飛び上がって驚いた。


「はっ!?

 お前マジで言ってんのかよっ!!

 それはキチガイにもほどがあるぜっ!!」


 何の心臓だろうか?

 ここからじゃあよく手元が見えない。

 心臓とスキルの許可、とはいったい何なんだ?


「……よし、もう少し近づこう」


 僕が気になって、もう少し近い岩場に、岩場から移ろうとしたそのとき。

 この岩場が海藻に覆われており、すべりやすい地形だということを忘れていた。

 いや、忘れていなくとも、どのみち転んだのかもしれない。


 思わず地面の海藻に足をとられ、滑って転んでしまった。


「……!! なんだ!!」

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