12話 イベント&大型アップデートの告知、そして大量報酬
今更ですが。
原案を考えついたのがちょうど去年の夏でして、今年2017年の春、受験終了とともに本格的に考え始め、夏ごろに初投稿いたしました(受験期になにやってるんだか)。
それから約半年、大変長らくお待たせいたしました。
待ってくださっていた方々には頭が上がりません。
本当にありがとうございます。
話しの大筋は出来上がり、終わり方までめどがついたため、投稿再開いたしました。
そのため、少々この時期には不吉な受験のネタが冒頭で入りましたが、そこはご了承ください。
◇――◇――◇――◇
~前回のあらすじ~
▶ソウ曰く、歌唱スキルは「寄生認定される」らしいと知る。
▶しかし、加護を変更するも、ゲームを楽しむために歌唱は抜かない主人公だった。
◇――◇――◇――◇
2067年 3月 24日(金) 17:00
~{王国:大通り・南門前}~
歩いていると、突然ソウが道のど真ん中で立ち止まった。
勢いを殺せず、そのままソウの甲冑に突っ込んでしまい、ステータス差によって逆に僕の方がはじき返されてしまう。
「おお、悪い悪い。
ちょうどクランメンバーからメッセージが……ってマーティー、どうしてこんなところで仰向けに寝てるんだ?」
振り返ったソウは、僕を見て笑う。
僕が倒れている理由がわからないようだ。
……まったく、この装備、どんだけ強いやつなんだよ。
「ほら、立てるか?
……よし、それで、だ。
事前告知されてた公式イベントが明日からあるのを、すっかり忘れていてだな」
公式イベント?
これまた初めて聞いた単語だ。
つい今日までやっていたのが、協力イベントだったり、緊急イベントだったり呼ばれていたが、それとはまた違うのだろうか。
それより。
「っていうか明日かよ!!」
「なんでも今回はクラン登録していれば、クランごと初期のスポーン地点に行けるらしいから、クランで作戦を練る予定だったんだよ。
あーあ、マーティーも入れる予定だったんだが、間に合わなかったな」
「僕はクランに入れないのか?」
「ああ、ギルドランクが上がらないと、クランに加入する資格が得られない。
それも勇者の力が強すぎて、国が信用しきってないのが理由なんだがな。
とりあえず今はクランに入れないってことだけ覚えといてくれ」
そうか、それでソウは僕のクエストを早く終わらせてくれるのに必死だったのか。
古参プレイヤーであるのに、わざわざ僕のプレイに付き合ってくれたのだもの、ありがたいことだ。
今回はこの礼が返せなくとも、いつかは返せるようにがんばろう。
そういえば初イベントはよくわからない形で参入してしまったが、今回はきちんと参加ができそうだ。
「明日からのイベントは二週間前くらいに公表されていたんだが、ついに詳細が発表されたらしい。
【ドキドキ!? 春のサバイバルイースターエッグ祭り】っていう名前らしいぞ。
あと大型アップデートの詳細も追加されてる!!」
なんなんだ、そのおふざけな名前は。
どこぞのパンのお祭りを意識しているのだろうか。
「イベント参加希望のプレイヤーは、明日の夜の七時までに王宮の自室にあるベッドに寝ればいいらしい。
っていうか、公式サイトに載っているから、マーティーもメニューのインターネットから検索すれば見れるぞ」
「あ、そうなのか。
メニュー、インターネット」
空中にタッチパネルのキーボードが浮かび上がるので、検索する。
ふと辺りを見渡すと、他のプレイヤーたちも皆立ち止まって、しきりに空中を眺めていた。
そして、それぞれが雄たけびを上げる。
「おおーついにきたか久々の公式イベ!!」
「サバイバル……これはなにかあるな!?」
「次のイベントこそ、百位入賞してやるぜ!」
「大型アップデートの内容見たか!?
これは革命だぞ!!」
「なんで今まで発表されなかったんだよ!!
そうとしってたらもっと準備を怠らなかったのに……。
明日かよぉ!!」
各々がわいわいと騒ぎ、先ほどよりも余計に大通りは賑わっていた。
ソウもそのうちの一人で、空中を見上げて手を振っては、笑ったり叫んだりしていた。
「うっほおおおぉぉぉぉ!!
マーティー、確認したか!?
これやべえぞ!!」
「あ、ごめん、まだだ。
どれどれ……。
あ、これか?」
早速公式ホームページを確認すると、見た瞬間にだれでも分かるよう、大きくイベントのポップアップがあらわれた。
『詳細にGO!!』というところをタップすると、ズラッと文字でできた画面が現れる。
◇――◇――◇――◇
~【ドキドキ!? 春のサバイバルイースターエッグ祭り】開幕っ!!~
▶開催日:
2067年 3月 25日 (土)
3月 26日 (日)
4月 1日 (土)
▶開催時刻:
各日 日本標準時でPM19:00 ~ PM20:00
▶参加条件:
開始時刻に、プレイヤーが{王宮:自室}のベッドの中にいること
▶詳細:
ここは、夢、幻の島。
神によって島が作られたのか、はたまた島が神に作らせたのか。
すべての原初となる島で、すべての原初となるタマゴを集めよう。
ただ拾って集めるのも、魔物から分けてもらうのも、魔物から奪うのも、すべてが自由。
さあ、この島で、新たな仲間を見つけよう。
各種ランキングも用意されています。
自由でユニークな行動をして、目指せ1位!!
今回のイベントはクラン戦推奨です。仲間と協力して、よりよい成績をおさめましょう!!
※今回は転移系イベントであるため、時間加速が行われます。1時間が12時間ほどに伸ばされるため、現実世界での準備をしっかりと整えてきてください。
※クランメンバーが同じ座標に召喚されます。あらかじめご了承ください。
◇――◇――◇――◇
◇――◇――◇――◇
~【大型アップデート、迫るっ!!】~
きたる25日、同時に大型アップデートも行います!!
皆さまのご要望にお応えして、ついに追加される機能がございます!!
※イベント開始日のAM4:00~AM5:00に行われるため、この時間帯はログインができません。
あらかじめご了承ください。
今回のアップデートでは、以下の事柄が行われます。
▶加護の追加
魔物に対して友好関係を築くための、様々な加護が追加されます!
新たなスキルの組み合わせを見つけたり、スキルの可能性を見つけ、より自分だけのアバターを“自由に”お作りください。
▶新アイテムの店売り開始
上記の加護追加に合わせて、友好関連のアイテムの追加をいたします。
▶従魔の実装
大変長らくお待たせいたしました、ペットの実装です!!
敵の魔物を、新しい加護によって味方につけることが出来るようになります。
また、アイテムによって召喚師のように召喚して戦うこともできます。
詳しくは王宮内の王女様にお聞きください。
アップデート開始までにこのゲームに登録して頂いたプレイヤーの皆様には、「経験値の水晶」を10個プレゼントいたします。
また、レベル上限の解放に合わせ、前回緊急イベントに参加できなかったプレイヤーの皆様には、「参加していない日数×10」個の「経験値の水晶」をプレゼントします。
これからも王国を救うべく、頑張りましょう!!
※アップデートのため、イベント開始日のAM4:00~AM5:00はログインができません。
あらかじめご了承ください。
◇――◇――◇――◇
「ほーう……これはすごい!!」
「だよな!!
ついにペットの実装だぞ!!」
ソウの興奮が異常である。
たしかに、文面を見ただけで、この興奮が伝わる。
ついにペットの実装、と書いてあるし、半年間待ちに待った機能なのが手に取るように分かる。
「とにかくやべえよな!!
タマゴ集めとか、ぜってぇペットのやつだし!!」
ソウの驚きはうるさい。
だがそれ以上に、大通りの騒ぎがうるさく、ソウの比ではない。
バカ騒ぎしている集団もいて、王国はお祭りムードだ。
「こうしちゃいられねえ!!
はやく明日からのイベントの準備をしなくちゃ!!
マーティー、すまん!
あとでフレンドメッセージを送っとくから、その店に行ってくれ!!
あばよ!!」
一息で早口で告げると、ソウは脱兎のごとく大通りを駆けて、人混みの中に消えていった。
おいおい、いくらなんでも心変わりが早すぎるだろう……。
時刻はちょうど五時になったところ。
やはり二倍の時間加速は偉大だ。
あんなに出来事が多かったのに、まだ開始から五時間ちょっとしかたってないなんて。
ゲーマーたちはこれから夜に向けて、さらに増えていくんだろうが、少し今日は疲れたな。
初戦闘もそうだが、それ以前に初日から運営がやってくるのが一番疲れた要因だろう。
僕もイベントの準備、とやらをしないといけないんだろうが、いかんせん何をすればいいか……。
これはもうネットで調べるしかなさそうだ。
「よし、いったん終わるか……」
そう思ったところで、開いていたウィンドウディスプレイのほかに、違うウィンドウが現れているのを見つけた。
「あれ? いつのまにこんなの表示されたんだ?」
空中をスライドさせて、見やすい位置まで持っていくと、そこには。
◇――◇――◇――◇
おめでとうございます、あなたは緊急イベント「終焉決戦」において優秀な成績を収めました。
よってここに、報酬を与えます。
【メインランキング】
▶ダメージランキング:
1位
▶報酬:
100,000,000 エナジー
【サブランキング】
▶支援回数ランキング:
4,879,853位
▶報酬:
10,000 エナジー
【スペシャルボーナス】
●ラストアタックボーナス
▶報酬:
10,000,000 エナジー
今回は予期せぬ出来事が生じたため、1位の方の枠を二つに増やす、という形で報酬を配らせていただいております。
3位の方には2位で得られる予定の報酬をお渡しし、それ以降も同様です。
つきましては、すべてのプレイヤーの皆様にお詫びの気持ちをこめて、「経験値の水晶」をお配りします。
今後ともDifferent・World・Summonsをよろしくお願いいたします。
◇――◇――◇――◇
「これが神崎さんが言っていた報酬ってやつか……」
合計獲得エナジーは、110,010,000エナジー。
一億一千一万エナジー。
たしかにこれはインフレが激しすぎるわ。
「でもこんな量のエナジー、果たして使い切るかどうか」
でも驚いたのは、億を超えてもカウントストップをしないところだ。
一体運営AIは、勇者がいくら所持することを前提としてこのエナジーを与えたのだろうか。
一億円を宝くじで当てたら、一体何をしますか?
と問われているようだな。
まあゲーム内だからとくに豪遊することも……っいや、おいしいものだってあるらしいし、家だって建てられるらしいし、この世界で本当に現実で夢見る豪遊が出来るかもしれない。
もしかしたら最高レア度の装備一式をそろえて、すぐにソウと共に前線プレイヤーとして活躍することが出来るかも。
「やばい、夢が広がリング……!!」
だが妄想はいいものの、先程から感じるこれは……。
「やばい、腹が減った」
常時開きっぱなしのステータス画面には、ご丁寧に「空腹」の状態変化がついている。
傍から見たら気味の悪い笑顔を浮かながら妄想をし、べビギナーズギルドからまた歩いて30分ほど。
ようやく王宮にたどり着き、自室にてログアウトを押す。
何が一番きついって、王宮の前にある、あの巨大階段だ。
あやうくSP切れで、また倒れるところだった。
~~~~
目を覚ますと、VR内でも感じていた空腹感と同時に喉の乾きも感じた。
頭部を覆っていたフルフェイスヘルメットを外し、時計を確認すると5時15分。
まさか朝になったのか!? と思ったが、外が暗かったのでまだ夜だった。
昼寝して夕方に起きたら、朝まで眠ったかもと勘違いしてしまう、よくあることだな。
ベッドから起き上がり、一階に降りて、キッチンに鎮座する冷蔵庫から飲み物と食べ物を出す。
乳酸菌飲料をコップになみなみとつぎ、ぐびぐびっと一気飲み。
「うーんっ、うまい……!!
これだよこれっ!!」
濃い目のドリンクは、この喉に絡みつくほどの甘ったるさと、のどごしがたまらない。
疲れた脳に糖分が染み渡っていくような気がして、余計にうまさを感じる。
冷凍の炒飯もレンジであたためて頂く。
うん、やっぱりうまい。
冷凍食品の進化は止まらず、本格中華の出来立てホヤホヤ、パラパラ炒飯が、家庭でたった3分で食べられるのだ。
当たり前のことだが、すごいことである。
……このVR技術もいつか、当たり前の技術になるのだろうか。
そういえばゲーム内でも、有名な食品メーカーがアンリミテッド社に出資して、食べ物の味などをゲーム内で再現するようなプロジェクトが行われたらしい。
実験は見事に成功し、今自分が飲んだこの乳酸菌飲料がゲーム内で飲めたことがあったとか。
だがゲーム内で飲んでも腹は膨れないし、なにより企業の売上には直接貢献しない。
イベントの上位報酬として少しだけ配られた、それこそ限定の超レアアイテムだとか。
DWSは限定アイテム、というものはこのようなネタ的な物しかない。
攻略や戦闘に必要なすべてのアイテム、装備は努力すれば誰でもいくつでも手に入る。
完全なユニークなども存在しない、とサイトに乗っていた。
過去イベント限定の装備がないとトップに追いつけない、ということがないため、新規が入ってきやすいのもこのゲームのいいところだ。
うん、やっぱニュービーにも優しいところはいい。
「控えめに言って神ゲー確定だな」
独り言をつぶやくほどに、ただただ素直にそう思う。
他の家族はそれぞれの理由で出かけているし、今日は僕一人。
初日くらい夜更かししてプレイするのもいいかもと思っていたが、思った以上にそれはつらいな。
なんというか、疲労感がはんぱない。
とにかく眠たい。
この調子でログインしても、下手したらゲーム内で寝てしまうだろう。
状態異常:眠りとかにでもなるのかろうか。
検証してみたいが当然それは避けたいし、今日は眠るか。
今日一日お世話になったベッドにまたもお世話になり、一日中ベッドの上で過ごした人生最高の日が、まぶたを閉じることで幕を閉じた。
2017/12/28・一位報酬を十億から一億に ・ラストアタック報酬を一億から一千万に変更




