13話 天魔征伐戦
天魔征伐戦。
フレアメルク王国。
アートランド共和国。
神聖ソルバニア教国。
レガリア連邦。
バルフレア帝国。
年に一度、以上の五つの国の魔法学院合同で主催される魔法の祭典。
選び抜かれた者たちが激突して、真に優れた者を決める、『最強』の学生魔法使いを決める決闘だ。
優勝した者は、英雄と呼ばれる名誉を得ることができる。
また、輝かしい未来を約束される。
元々は、戦乱時代に作り上げられたシステムだ。
人の命が駒のように消費される時代……
人的資源の損失を憂いたとある国のトップが、戦争にルールを設けることを提案した。
国家間で決闘を行い、その勝敗で国の行方を左右する。
普通に考えて、採用されるはずのない案件なのだけど……
当時は、戦乱は泥沼状態に陥っていた。
次々と人の命が消えて、資源が消費しつくされて……
それでもなお、戦争に終わりは見えない。
誰も彼も、終わらない戦争に疲れていたのだ。
故に、ルールを設けて、必要最小限の争いにすることに賛成した。
時は流れて……
平和な時代が訪れるが、天魔征伐戦というシステムは、そのままに残る。
今度は戦争ではなくて、競い合い、互いに高め合うために。
そして、天魔征伐戦は、最強の学生魔法使いを決める世界規模の大会になった。
――――――――――
「……と、いう感じでしょうか」
「なるほど」
リリィから、一通りの説明を受けた。
要するに、オリンピックの魔法バージョン、っていうところかな?
優勝した国が特権を得られるとか、ちょっと俗物的なところはあるけれど……
まあ、わかりやすい大会だ。
「でも、どう賢者さまが関わってくるの?」
「天魔征伐戦で優勝したら、恩賞を賜ることができます。その恩賞を利用することで……」
「賢者さまに面会を求める?」
「はい。その通りですわ」
なるほど、と納得した。
大会で優勝した。そのおかげで、国は特権を得ることができた。
恩賞をあずかるのなら、賢者に会わせてほしい……ということか。
シンプルで、非常にわかりやすい話だ。
でも、色々と疑問は残る。
「そこまでしないと、賢者さまに会えないの? 他に方法は?」
「難しいですね……賢者さまは、ある意味、陛下以上の権力を有しています。魔法に関することならば、時に、陛下以上の発言力を持ちますから……そのような方と面会するなんて、並大抵の方法では叶いません」
そんなにすごい人だったんだ。
王さま以上の権力を持つことがあるなんて……
国で一番すごい魔法使い、っていうくらいの認識しかなかったから、ちょっとびっくりだよ。
賢者さまに対する認識を修正しておく。
「天魔征伐戦の出場者は、どうやって決めているの? 僕もなれるかな?」
「はい。ユウキさまならば、十分に可能性があるかと」
リリィの話によると……
天魔征伐戦の出場者は、国の学生であれば、身分、出身を問わず、誰でも参加できるらしい。
昔は、身分や出身の問題が表に浮上することもあったけれど……
そんな問題で若者の可能性を摘み取ってしまうなんて愚かなことだ……と、当時の国王が説いて、そういった問題は排除したらしい。
そして、王立グランノーヴァ魔法学院から代表が選ばれるらしい。
ついさきほど、僕もそこの生徒になったから、この問題もクリアー。
最後に、代表枠だ。
代表枠は、5人。
学院の生徒数は、約300人。
全員が代表を狙うとしたら、倍率は60倍。
かなり厳しい数値だ。
「とはいえ、全員が全員、代表枠を狙っているわけではありません。そうですね……代表を狙う方は、おおよそ半分くらいになるでしょう」
「ということは、150人……うーん。それでも、30倍か」
これが高校入試とかだったら、白旗を揚げて降参してしまいそうな数値だ。
「ですが、さきほども言いましたが、ユウキさまならば十分に可能性はあるかと」
「古代魔法を使えるから?」
「もちろん、それもありますが……」
「他にも理由が?」
「ユウキさまの可能性を信じていますから」
優しく笑いながら、リリィが言う。
不思議だな。
リリィにそう言われると、不可能が可能になるような気がしてならない。
リリィの笑顔には、勇気や力を与えるような、なにかしらの魔法がかけられているのかもしれない。
「ちなみに、リリィは代表を狙っているの?」
「そう、ですね……」
ふと、尋ねてみると、リリィが暗い顔をした。
「……どうでしょう。今は、様子見というところでしょうか」
「そうなんだ……?」
キティ先生の言動から推測するに、リリィはとても優秀な生徒で……
それに、リリィも、こう見えて意外と芯の強いところがあって……
最強の魔法使いを決める大会なんていうものがあるなら、いざ! っていう感じで挑戦するタイプだと思っていたんだけど。
「ユウキさまは、どうされるのですか?」
「そう、だね」
賢者さまに会う方法が他にないのなら、代表枠を狙うしかない。
でも、それだけじゃない。
賢者さまに会うことだけが目的じゃない。
世界最強の魔法使いを決める大会。
アニメや漫画ではよくある王道の展開だ。
だけど、王道故に心惹かれるものがある。
心躍る。
わくわくする。
僕は、どこまでいくことができるんだろう?
挑戦してみたい。
試してみたい。
賢者さまのことは置いておいて、ただ純粋に、大会に挑んでみたいという気持ちが湧いてきていた。
「うん。代表枠を狙ってみるよ」
二度目の人生。
悔いのないように、色々なことに挑戦してみよう!
「ユウキさまなら、きっと代表枠に入ることができますわ。応援していますね」
「ありがとう。リリィの応援があれば、いくらでもがんばれる気がするよ」
「なら、たくさん応援しないといけませんね。応援歌などを製作した方がよろしいでしょうか?」
「そ、そこまでするのはちょっと……」
「冗談ですよ」
くすくすと、リリィが笑う。
こんな冗談を口にするなんて、ちょっと意外だ。
でも、本当は、こういう女の子なのかな?
基本的に真面目で礼儀正しいけど、子供のようなところもあって……
意外な側面を知る。
なんだか、リリィと今まで以上に仲良くなれたような気がした。
「それと、もうちょっと聞いておきたいんだけど……」
「はい、なんでしょうか?」
「代表枠は、どうやって決めているの?」
「それは……残念ながら、私も詳しくなくて……というよりは、わからない、と言った方が正しいですね」
リリィの話によると、代表枠を決める方法は、毎年異なるらしい。
去年は実戦で。
かと思えば、一昨年は筆記試験で。
嘘か誠か、あみだくじで決められた年もあるとかないとか。
どちらにしろ、毎年、選考方法が異なるみたいで、対策の立てようがないらしい。
これは、あえて対策を立てさせないことで素の実力を計っていると言われているが……
真偽の程は定かではない。
「例年通りならば、初夏……あと、二週間ほどで発表されるかと。それから、選考に一月……という具合でしょうか?」
「あと二週間か……思っていたより短いな」
僕のアドバンテージは、古代魔法を使えることだ。
でも、それだけで代表枠に入れるほど、甘いものじゃないと思う。
魔法のこと、魔法使いのこと、魔法戦のこと……
二週間という短い期間で、できる限り吸収していかないと。
でないと、代表枠に食い込むことは難しいだろう。
「よし! そうと決まれば、明日からの学校生活に備えて予習をしておこう。リリィ、お願いがあるんだけど……」
「はい。私でよければ、なんでも聞いてください」
「いいの? 自分で言うのもなんだけど、面倒なことだよ?」
「ユウキさまと勉強することで、ちょうどいい復習になりますから。私からも、ぜひ、お願いしたいところですわ」
ホント、リリィは良い子だなあ……天使かな?
リリィの背中に、ぱたぱたと白い翼が見えるような気がした。
「じゃあ……お願いします、先生」
「せ、先生はやめてください」
顔を赤くして慌てるリリィを見て、さっきからかわれた仕返しができたと、小さく笑うのだった。
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