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晴れた日は、小鳥もさえずる  作者: ぼたん鍋
第1章:春はあけぼのとは言うけれども
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閑話①気付いたら、よくわからなくなっていた


 確か、きっかけはとても些細なことだった気がする。

 今ハマっている女性アイドルは誰だとか

 そのアイドルのことが好きだとか

 そんな話をしているときだった。


「やっぱ、あれはないよな」

「ないない。あれはない」

「だよな。西村もそう思うだろ?」


 なにについての話だったか

 その時のおれは、たぶん違うことを考えていて

 ほとんど聞いていなかったんだ。

 だから、その言葉の返事も

 どこか適当で、流れに合わせたものだった。


 でも、今思えば、それが良くなかったんだと思う。


 次の日、学校に登校すると

 仲がよかったはずの友人がよそよそしくなっていた。

 無視とか、仲間外れとか、そんな陰湿なことではなく

 ただ、どこか距離をとるような雰囲気だったのだ。


 なぜそんなことになったのか。

 なにを間違えてしまったのか。

 もしかしたら、前日の会話なんて全く関係のないところの問題だったのかもしれない。

 

 でも、きっと周りの人は感じ取ったのだろう。

 同じ空間にいる人間が

 友人として付き合っているクラスメイトが

 自分たちの会話に興味を示していないという事実。

 適当に会話を流しているという態度。

 なにより、西村肇という人物が

 自分たちの属している集団にそぐわないのではないかと。


 その日から、自然と、段々と

 彼らとは一定の距離を置くようになった。

 

 会話は表面をなでるような浅いものへ。

 なにかあればともに行動し

 なにもなければ関わらず。


 最初は少し、悲しいと思った。

 しかし、それが当たり前になると、なんとなくそんなものかと思う自分がいた。


 人付き合いとは、とても難しいものだ。

 自分を知ってもらおう。

 自分を受け入れてもらう。

 互いに共有しよう。

 そんな、我儘わがままの境地みたいな感情は

 いつしか消えていた。


 ”いい感じに”

 ”それっぽく”

 そんな、ひたすら空気を読むようなことをしていた。


 気付いたら、自分とはいったいどんな人間だったのか、わからなくなっていた。


 西村肇が好きなものは

 嫌いなものは

 涙する物語は

 好きな女性のタイプは

 将来の夢は

 ……

 

 そんな、当たり前のことがなにもわからない

 絵を描く前の、真っ白なキャンバスのような人間になっていた。


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