切り抜けた結果
私は切り札を使ってしまった副作用として熱を出してしまった。
朦朧とする意識の中であの人が必死で私に呼びかける。
そして、私は何度か意識を保とうとしたが、残念ながら自由にならない体の所為ですぐに眠りについた。
そして、ようやく熱がほんの少し下がって意識が保てるまで回復した。
「気が付いたか?」
心配そうに私を覗き込むあの人に私は小さく頷く。
「ごめんなさい。」
「いや……、謝るな。」
複雑そうな顔をするこの人に私は問いかける。
「怪我はない?」
「俺は大丈夫だが…、お前は……。」
「平気、そういえば、あの「子」は?」
「……。」
私の問いかけにこの人はそっと目であの「子」を教えてくれる。
その「子」は柔らかな葉が敷き詰められた布の上に寝かされていた、だけど、その様子はどこかおかしかった。
「いつから?」
「今日の朝方から起きないんだ。」
その「子」は寝ていた、だけど、その眠り方は異常でまるで人形のように静かなのだ。
私は自分の体を叱咤しながらようやくその「子」の元にたどり着き、観察している内にこの「子」の魔素が異常に少ない事に気づく。
この「子」は精霊だ、それなのに魔素が少ないとなるとこの「子」は存在を保つ事が出来ない。
つまりは、この「子」は自分を保つためにこうやって寝ているのだ。
私は「前」の知識を使ってこの「子」に魔素を与える方法を考える、普通の精霊ならば人が呼吸するように自然に取り込むが、「前」の私は器があった為食事等で魔素を取り込んでいた。
しかし、この「子」は果物とか取れるだろうか、それどころか、魔素の取り入れ方すら分かっていないのかもしれない。
私は悩み、そして、一つの光景を思い出し、一つの望みをそれに託した。
自分のシャツをめくり上げ、そして、全く膨れていない私の胸にその子の唇を近づける。
赤子の反射でその「子」は私に吸い付く、何故かあの人が驚いている気配がするが、私は気にせずにその行為を続ける。
人の心臓には魔素を溜める核としての役割も担っている、私が手などでこの「子」に触れて魔素を送り込めればよかったのかもしれないが、万全の体調ではない私と飢餓状態のこの「子」ではそのような手段を選んでいられなかったので、私は直にその「子」が魔素を取り入れやすいように母親が子供に母乳を与えるように魔素を与えた。
少しずつ赤味を取り戻すこの「子」に私はホッとする。
そして、満足したのか自然と口を離す「子」に私は微笑みかけ、再び柔らかな葉のベッドの上に寝かせる。
ようやく落ちつた私はあの人と向き合うが、何故か彼は真っ赤な顔をしていた、何か可笑しな事をしてしまっただろうか?
母親と赤子なら可笑しな光景ではないのに、と思って、私はそういえば、私の今の姿は子どもだったと思い出し一人納得する。
「ごめんなさい、非常事態だったから。」
「い……いや……、その……悪い……頑として見てしまって……。」
「えっ?別に?」
何故この人がこんな反応をするのか理解できない私は首を傾げた。
「つっ!」
顔を真っ赤にさせ、震え出すこの人に私はぼーっとする頭で考えるが、残念ながら思い当たらない。
「お前、女だろが、恥を知れ、恥をっ!」
くどくどと説教を始めるこの人に私の意識はいつの間にか闇に落ちてしまった。