光明の書
こんな夢をみた。
私は王に仕える巫女であった。
我が一族に伝わる「光明の書」で私は王のために勤めた。
この書にはあらゆることが書かれている。
いわば魔法の書であった。
だから王は私達一族を取り立てた。
私達がいる限り王は安泰であったのだ。
とある王の時代であった。
王は「光明の書」を手に入れようとした。
愚かな王。
この書は我が一族のものでなければ解読できないことを知らないのであった。
それでも父は大切な書を渡さないために祭壇に隠した。
それを知っているのは私だけであった。
王は神殿を荒らし、書を探した。
だが見つけることは出来なかった。
この騒動で父は殺された。
このまま危険な王宮にいることは出来ない。
だが「光明の書」を持っていくことは出来なかった。
いつか必ず取り戻すことを誓い、私は逃げた。
我が一族の後ろ盾を失った王はすぐに滅びた。
同母弟に暗殺されたという。
黙って我らに従っていれば良いものを。
なんと愚かな王だろうか。
私は王を哀れむことなく蔑んだ。
荒れ果てた王宮と神殿。
新たな王は別の場所に王宮を建て、そこに移った。
華やかな都も一緒に移った。
今、残っているのは寂れた悲しい王宮だけだった。
私は捨てられた神殿へと忍び込む。
誰もいない神殿の祭壇から「光明の書」を取り出した。
これは魔法の書。
国を滅ぼすことも容易い。
さて、これを持って新しい王の元へと行こうか。
私は父よりこれを託された。
これを使って王へ仕えることが使命だと幼い頃より言われてきたのだ。
新しい王は愚かでないといい。
そう思いながら私は神殿を後にした。