本日は鈍痛なり
「おなかへったー」
赤ん坊になってから4年。今俺は大体6歳。
2年経っているいるにも関わらずこの世界のことはよく分からない。
俺がどうしてここに来たかも、この世界の文字も全く分からない。
ただ言葉だけは普通に通じるようで、会話だけは成立している。
「おなかへったー!」
今俺は猛烈におなかが減っている。よって思いっきり叫んでいる。
ちなみに今は6歳児なりの演技をしている。強くてニューゲームは楽しいぜ。
「はいはい。もうすぐできるからちょっと待っててねー」
小さい頃はウザいと思ったこともあるの母も今となっては聖母である。
前のデブばばぁよりずっと美人だし優しいしおっぱいでかいし…。
普通の家族はこうやって育ったんだなーって思うと涙が出てくるぜ。
そんなわけで、俺は自分の椅子に座ってご飯を待つ。
小さいころは凄い金持ちの豪邸だと思っていたこの家も実際は少し広いだけの木製の家。
ちょっと火でも付けたら燃えてなくなってしまいそうである。冗談じゃない。
小さいころに見えた金ぴかはなんでペンキだったのだろう。高価そうな壺はどうして米入れだったのだろう。
「あら、また小難しい顔しちゃって。マークは考え事が好きねぇ。ほら、大すきなハンバーグよ」
「おっ、さんk・・・わーい!」
危ねぇ。少し気を抜いてたぜ。危うく本性が出そうになった。
見た目6歳でも中身は17…21歳?なわけだ。言葉使いに気を付けないと普通にばれちまうぜ。
と、某超推理アニメみたいなことを考えている俺は加藤アンドロメダ、17歳。
自慢するわけではないがニートでザ・ヒキコモリである。因みに前の体重は74キロ。
そして、その俺が憑依しているのがこの6歳児。
マーキュリー・フロー・トパーズ、6歳。残念ながら男の子。
親譲りの金髪に水色の瞳という容姿をしている。名前も相まって日本でないことは確実だな。
多分成長したらアニメに出てきそうなbeautifulで美しい美少年になるだろう(願望)
そんな訳で、今度こそはリア充になってこの世界を生きるために4年前から性格を変えられるように意識して生活しているのだ。俺って案外努力家?
そんな誰に話しているのかも分からない適当なことを頭の片隅で考えていると、ふと母が気になることを言った。
「・・・そういえば、そろそろ適性も調べないとねぇ」
「・・・てきせい?」
なんだそれは。血液型的なあれなんだろうか。
「そ。適性よ。まぁ、今のあなたにはよくわからないと思うけどね」
と、聖母ははにかむ。その笑顔は反則だ・・・。
そして案の定あなたにはわからないでしょうねぇの言葉。泣きそう。
でも…宛はお母さん以外にもあるんだぜ!!!(ガッツポーズ)
とりあえず、新情報をゲットした俺。これから行くところが一つ増えたようだ。
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食事を終えた俺は、まだ小さな足で20分かかるご近所へ30分かけて訪れた。
そこは俺の家と違い本物の豪邸であり、金の光で輝いている。
俺もこっちに生まれたかった…と思う所もなくはないが、とりあえず目的はそれではない。
豪華な扉についた丸いリングをコンコンと叩く。しばらくするとギィッと重そうな扉が開く。
「はい・・・おや、マーキュリー坊ちゃん。本日はお一人で?」
「ひとりだよー!」
元気よく人差し指を突き立てて俺の可愛さとびゅーりふぉーさを見せつけると、扉を開けたこの屋敷の執事は笑顔を見せてくれる。可愛いって正義だな。
「そうですか。お嬢様なら部屋におります。どうぞ中へ」
計画通り中に入れば、そこは前見たときと変わらない豪邸。
俺の家の総体積より大きそうなホールには美しい花が高そうな花瓶に収められて壁に並んでいる。
天井には人と機械がそれぞれ杖と歯車を持ち上げているような絵が描かれており、
目の前には2階へと続く階段が荘厳たる出で立ちで来客を迎えてくれる。
「ふつくしい・・・」
「坊ちゃん。何か?」
「あっ、・・・お花きれ-!」
やばいやばいつい出てしまったぞこれで言うの3度目だそろそろ感づかれるぞぉ・・・。
「・・・ふむ。お嬢様の部屋はこちらですぞ。」
執事は俺の前を歩く。良かったばれてはいなさそうだ。
とりあえず執事について行こう。目的地への道は知ってるけど別に断るほどのものじゃないしな。
2階のとある部屋の前で、執事が止まる。目的の部屋である。
「お嬢様。マーキュリー坊ちゃんがお見えになっております。」
「ホント?!入ってー!」
執事は扉を開ける。ふぅ、どうやら今日は機嫌悪くはないらしい。
中に入ると、そこはこれまた俺の家の壁全部取っ払ったぐらいの大きな部屋である。
中央にある巨大なキングベッドにはぬいぐるみが並び、大きなクローゼットや本棚や何かしらの絵エトセトラエトセトラ…。
とにかくお金持ちの部屋である。あーお母さんとこっち引っ越したぁぁぁい。
と、そんなことを思う間に目の前の少女に思いっきり突進される。
「マークー!」
「ぐふっ?!」
思いっきり水月にタックルされた。悶絶不可避というやつである。
「あいたかったよー!退屈だったよー!」
と、ゴリラにされているかのような力強いだいしゅきホールドをしてくるこの女の子が、今回の俺の目的。
赤髪の、凄く元気な女の子。
みんなご所望のロリっ子、アリシアス・サン・ルビー。ルビー家の現当主である。
西暦1907年 さわやかな風の吹く暖かい日。