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健全な短編集

放屁=ホルモン分泌活性化剤

作者: 海原 川崎

放屁とは人前で行うと嫌な顔をされる。昔テレビで見たが、とある国のお偉いさんがおならをしたら香水の匂いですと褒めなければいけなかったらしい。

そんな事を考えていたらこんな作品になりました。

 今日も1日が終わる。

 朝早くから営業スマイルをして、決められたコメントをする。正直何が面白いのかは分からないがそれでも視聴率は変わらないのだからきっと面白いのだろう。

 「いやー、今日もお疲れさん。」似非関西弁営業スマイルでゴマをするようにおっさんが話しかけてきた。

 ブクブクの体つきは美しさなど無く醜い見た目をしているがこのジジイはお偉いさんだから営業スマイルで対話をする。

 「ありがとうございます。遠藤さん。」俺は遠藤さんの体付きを見るたびに自分の美しさを罪のように感じてしまう。他人の金でブクブクと育った体付きは重力により下に垂れ下がっているだらしない顎の贅肉を目立たせるし、スーツ越しでもわかる腹の出っ張りはドブ人間という渾名がお似合いだ。だが、お偉いさんだからいい顔をする。

 「いや、いや。いいよ、いいよ。今日の曲も最高だったよ。今日も放屁に溺れるの~。」ジジイが調子よく俺の歌を汚い声で歌ってきやがるがそんな事にいちいち怒っても仕事が減るだけだ。

 「さすが遠藤さん歌がお上手だ。」

 「ふふ、そうかな。いいね、昔を思い出すよ。僕がまだこんなに太っていない時の事をさ…。」あぁ、またくだらない過去の話が始まる。だが嫌な顔を一つせずに話を聞かなければならない。それが仕事を沢山もらうコツだからだ。


 くだらない話を聞いた後は予約していたホテルに向かう車の運転席の横にいる。

 「ご苦労様。今日もあのオジサンに捕まっちゃって大変ね。」車を運転している俺のマネージャーである四里野 穴見しりのあなみがいつもの調子でペットボトルを放り投げてきた。

 「本当だよ。全くさ、毎回毎回同じ話をされるこっちの身にもなれって話だよ。」マネージャーが投げてきたペットボトルの蓋を開け飲み始めると仕事がようやく終わったんだと実感し気が抜けてしまう。

 「本当ね。あの話私ですら聞き飽きたもの。あの俺の放屁はどんな女もメロメロにしたとかいう話でしょ。」

 「そうそう。今じゃおならの調整も出来ずに実が出そうになるっていうオチの話。一度なら笑えたけどよ。流石に飽きたわ。全くさ、つまらない話だよ。」

 「そうね。最高の放屁アイドルのあなたが言うのだから間違いないわね。」マネージャーは今世紀最高の放屁アイドルである俺に決まり文句の様に言ってくる。

 「そうだな。ライブで観客が失神してしまうほど美しいおならを出せる男なんて俺ぐらいしか居ないだろうな。」

 「そうね。でもそんな男がこんな冴えないマネージャーと放屁関係になっているなんていいの?」相変わらず自分に自信を持っていない発言をする。

 「何言ってんだ。お前は十分魅力的な女性さっ☆彡!」

 「ああ素敵っ!!エクスタシー!!」こうして二人はホテルで放屁エクスタシーのなるのであった。

 

 放屁、言ってしまえばおならをすることなのだが、おならをかけることにより人間は発情し、一種の興奮状態になるというのは学校で習う常識だ。

大昔から異性の相手におならをかけることが愛情表現とされていたこの世界では放屁アイドルが主流になっている。

 テレビに出ているアイドルは全員放屁アイドル。イケメンな俳優もほとんどが放屁濡れ場のシーンを撮ったりしている。

 異性の放屁に人間は興奮し、感動するのだ。それ故に放屁歌手を目指す若者は少なくない。                      

 放屁力や歌唱力を上げる練習をしている若者達は、テレビという大舞台から次第にBUtyubeやプウプウ動画で動画をアップロードし一部の一般人から人気を得るスカシ手と呼ばれる人が増え、数年前に発売された「放屁スル」と言う自分の作った曲に合わせて歌わせる事の出来る音声合成システムソフト発売により一般人が手軽に作詞、作曲、放屁音作成するという世界になっていった。

 そんなテレビという娯楽道具が衰退しているこの世界で圧倒的知名度を持っているこの主人公こそ放屁アイドルの1人放屁ほうひ 池面いけめんである。

 彼のライブでの伝説は数知れない。歴代の歌手でも5本指に入るのでは無いかと言われる歌唱力。聞いたものは感動のあまり泣いてしまうと言われる放屁音。過去のライブでは数名のファンが彼の放屁音で失神したとも言われている。

そんな彼がアイドルをやって早10年。一種の聖域とも言うべき放屁アイドルのトップである彼の人気は衰えるどころか老若男女の幅広い層から人気である。

そんな放屁アイドルの恋事情が隠し通せる物でも無くすぐさまニュースのトップを飾るのである。

【放屁アイドル禁断の恋!!】【数年前からの付き合い!?】【関係者は語る放屁アイドルの隠された恋物語!!】新聞、雑誌、テレビ。全てが似たような文章、内容でワイワイと騒ぎ出す。

「これは真実かい?」早速事務所に呼び出された俺はマネージャーと二人で社長に質問をされた。

「「はい。」」ただ一言私達は言うと社長はため息をつきグチグチと文句を言い始める。

 「勘弁してくれよ。意思の堅い君だから彼の専属マネージャーにしたのに。スキャンダルはアイドルを殺す毒薬だよ。」とてつもなく大きなため息をつきながら社長は語る。

 「社長これでも駄目ですか?」そう言った池面は放屁をすると社長はその香りの良さに溺れる快楽を感じながら「最高文句なし!!」と言った。

 「彼女と交際を続けても問題がないという事ですね。」池面は言いながらマネージャーの方を見るとマネージャーも彼の香りに酔いしれて頬を染めて腰を抜かしており放屁の声が聞こえていない様であった。

 「やれやれ、俺の放屁に酔いしれちまっている。」彼の放屁は同性異性関係なしに効力を発揮するのである。

 

 場面は変わり交際に対しての記者会見現場。

五月蠅いシャッター音といくつものカメラの発光を浴びながら池面は記者達の質問攻めを受けていた。

「マネージャーとの件は本当なのでしょうか?」

 「真実をお願いします。」

「ファンに対して一言お願いします。」

 「数々の噂が流れていますが本当でしょうか?」

 「一言お願いします。」

 記者達の質問攻めを予め予想出来ていた池面は静かに彼らの方を見ていた。

 なんやなんやと質問をしていた記者だが池面が一言も発しない事に気が付くと一人二人と口を閉じ始めやがて誰も言葉を発しなくなった。

 「一言。」池面がマイク越しに言うとみな先ほどまでの口はどこに行ったのか一言も話さずに放屁の口元に全員の視線が向いていた。

 「私は真剣に付き合っています。もし反対する人が居るなら私は芸能界を引退します。」そう言いながら放屁をすると記者全員がその芳醇な香りに幸福感を感じ快楽を覚えながら皆口々にこう言った。

 「皆大賛成さ!!」


「彼の屁はまるで麻薬だ、その場に居る人間を従わせるほどの幸福感を与えてくれる。」会場にいたとある記者の発言である。

 記者会見後スキャンダルの批判的な意見はほとんど出ず、これまで隠れて行っていた交際も開放的にすることが出来た。今まで行えなかったデートや外食それにショッピング。

そして仕事も増えていった。

「放屁アイドル人生を捧げて一人の女性を愛する。」そんな見出しに批判的な視聴者も出ずむしろ好感度が上がり今までファンではなかった中高年男性等の幅広い層から愛されるアイドルになっていった。

 だが、そんな幸せも永くは続かなかった。

 屁を嗅ぐことによりエクスタシー状態になる際に全身から特殊な物質が出てくることが発見された。この物質がCO2の数百倍のオゾンを発生させ地球温暖化に繋がるのである。

 そこで政府は急遽他人の屁を嗅ぐことを禁止する。放屁法と言うものを発表した。

 その法案に反対する声もあったが地球環境問題という名を出すと皆が黙りこみ放屁法は発足した。

 これにより放屁アイドル達は事実上芸能界を追放され、人々は放屁を外に出る際にクリーンな空気に変える放屁クリーナーを尻に付けながら生活することを余儀なくされた。

 放屁法可決前に仕事により多大な収入を得ていた池面は芸能界を引退してもあまり困る事はなかったが、池面と暮らしていた穴見は放屁が出来ない池面に対して魅力と言うものを感じなくなりやがて二人は自然に別れていた。

 池面は考える。自分とは一体何なのであろうか?放屁しか魅力はない男なのかと考えながら屁をしたが香りは放屁クリーナーに全て消し去られた。

 

これを書いている時、私は腹痛によって悲鳴をあげています。

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