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R童話-銀色で広がる物語-神の流れ-情景童話

魔術師になった青年と大きくなった一人の女性

作者: RYUITI

赤ん坊と一人の男、そして小さな女の子に関連性のある作品です

雪が肌に突き刺さるような冷たさを感じながら、

青年は、町の雪道を歩く。


この国も、あの頃とは変わってしまったな。

と思いながら、

俺は過去のことを思い出す。


俺があの子と出会った日から数年が経ったあの日。


化け物が国の外から出現した。

対処に当たった国の兵も全滅。

その後、大勢の人間が襲われ、

あの子の両親も……


今でも忘れはしない。

あの時の事、

そしてあの彼の言葉が俺の中で消えることなく焔を灯している。


化け物が国の中に入ってきていた時、

俺と彼は、あの子の両親のパン屋で珈琲と紅茶を飲みながら、

パンが焼き上がるのを待っていた。


あの子も眠りから覚めて、

おはようっと俺に言葉をかけてきた。


その瞬間、

物凄い足音とともに店の中が揺れた。


彼は先ず、あの子の両親の安全確認した後、

俺とあの子、そしてあの子の両親の4人で国から脱出する計画を早口で俺達に伝えた。

その計画は、俺と彼が一緒に暮らす家の床下に隠し通路を作っておいたというものだった。


その話を聞いた俺はいつの間にそんなことをしていたのかとビックリしていたのを覚えている。

ひとまず外に出ようと彼に提案した俺は後ろを振り向いて硝子の扉を見た。


其処に。


見たことも無い化け物が店の扉の硝子越しに視界に映った俺は酷く恐怖した。


けれど、怯え、恐怖を感じ、涙を眼に溜めながらも尚、

声を出さず、泣きもせず必死に耐えているあの子を見た瞬間、

俺は強く、彼女を守る覚悟を決めて、扉の先を鋭い眼で見ている彼を見る。


すると、彼は俺と彼女の頭を撫でて、にこりと笑い、こう言った。

.「今この場を出て走って家まで行くのは危ないから、

私の秘密の力を使って移動しようと思う。

いやいや、君たちは何もする必要は無いよ、一瞬で終わるからね。」


そう言って彼は、何かを呟き、指を鳴らした。


目映い光が俺達を包んだ。


ふと、気が付くと。

俺と彼女と彼女の両親は、

俺の家の中に居た。


何が起こったのか解らなかったが、

その後、

ふと、頭に彼の声が聞こえた気がした。


.「私は未だ一緒に行く事は出来ない。

少しばかり大変だが絶対に其方に向かう、

だから其れまで、お前が彼女を守るんだ。

そして此れから先何が在ろうとも、

お前が彼女の闇を溶かしてあげなさい。」


俺はどんな顔をしていたのか。


「どんな闇や不安も暖かい光で溶かす。

其れが、お前の名前の意味なのだよ……メル。」


顔が熱い、身体が熱い。

歯を食いしばっている。

今にも零れ落ちそうになる涙を留めるために。


頭の中に、声が響かなくなったのを確認して、

俺は彼女の手をとって、彼女の両親と共に、

床下にはめ込まれていた小さな石を窪みから取り上げた。


すると小さな石がはめ込まれていた床下は塵のように細かくなって消えていった。

床下があった部分には人が入れるような穴が出来ていて……


俺は、直ぐに穴に飛び込もうとしたが何かが……おかしい。


何がおかしいのかと思って辺りを見回すと、

彼女の両親が二人がかりで扉を塞いでいるのが見えた。


まさか、此処まで化け物が来たのか、

と思った俺は壁にかけてあったピッケルを持って、

彼女の両親の元へ近づいて行った。


その時、

.「来るなッ!もうこの扉は持たない。

そのピッケルでも扉は押さえきれない。

この扉が、破壊される前に、二人で逃げなさい!」


息を荒くして叫ぶ彼女の父親、

苦い笑いを浮かべながら、俺にウィンクをしてきた彼女の母親。


怖いはずなのに、どうして。


言葉が出ない。喉が重い。俺はどうしたらいい。


冷や汗といくら考えようとしても俺の足は動かない。


そんな時、ふと俺の服が重みを増した。

増した部分に視線を下げると、

先程よりも涙を懸命に堪えている彼女の姿が其処にあった。


ああ、そうか。


彼女はもうわかっているんだ。

両親はもう助からないかもしれないという事を。


俺が彼女の手を引いて穴に飛び込もうとした時、


.「メル君、泣き虫で強がりで甘えん坊だけど、

うちの子、よろしく頼むね。」


そう耳に聞こえた声は、

暖かくて優しかったような気がした。



穴に飛び込んだ後、

俺と彼女は見知らぬ大きな場所に居て、

其処に居た女性に慌てて説明をしようとすると、

柔らかく笑って、

.「彼から話は聞いてるよ、寒かったでしょ?話はしなくていいからね。」

と暖かい紅茶を入れてくれた。

いつの間にか、

其処に住んでいた流れるように白い髪をした綺麗な女性と共に生活をするようになり、


結果的に俺と彼女は化け物に遇うことなく国を脱出したようだった。


此処は何処なのかと初めて聞いた時、

その人が言うには、

.「此処はどの世界とも通じて居ない古びた洋館なんだよ~」という事だった。


俺と彼女は白い髪をした女性の元で、

勉強や魔術という不思議な力、世界に存在する生き物なんかを学んで時を過ごした。


それから年が経ったある日、

成長した俺と彼女は、出会った頃と何も変わらない白い髪の女性……ルナに、


今の状態なら元居た場所を見に行っても良いんじゃないかと尋ねて、

心配そうにしていたルナを説得し、

全てを知るために、意を決して、

あの時の、彼のように指を鳴らして【転移】をした。


暖かい光が俺と彼女を包み込み、

眼を開けると其処は、

俺と彼が住んでいた家の中だった。


まだ幼い頃、

此処で彼女の両親と別れた記憶が頭に流れ込む。


ボロボロに朽ちている扉を見て、

彼女が苦しい顔をした。


きっとこの扉の先にはもっと悲惨な状況になっている。

だが、行かなければ行けない。

朽ちた扉を開けて、俺達は外を見た。



その瞬間、呆気に取られてしまった。


俺と彼女の眼に映ったのは、

クラッカーを鳴らす大勢の人々と、

おかえりなさいという歓声と拍手を送るにこやかな人々だった。


どういうことだと思った矢先、

一人の男が俺に近づいてくる。


その男は俺の目の前で止まり、こう言った。

.「久しぶりだねメル、そしてアイリ。

君達がいきなり此方に来ると言うのだから、

急いで準備をしたのだよ広場に料理も用意してある。」

声の主は、あの頃から何も変わっていないベック。


俺達が驚いていると、

その後ろから、さらに男女の声が聞こえてきた。

.「アイリ、貴女、お腹の中に愛の結晶が宿ってるんだってねえ?」

.「メル君によろしく頼むねとは言ったが、まさかこんなに嬉しい事になっているとは……」


手を握る力が強くなる。


彼女が俯き涙を流す。

その顔はとても綺麗だと思った。


町の真新しく綺麗になっているのにも驚いたが、

何故、ベックと両親が無事なのか。


その事をベックに聞くと、

彼は……

.「守りたい気持ちというものはね、最強なのだよ。」と言って笑いながら紅茶を飲んでいた。


そんな彼の言葉を聞いた俺は、

ふいに目頭が熱くなった。


結局、事の真相はわからなかったが、

これからはきっと幸せな日々が続くだろうと信じている。


そういえば、今から、

広場に新しく出来た噴水のお披露目をやるという。

それと、

先程、飲んだくれた彼女の親父さんに聞いたが、

その噴水の近くで俺とアイリの夫婦の契りの式を行うらしい。


寒いのによくやるなーと思う。


けれど、俺とアイリは二人で笑いながら、

広場に向かって走り出す。


俺と彼女は当然のように誓うだろう。

暖かい人生を生まれてくる子どもと三人で歩むために。


雪の日の噴水の前で。


【おしまい】














読んでいただきありがとうございますッ

関連性のある作品と言うか続編っぽいものをさっそく書いてしまいましたw

前書きに、

赤ん坊と一人の男、そして小さな女の子の関連性のあると書きましたが、実はその他にも関連する作品がいくつかあるんですよね。

最後の一文、これは正解に近いヒントですね。

いったいどう繋がってどう関連性があるのか、

考えたものをメール等で送っていただけるとワクワクしまーす。

以上あとがきでしたー(R・3・)

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