パート05
すみません!
パート04まで出てきたケンタウロスですが、あれは間違いでした。
ミノタウロスが正しかったです。正解はミノタウロスです。
間違いがあった事、本当にすみませんでした!
まずは大きく後ろに跳躍。戦士の魂のおかげで普段の僕からは想像出来ないほどの距離を飛ぶ事が出来た。
けれど楽しんでいる余裕はない。今まで僕がいた場所に、その巨大な斧が振り下ろされ地面をえぐっていた。それを見ていただけで、どれほどの破壊力を持っているかが分かる。
しかも相手は五体もいる。長期戦に持ち込まないで、短期戦で終わらせた方がいいはず。
そこまで考えた所で、その巨大な体には似合わないほどのスピードで僕に近づいて、斧を振りおろしてくるミノタウロスが一体。
「悪く思うなよ、小僧!」
その攻撃を横に少しずれる事によって回避。そして隙がわずかだけど出来た所を狙って、右手の真っ黒な剣で胴体を切り裂く!
ザシュッ、と大きな音を立てて、ミノタウロスの体が胴体を境目に、二つに分かれた。
「なん、だと……」
何かを考えながらやったわけではない。ただ単に、体が勝手に反応して動いただけだ。
それでも、僕自身でも一瞬でミノタウロスを一体倒した事に驚いていた。
「これが、僕の創造の力なのか……?」
「よくも同胞を殺してくれたなぁっ!」
けれど茫然としている暇をミノタウロスは与えてくれない。残っている三体が一斉に、再び僕に襲いかかってきた。
最初のうちは僕をなめていたから、あっさりと一体を倒せたんだろう。
でも、僕がやられずに逆に返り討ちにあった仲間を見て、今度は本気で僕を殺そうと斧を振りおろしてきた。
三体まとめて攻撃してくるから、さっきみたいに隙を見つける事は出来ない。ただひたすら勘を頼りに攻撃をかわしていった。
ドームから離れた位置で戦闘は行われていたけど、今はもう追い込まれて僕は背中にドームの膜が当たるのを感じた。
「やばっ……!」
「ふんっ!」
正面からの攻撃を横に転がりながら避けた。だが、その攻撃は勢いを落とさないでそのままドームの膜に当たった。
「きゃああっ!」
「うわあああっ!」
その振動は中にいたみんなに伝わったみたいで、中から悲鳴が聞こえてきた。
すると、僕の体が急に痛み始めた。
「いっ、て……。な、なんだよ、これ?」
「おそらくこのドームのせいでしょう」
ドームの中にいるはずのウーゴが、戦闘中にも関わらず僕に近づいてきた。
「あなたがこのドームの中にいない限り、ドームの外側から伝わる痛みなどが全て、あなたにそのまま伝わるようです」
「なんだよ、それ……。僕はそんな設定は考えてなんか――がっ!」
どうやらミノタウロスもウーゴの話を聞いていたらしく、次々とドームに斧を振りおろし始めた。斧が振り下ろされるたびに、中から悲鳴が、そして僕の体が激しい痛みを襲いかかってくる。
「あなたが考えなかった設定です。つまり空白の設定。この世界であなたが思いついた設定は、確かにすばらしいものです。けれど全ての事態を想定した設定ではなかったわけです」
「なるほど、ね。設定はもっと細かく考えていれば、こんな変な設定はつかなかったって事かよ……」
だとしたら、これは僕の失態だ。
どんな設定にも穴があるのは分かってるつもりだったけど、ここではその穴すら埋められるのかよ。それも強制的に。
結構、この世界もシビアなんだな……。
「小僧、とどめを刺してくれる!」
僕が充分に弱ったのを見計らって、一体のミノタウロスがとどめを刺そうと、斧を思いっきり振り下ろしてきた。
(仕方ない、か……)
本当ならもっと後に、それこそラノベ一巻の終盤辺りで出そうかと思ってた切り札を出すしかない。
「戦士の魂……全力全開!」
さっきまで黒いオーラが僕の体を包んでいたが、そう叫ぶとオーラはさらに濃くなって僕の体を包み込んだ。
(痛み、感情、情け。それら全てを捨て去って、敵を滅ぼす!)
まずとどめを刺そうと振り下ろされた斧を避け、ミノタウロスの手首を切り落とした。そしてミノタウロスがそれに反応するよりも先に跳躍し、首を切り落とす。
「なっ……」
地面に着地すると同時に走り出し、もう一体の胸に剣を突き刺して殺す。
最後に今殺したミノタウロスの胸を足場に宙に飛び、残った一体を頭から剣を振り落とした。たったそれだけの動作で、ミノタウロスの体は真っ二つに分かれていた。
僕が剣に付いた血を振り落として、息を整える頃には、その場に僕と最後まで動かなかったミノタウロスだけが残っていた。