パート03
「大丈夫ですよ。たとえ他の五人が死んでしまったとしても、あなたはその想像力で生き残ります」
「そう言われてもね……」
たとえ想像力があるとしても、それが実戦で思った通りに出来るかどうかとなると話は別になるだろ。普通は無理に決まってる。
……まあ、普通はね。
一応さっきのウーゴの話と、ナイフを本当に創造出来た事で、打開策は思いついている。
けどうまくいく自信は無いんだよな……。なんせこれが本当に初めての創造になるわけだし、自分の考えた設定がきちんと使えるかどうか不安だ。
まだウーゴの言っているミノタウロスはまだ来てないよな。なら先に創造させた方が良さそうだな。
「すー……はー……」
少し落ち着く為に、軽く深呼吸。
さっきのハンティングナイフは特に設定とか考えないで想像したから出来たけれど、今から僕が創造するのは、僕が書いている小説で作った武器だ。うまく出来る保証はないけれど、だからと言って怖がっている暇もない。
……………よし、やるか。
「えっと確か……『見美に全てを切り裂く力を! 左に全てを守り抜く力を! それらを形にしその姿を現せ! 出でよ、我が双剣!!』」
両手を前に出しながら言うと、両手にそれぞれ一本ずつの剣が現われた。
その二本の剣は形状はまったく同じだけど、色が違う。右は真っ黒に染まっていて、左はその反対で真っ白だ。西洋のナイトが使っている剣や、侍が使っている刀よりは短いけれど、さっきのハンティングナイフよりは長い。例えるならダガ―と言った方がいいのかな。
僕が使いやすいように勝手に設定されているのか、しっかりと手になじんでいる。あと振りやすいようにと、鍔とか余計な装飾は省いているため、かなりシンプルだ。
もしこれで出てこなかったら、それこそ本当にただの変人だ。ちゃんと出てくれてよかった……。
残る問題は、ちゃんとこの剣の能力が使えるかどうかだけだ。
「……本当に凄いですね、あなたは。たったの二回で、こんなにも早く想像して作れる人なんて、滅多にいませんよ」
「褒めたって、何も出せないぞ?」
多分だけど、ウーゴが言っているのはすぐに頭の中で武器の構造やら能力やらを想像する事が出来るとか、そっちの話だと思う。僕の場合はすでに細かい設定とかは決まってたし、あとはそれを創造出来るかどうかだけの問題だった。
「もうここまで来たら、やるしかないよな」
もしかしたら死ぬかもしれないのに、まだ冷静でいられるのはおそらく多少ながら興奮しているからだろう。普通なら恐怖とかで怯えるべきなんだろうけど、やっぱり僕が思っている以上に異世界に来れた感動とかあるみたいだ。
ラノベを読んでいると、いつか異世界とかに行ってみたいって嫌でも思うからな。
でも、ここからは戦いに集中しないと。
「……ちなみにウーゴ、ミノタウロスって、ここだとどのくらいの大きさ?」
僕が読んだ小説で出てきたミノタウロスの大きさは、約人間の二倍くらいの大きさだったはず。
「今あなたが考えている大きさと同じです」
え、それだと結構困るんですが。小説で戦ってたキャラ達もかなり苦戦していたような……。
というかなんか遠くに黒いシルエットが五つも見えてきたんだけど。しかもここからでも十分に大きいんですけど。
あの、やっぱりやめていいっすか?
「やめてしまうと、そこでゲームオーバーですが」
「ですよねー」