パート30
『戦士の魂』を発動している俺は、たった一回剣を交えただけでもエンドは強いということが分かった。あの大きな剣に振り回されることはなく、正確に、さらに予想以上に速い動きをしてきた。
この動きはあの剣による力なのか? だとしても、それさえ除けばあとは実力と能力の差だけだ。
それさえこっちが上回れば、勝機は十分にあるはず。
とはいえ、迂闊に前に出過ぎれば能力の餌食になる。ここはきっちりと見極めた方が良さそうだな。
「ふぅん……。最初は突撃馬鹿かと思ってたが、意外に考えてるんだなぁ。ワラワラ」
「そっちこそ。結構すぎるほどに慎重だな」
「お互い、どんな能力を持ってるかを知らないわけだからもんなぁ。そりゃ迂闊には攻められない……ってとこか。つまらねえな。もっと派手にドンパチと騒ごうぜおい!」
そう言ってくる割には、エンドは一向に自分からは攻めてこない。挑発、というところか。
けれどこうやってるのも時間の無駄だ。だとしたら、ここはいっそこっちから行くしかない。
「一風千刀!」
ミノタウロスと戦った時に出した技と少し似てるけれど、今出した技は少し異なる。
風のようにエンドを通り過ぎると、エンドの体のあちこちから傷が出来て――。
「……なるほどなぁ。案外、分かりやすい技だなぁ」
「なっ……!?」
なのに、エンドの体は無傷だった。でも避けた素振りもなかったし、能力を発動した気配もない。
「この技はあれか。俺を通り過ぎるときに一瞬で剣で切り裂いてるんじゃなくて、剣を振った時に出来る風を使って、相手の体を切り刻んでるわけか。ワラワラ。トリックが分かれば簡単なもんだな?」
しかもこいつ、僕の今の技がどういうのかもズバリと当ててきやがった。
いや、そんなことはどうでもいい。僕が気になってるのは何故攻撃が当たらなかったのかだ。風で切り刻まれたエンドは、本当なら全身から血が噴き出るはずなのに。
もしかして……相手の技を無効化する能力を使ったのか?
「なら……これはどうだ? 一刀両断!」
次に僕は、剣を大きくさせて縦に斬ろうとしたら、エンドはそれを横にサイドステップして回避した。
さっきの一風千刀は当たらなくて、一刀両断は避ける。
ってことは、物理的な攻撃は当たるけれど遠距離の能力は当たらない、もしくは無効化されるって考えた方がいいかもしれない。つまり剣で直接斬りかかればいいってことか。
「そろそろ、俺の能力が何か教えてやろうかぁ? 結構、伏線張ってるつもりなんだがよ」
「いつから伏線張ってたんだよ……。けど、知りたいのは確かだな」
「じゃあ教えてやるよ……。発動、『THE・END』」




