パート02
「その通りです。皆さまにはそうやって戦ってもらいます」
「どういう風にやればいいんだよ?」
「ただ、頭の中で想像するだけで結構です」
想像するだけでいいって……。そんな簡単そうに言われてもな。
じゃあ試しに、よくあるナイフとかでも想像してみるか。ラノベとかでよくあるハンティングナイフを思い浮かべてみると、いつの間にか僕の右手には想像した通りのナイフが握られていた。
「うわっ」
「その感じです。どうやらあなたには素質があるようですね」
素質って言われても。
それにこのぐらいなら、よく小説を書く時とかに妄想……もとい想像してるからな。だからすぐに出来たのだと思う。
「な、なんだよお前……」
む。
どうやらこの訳の分からない状況に、さらに一般人(まああいつらから見たら中二病なんだろうけど)である僕が、また訳の分からない事をしたから、さらに皆は戸惑っているみたいだ。
そんな皆に、僕は呆れながらナイフを向けながら言ってやった。
「ここは夢でも無ければ、ホログラムとかゲームなんかじゃない。いい加減現実って気づけよ」
僕がこういう風に言った事が意外すぎたのか、皆何も言えなくなっていた。
まあそんな事は気にしないでっと……。これってもしかしたら、武器以外にも身体能力をあげたりとか、背中に羽を生やしたりとか出来るのかな?
「いえ、それは無理ですね」
「……もしかしなくても、ウーゴって人の心とか読めたりする?」
「ある程度は」
なんてはた迷惑な能力だ。ってことは、さっきまでの僕がじれったい気持ちもばれてるって事だよね?
「この世界で創造出来るのは武器のみです。それらにいろんな能力を付加させる事は可能ですが、それ以外の創造は出来ません」
「へーなるほど……」
なら、今日の授業中にまとめていたあの設定はいけそうだな。
「それでは、皆さんの創造力に合わせて、まずはテストをしてみましょう」
「テスト?」
そりゃあ、何も分からないままの実戦よりはありがたいけど、僕以外の皆はまだ、創造の話まで頭がついていけてないはずだ。
こんなぐだぐだの状態だと、少しきつくないか……?
「まあそうですね。おそらくこのテストは、あなただけが他の役立たずな皆さんを守りながら戦うでしょう」
「さっきから思ってたけど、ウーゴって結構毒舌なんだな……。まあそれはともかく、戦う相手ってもしかして、さっき言ってた魔物?」
「いえ、モンスターです」
「……いや、それって魔物と変わらないんじゃ」
「モンスターです」
「…………だから魔物と」
「モンスターです」
「…………………」
「正確には、狂牛士」です
「いや、だから魔物とモンスターってどっちも同じ……は?」
ちょっと待て。今ミノタウロスって言ったか?
「あと、一体だけだと足りなさそうなので、五体ほど用意させていただきました」
「はあっ!?」
何を言ってるんだこの要請は!? どこの世界にそんな最初から難易度の高い、死亡フラグ満載のチュートリアルがあるんだよ! そんなのラノベでも見た事ねえぞ!?
ミノタウロスなんてラノベで見た事がある。牛みたいな顔と角を持っていて、馬鹿みたいに怪力が強くて巨大な体を持つ、モンスターの中でも真ん中辺りに強い奴だ。
それにどうせこの世界の事だ。もし現実みたいに致命傷を受けて死んだとしたら――。
「ええ、もちろんその場で本当にお陀仏ですよ」
一番嬉しくない事を、ウーゴはさらりと言いやがった。