パート29
まず第一印象としては、チャライ男だった。
全体的にチャライ。恰好がチャライ。腰に銀のチェーンとかじゃらじゃらついてるし。髪がとがってて色とか金髪だし。元の世界でいう、チャラ男って奴がそのまま出た感じ。
けれど、この世界じゃあそうじゃないことをちゃんと示してくれている。
だって、背中に大きな大剣背負ってるんだから。
「……あんた、誰だ?」
「ずいぶんと定番すぎるぜぇ、その質問は。どうせならもっと変なこと言ってみろよ。ワラワラ」
僕は定番の方が好きなんだよ。つか、なんだよ最後のワラワラって。ネットのチャットでよく見るアルファベットかよ。
けれどこのタイミングでの登場。まるで僕が誰だか知っているかのような口ぶり。
まさか……。
「それで、だ。悪いけどここから先は進ませねえ」
「いきなりすぎだろ、おい。少しは何かしゃべってもいいんじゃないか?」
「ん? それもそうだな……俺の名前はエンドだ。以後、よろしくなぁ。ワラワラ」
エンド……。なんともまあ、厨二病な名前というかなんというか。
「あとはそうだなぁ……お前と同じ異世界人ってとこかぁ?」
「異世界人……!? この人、二眇様と同じって事ですか?」
「そう、みたいだね……」
やっぱり、そうか。
格好と名前。それに登場の仕方とかいろいろと考えた上での予想だったけれど、こいつも僕と同じ、この世界に連れてこられた人間だった。
だとしたら、いろいろと納得が出来る。背中に背負っているあの大剣は創造で作られた武器なんだろう。
そして、どうしてここにいて、どうして僕のことを知っているのか。
「一応聞くけど、エンド。あんたは僕のことを知っているみたいだな」
「まぁな」
「その情報源は――ウーゴからだな?」
「……ほう。やっぱり勘は鋭い奴だなぁ。ワラワラ」
そうエンドが言うと、エンドの後ろから小さな光が飛んできた。それは斉藤さん達と一緒にいるはずの、ウーゴだった。
「どうするウーゴさんよぉ。ネタはもうばれてるみたいだぜぇ?」
「そうみたいですね」
ここからは僕の予想だったけれど、どうやら全部当てはまりそうだった。
この世界には僕ら以外にたくさんの異世界人がいる。
そして、僕らがこの世界に呼ばれたときに最初に出てきたのは、このウーゴだ。
ということは、ウーゴという存在もまた、この世界に償還された分だけいるんじゃないかということ。
さらに言えば、ウーゴはすべてがネットワークみたいに繋がっていて、情報を共有しているんじゃないか。
もしかすると生きてるかもしれない僕を、斉藤さん達といるウーゴは身近にいた異世界人を使って、僕の生存を確認しに行かせたってとこか。
けれどここまで当たるとなると、だんだん自分の才能が怖くなってくるな。
「俺はウーゴから、お前が今後脅威になると言われてなぁ。それはそれで面白そうだが、殺しに来たってシナリオだ」
「それはそれはご苦労様。まさか、誰かに命を狙われるなんて予想してなかったよ」
「つーわけで、構えろや。今のお前だと、ただの人間なんだろ?」
戦士の魂までバレてるということは、こいつは僕の戦闘をどこかで見てたに違いない。
「ではお言葉に甘えて……『誇り高き戦士よ、戦場駆け巡るその力を我に宿したまえ。戦士の魂!』
すっかりそう叫ぶのも慣れてしまったセリフを言って、戦闘準備をする。
「ルナ、援護頼める?」
「分かりました。任せてください、二眇様」
相変わらずその呼び方をしてくるルナに苦笑しつつ、僕は一気にエンドのいる場所へと跳躍する。
「早いなぁ、おい!」
「せっかくこれからって時に、邪魔するな!」
こうして、僕にとって初めての異世界人との戦いが始まった。




