パート28
それから私達モンスターの居場所は無くなりました。
神様はモンスターを倒す為に別の世界、つまり異世界から特殊な人間をこの世界へと呼び出し、そのさいに『創造実現』という力を与えます。人によって使いこなせる人と使いこなせない人がいますが、それはドラゴン種が束になっても勝てない程の力を生み出すと聞きます。
そのせいで、私達の数は減り続け、今ではもう絶滅してしまった種族もいます。
モンスターにも感情はあります。
どうして、ただ意味もなく、一方的に滅ぼされなくてはいけないのかと。
ですが、人間達に復讐をしてしまっては意味がないのです。これは争いで解決してはいけない。それをしてしまうと、本当にどちらも滅びてしまう。
それを防いでくれるのが、勇者様。あなたなのです。
★ ★ ★
「……………」
話を聞き終わった俺は、ルナから貰っていた水を飲み干した。
「……それが、占いの結果だって言うんですか?」
「はい」
しっかりとした頷きをしてきた。
まさかモンスターを倒す勇者かと言われたら、今度はモンスターを救う勇者になるとは……。
どちらかというと、それは魔王のイメージがあるんだけど。
「まあ、どちらにしろ……」
こんな美少女を無視して、見捨てるなんて事はラノベじゃありえないよな。
それにこんな展開は正直面白そうだ。僕の知る限りあまり少ないし、だとするならいっその事魔王にでもなるか?
「あの、どうかなさいましたか?」
「ああ、いや。なんでもないです」
気が付いたら少しにやけてしまっていたらしい。頬が緩むのを抑えながら、僕ははっきりとこう答えた。
「分かりました。僕はモンスターを救う為に、世界の敵になりましょう――」
「あの本当にもう出発して良かったんですか? まだ傷は癒えてないはずなのに……」
「いいんだよルナ。それより、これからよろしくね」
「はい、二眇様」
ルナのお母さんからいろいろと話を聞いたあと、すぐに出発することにした。
あんな話を聞いた後だと今すぐ動かないといけないと思ったからだった。それに、斉藤さんたちの動きも気になるし。おそらくシャインが能力にある擬人化を発動して、僕の代わりに役目を果たしてるだろうけど、念には念を入れておいた方がいいし。
それにしても……。
「その、二眇様ってやめてくれないか?」
「え、どうしてですか?」
「いや、その、そんな事言われ慣れてないからさ。言われるたびにビクッてなるっていうか」
「二眇様」
ビクッ。
「二眇様二眇様」
ビクビクッ。
「二眇――」
「明らかにわざと言ってるよな!? 僕の話ちゃんと聞いてた!?」
「ちゃんと聞いてましたよ、二眇様」
「聞いてないじゃん!」
……こんな調子で、この先の旅大丈夫かな。
ルナの案内について行くと、洞窟を抜けて一番最初にいた草原のような場所に出てきた。
「ここからしばらく歩くと、人間達の都にたどり着きます。しばらくはそこで情報を集めましょう」
「それはいいけど、ルナのその耳はどうやって隠すんだ?」
「このフードを被って、誤魔化します」
そう言いながら取りだしたのは、体全体を隠すように大きな茶色いローブだった。よく正体を隠す為に来ているローブに似ている。
「でも、どうやって都に入るんだ? 警備とかあるだろうし」
「それは……そのときです」
「おい」
こいつ、考えてなかったのかよ。
まあ能力が無い訳でもないから、都に着いた時にでも考えればいいか。ポジティブ精神は大事にしないと。
いよいよ、僕の旅が始まるんだな……。
「おっと、そうは問屋が降ろす訳がねえな」
いきなり、後ろから男の声がした。




