パート26
「……………」
なんか、この世界に来て初めてそれらしい美少女を見たような気がする。
耳が長いという事は、ファンタジーなどでは王道と言っていいほど良く出てくるエルフだと思う。
確か僕の知識だと、エルフというのは寿命が人間よりも遥かに長くて、その細く長い髪は弓矢の弦に使う事が出来るほどの強度を誇る。もちろん何重にも束ねて作るみたいだけど。
ともあれ、やっと人間型の美少女種族に会えた……!
「……あの、大丈夫ですか?」
「ああうん、別に平気」
一瞬口調をどうしようかと思ったけど、普段主人公を書くときに使ってる口調にしておく。多分、今後もこういう口調で通した方がいいような気がする。
「えっと……ここは?」
「ここは私と私の母が暮らしている洞穴です。分かりやすく言えば、砂漠の下にある空洞と言った方がいいですかね」
となると……、あれか。砂漠の地層の下に大きな洞窟みたいなものがあるってことか。
確かにあの遺跡に入る時、階段がずっと下に移動してたから位置的に砂漠の中かあるいはそれよりも下とは思っていたけど。
「あ、申し遅れました。私の名はルナ・フォレストです」
「えっと、僕の名前は野中二眇だ。助けてありがとう」
「いえ、たまたまとポチと一緒にお散歩していたら、あなたがちょうど怪我をしながら転がっていたので」
「へーそうなのか」
それはそれは……なんともまあラノベ的展開だなぁ。一難去ってまた一難かと思っていたら、偶然通りかかった美少女に助けられるなんて。運がいいな、僕。これも日頃の行いがいいからかな。あっはっは。
……さてと。
とりあえずここまでで、疑問が二つ出来た。まずは簡単な方から片付けていこうか。
「ところで、そのポチって誰?」
「今、あなたの隣にいる子ですよ」
言われた通りに見てみると、そこにはさっきのサソリよりは少し小さいサソリがいた。あーこいつがポチですか。
「……普通、犬とかに付ける名前のはずなんだけどな」
「はい?」
「いや、なんでもない。ただの独り言だから」
まあただ僕の事を見てくるだけのようだから、害はないと思いたい。それにこの世界と僕のいた世界とはそういう常識は少し違うのだろう。きっとそうだ。
じゃあ、次にもう一つの方を聞かないと。
「一応聞きたいんだけどさ……。ルナ、さんってエルフだよね?」
「ルナで結構ですよ、二眇さん。私は確かに見た目通り、エルフですけど」
「言っていいのか分からないけどさ……。エルフも人間とは別の種族だから、大きな種類としてモンスターとして分類されてるはずだ」
これは斉藤さん経由で聞いた事だけど、この世界ではモンスターは忌み嫌われし存在だ。まあそれはどのゲームでもラノベでもそうなんだけど、それは人間に友好的な存在である妖精やエルフもモンスターとして扱われ、討伐の対象となっていると聞いた。
だとすると、人間である僕は殺されないとように先に殺されるか、あるいはそのまま放置させられると思うんだけど……。
「なのに、なんで僕を助けてくれたんだ?」
「そんなの当然じゃないですか。傷ついている人がいたら助ける事は」
「……いや、まあそうなんだけど。このまま僕が襲ってきたらどうするんだ?」
「そんな、襲うだなんて……」
いやいや、そこで顔を赤くさせられても反応に困るんですが。
「けれど、あなたはそんな事をしないと思いましたので」
「……勘?」
「いえ、母の占いで」
そこは勘って言おうよ。なんかいろいろと定番と違いすぎてて戸惑い気味なんだけど。
まあ、そんな事はどうでもいいんだよ。問題なのは、なんで森の種族であるエルフが、こんな砂漠の下にある洞穴に住んでいるのかって事だ。
「いろいろと聞きたい事があるのは分かってます。それについては、母に聞いて下さい」
そう言うと、奥の方からどこかルナの面影のある人が出てきた。
そして、初対面だと言うのに一発目からとんでも無い事を言ってきた。
「初めまして、私たちモンスターを救って下さる勇者様」




