パート25
『………い』
なんだ? 声が聞こえる……。
というか僕。死んだんじゃなかったのか?
『……おい。起きろ』
確か薄れゆく意識の中、あの光る目は明らかにサソリの目に間違いないし。無防備な状態で気絶してたらあっという間に殺されるに違いないのに。
ということは、まさかここは天国? それとも地獄か?
『おい! いい加減に起きろ!』
さっきからうるさい奴だな。僕は寝てるんだぞ?
『さっきから喋りまくってるのはどこのどいつだ?』
あれ、声に出してたのか?
まあいいや。今度こそ僕は寝るからな。
『起きろよ!』
本当にうるさい奴だな。
仕方ない、そろそろ起きるとするか。
……なんだここ? 目を開けてみたけど、ただの真っ暗な空間じゃないか。
しかも自分の脇腹に傷が無いという事は、ここはどっかの空想世界とでも考えた方がいいか?
『まったく、やっと起きたのか……』
そして僕の目の前にいるのは、全身が鎧の姿をした人が立っていた。こいつ、まさか……。
『そう。お前の考えた通りだ。俺はお前が考え出した戦士の魂の魂である騎士だ』
やっぱりか……。
あの能力はただ単純に身体能力を上げてるんじゃなくて、亡くなった誇り高き騎士の力を自分に憑依させる事によって上げているというのがミソだ。
つまり、僕のあの動きは目の前にいるこいつ自身の力という事になる。
『わざわざご丁寧に説明しなくても、それを自覚していればいい』
いや、別にお前に言った訳じゃないし。
『この……!? ま、まあいい。だとしても、俺がここにいるのは分かっているだろう?』
あ、一瞬怒ろうとしたけどどうせまた何か言い返されると思ってやめたパターンだ、これ。
『分かってるなら言うな!』
分かった。じゃあ何も言わない。
『いや、言えよ!』
どっちなんだよ、お前は。ここまでで結構シリアス展開だったのに、こんなとこでコメディしてもつまんないだろが。
それで、お前はなんでここにいるんだ?
『く……なんか投げやりに聞こえるが、まあいい。お前の体、私に譲ってもらおうか』
ふーん……。どうして?
『どうしてって……お前が勝手に俺の力を使っているからだろうが! それに俺にはまだ未練がある。それを果たす為に、お前の体を――』
……まあ、そういうとは思ってたよ。
『なに?』
本来なら、空白の設定とかでお前が生まれたと驚くべきなんだろうけど、だけどこれだけは僕が元々考えていた事だしね。
『…………』
それに、この武器や能力は僕が考えてる主人公が使ってる武器だ。なら、欠点をわざと作るのは当然だ。それを乗り越えてこそ、主人公らしさが出るからね。
『……だからどうした』
だからこそ断言してやる。
お前は、僕には絶対に勝てない――。
「…………ううん」
「あ、起きましたか?」
二度目に目を開けると、そこには耳の長い美少女がそこにいた。




