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一般人の僕は異世界では大活躍!?  作者: Douke
第三章「いざ、美少女を求めに!」
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パート23

「うおおおおおおおっ!」

 片目を失って暴れまわっているサソリの上から、僕は勢いよく背中にある甲羅に向けて白い剣を突き刺そうと落ちていた。

 さっきの違和感。サソリが現われる前にしたあの壁を歩いているような音は本当だった。始めは暗くてよく見えなかったけど、近くで見てみると壁には無数の穴が開いていた。

 多分、この穴はサソリがあのするどい足を壁に刺しながら歩いていたんだろう。

 それを俺は利用して、高橋さんとトイナさんが時間稼ぎをしている間にその穴を使って壁を高い位置まで登っていた。そしてあとはタイミングを見計らって、勢いよく飛び降りた。

 いくら刺さらないといっても、高い位置から飛び下りれば重力とか勢いで刺す事は出来る。しかも僕が狙っているのは、甲羅と甲羅の継ぎ目だ。普通なら狙いにくいけれど、レーザーを出す為に動きを止めているサソリなら簡単だった。

 ズブリッ!

 狙い通り、白い剣は甲羅の継ぎ目に刺す事が出来た。そしてそのまま、

「『何物にも通さぬ壁を創り出せ、そして癒しの力を! 輝きの壁オーロラウォール!』」

 サソリに刺さった白い剣は、能力を発動してサソリを囲むかのようにあのドームを生み出す。そして僕は急いでドームの外へと逃げ出す。

「大丈夫? 斉藤さん、トイナさん」

「うん、なんとか大丈夫……」

「私も平気だ……。それより野中、あれはなんだ?」

「あれは僕が発動した能力ですよ。本来、あれは中にいる人を守ったり回復させたりする能力なんですが、僕が敵だと思っている奴には閉じ込める事が出来て……」

 僕がゆったりと話している間に、サソリはさっきまで溜めていたレーザーを出す。

 けれど、そのレーザーはドームに反射して拡散し、ドームの中で暴れまわる。そしてサソリの体のあちこちに当たる。鎧ですら溶かす威力だ。たとえ拡散したとしても、サソリの甲羅を溶かすのだって容易いはず。

「……とまあ、あんな風に自滅させることも出来る訳です。中にいれば回復するって能力もありますけど、あれなら回復量よりもダメージ量の方が大きいはずだから、大して意味は無いはず」

 現に、未だに自分で出したレーザーを喰らい続けているサソリの体はもうボロボロだった。左の鋏はレーザーでちぎれて、体のあちこちにある甲羅は溶けて生身が見えていた。あれならもうドームを解いても大丈夫だろう。

「『能力解除』」

 僕がそう呟くと、ドームが消えて拡散していたレーザーは壁のあちこちに当たって消えた。タイミングをきちんとはかってたから、僕達の元にレーザーが飛んでくる事は無かった。

 ただ、能力解除は一回呟くだけで今僕が発動している能力を全て解除してしまう。つまり、これで戦士の魂ソルジャーソウルも解除された。まあもう戦わないから大丈夫だけどさ。

 サソリは自分のレーザーを喰らって、ほとんど瀕死状態で動く事も出来ないみたいでその場から動けずにいた。いくら丈夫な甲羅でも、さすがに自分の攻撃は防ぐ事は出来なかったな。

「これで、あとは奥にある宝石を取るだけですね」

「あ、ああ……」

 あれだけ手ごわかったサソリが、あんな一瞬で倒す事が出来た事に驚いたのか、トイナさんは呆然としていた。その様子を見ながら、僕は斉藤さんに手を差し伸べて立ちあがらせる。

「本当に、野中君って凄いね……」

「そ、そんな事ないよ。今のだってただの思いつきだし、それにあんな上手くいくとは思わなかったしさ」

 サソリから剣を抜いて、腰に刺しながら高橋さんの言葉に照れてしまう。つーか、これぐらいで照れるなよ、僕。これでも一応男なんだからさ。

 トイナさんは斉藤さんに肩を貸してもらいながら、奥にある宝石の入っている箱へと近づく。僕が恐る恐る箱を開けてみると、中には蒼く輝くサファイアがあった。

「うわぁ……奇麗……」

 斉藤さんがそう呟いた。確かに、これはなかなかに元の世界でも見る事が出来ない。というか初めてこんなの見た。

「えっと、これはトイナさんが持っておいた方がいいですよね?」

「……え? あ、ああ、そうだな」

 トイナさんもサファイアの輝きに感動していたらしく、僕の言葉に慌てて反応した。こんな時に不謹慎かもしれないけど、今の見とれてた表情、ギャップがあって萌えたのは内緒だ。

 サソリの屍を越えて、みんなの所に戻ろうとしたらいきなり高橋さんが立ち止まってサソリの方を向いた。

「……ねえ、野中君。このサソリって本当に死んだの?」

「いきなりどうしたの? 確認しなくても、そのサソリは死んでると思うけど……」

「でも……。ううん、そうだよね。私の勘違いだよね」

 そして再び斉藤さんが僕の方を見た瞬間、僕は見てしまった。

 死んだはずのサソリが、まだくっついていたその大きな尻尾を動かして、斉藤さんとトイナさんに狙いを定めている所を。

「斉藤さん!」

 急いで斉藤さんの腕を掴んで入り口に向かって投げると同時に、脇腹に鋭い痛みが走った。

「がっ…………!」

 サソリの尻尾は僕の脇腹を貫通し、そのまま横なぎに払った。

 戦士の魂を発動させていない僕には抵抗も出来ず、崖へと真っ逆さまに落ちていった。

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