パート 陸
「えいっ!」
慣れない動作だからか、どうしても剣を振る動きがぎこちない。けれど、シャイン・ブレイドの能力のおかげで身体能力は上がってるから、そこそこの威力は出てるはず。
だけれど、それだけだとこの大きなサソリには傷の一つもつけられなかった。その堅い甲羅のせいで、私の攻撃ははじかれてしまう。
『マスター! しゃがめ!』
「え!? う、うん!」
頭に響いた声に従って急いでしゃがむと、頭の上をサソリの大きな鋏が横切った。もし遅かったら、私の体はあの鋏に挟まれていたに違いない。
「あ、ありがとうシャイン」
『礼には及ばない。それより今は前に集中しろ』
「そ、そうだね」
シャインっていうのは、今私が持っているこの剣に付けた愛称だ。野中君が作った設定だと、どうやら私にしか聞こえないみたいで、さっき皆にこの件について聞かれた時も、うっとうしそうに呟いていた。そんな所がどことなく野中君に似てたから、私は少し苦笑してしまった。
けれど、今みたいに戦ってる最中だと的確に指示を出してくれるから、安心して戦う事が出来る。
『倒す事は考えなくていい。とりあえず時間稼ぎをすればいい』
「シャインは、野中君の考えが分かるの?」
『ある程度、は。マスターはあなただが、我が本当の主は二眇殿だからな』
確かにそうだ。いくらシャインを使っているのは私だからといって、それを作ったのは野中君だ。もし私が作ったとしても、これほどの能力を持ったシャインを作る事なんて不可能だろう。
そう考えると、本当に野中君は凄いと思う。これも全部、野中君一人で考えたなんて……。
「……はっ。いけないいけない。ちゃんと集中しないと!」
そうだ。こんな所でそんな事を考えてても意味は無い。それよりも、今は野中君に言われた通りに時間稼ぎをしないと。
「斉藤、話は彼から聞いた。フォローは任せてくれ」
「わ、分かりました」
野中君から事情を聞いたトイナさんが、私の傍にやってきた。それだけなのに、安心感が出る。
「じゃあ……行きます!」
野中君が何をするのかは分からないけど、とにかくこのサソリの注意を私に向けさせないと!
再び剣を構えて、サソリに斬りかかる。けれど今度はその前に巨大な鋏で防がれる。その隙に尻尾で突き刺そうとしてきた。
『左に避けて、もう一度斬りかかれ!』
シャインの指示に従って左に避ける。さっきサソリは私の攻撃を右の鋏で防いだ。つまり、逆の左側に行けばガラ空きになっているはず……!
「はあぁぁっ!」
トイナさんが私を援護するかのように、傷を与えられないと分かっていながらも堅い甲羅で覆われた鋏に切りかかる。そのおかげで一瞬だけど、サソリの注意がトイナさんの方に向いた。
『今だ! 突き刺せ!』
「分かった!」
そのまま真っ直ぐにシャインを突き刺すと、今度ははじかれなかった。
だって、私が今刺した場所はサソリの左目だったから。
「―――――――――!!」
声にならないような悲鳴をサソリは出すと、鋏や尻尾を使って暴れ始めた。急いでシャインを抜いて逃げようとしたら、鋏が横なぎに払われてそれに当たってしまった。
「きゃっ……」
「高橋――ぐあっ!」
攻撃に当たってしまった私に気を取られた瞬間に、トイナさんもサソリの攻撃を受けてしまった。
幸いだったのが、吹き飛ばされた場所が足場のある石橋。もし崖とかに落ちていたらと思うと……。うう、ダメ。そんな事考えたくもない。
「あ……」
サソリに鋏で吹き飛ばされたダメージは意外にも大きかったらしく、すぐに立とうとしても足が震えてなかなか立つ事が出来ない。しかもトイナさんも今の攻撃でさっきの傷に響いたのか、脇腹を押えながら倒れていた。
しかも、サソリは怒っているのか隙だらけの私達に向かって、さっきのレーザーみたいなものをまた撃とうとしていた。
まさに絶体絶命。シャインには野中君みたいに、トイナさんも一緒に守れるような能力は持っていない。どうする事も、出来ない。
「うおおおおおおっ!」
諦めていたその時、野中君の声が聞こえた。




