パート21
遺跡の中は特に変な造りをしているという事はなくて、まっすぐ地下に向かっている階段があるだけだった。しかも所々に火のついた松明があるから、暗くは無い。まるで始めたばかりの人が、一番最初に行くような遺跡だな。
けれど道は意外に狭く、一度ここに入った事がある騎士さんを先頭にして、その後に僕、斉藤さんという順番で階段を下りていった。
「そういえば自己紹介がまだだったな。私の名前はトイナ・クラストだ」
「僕は野中二眇です」
「わ、私は斉藤瑠花って言います」
階段は思ったよりも長く、降りている間にいろいろ聞く事にする。どうして宝石を求めているのかとか聞きたいけど、今はモンスターを倒す方が重要のはず。なら、一体どんな攻撃をしてくるのかとか聞いといた方がいいだろう。
「それで、その大きなサソリって一体攻撃をしてくるんですか? 僕の予想だと、鋏で挟んできたり、尻尾で突き刺すくらいだと思うんですけど……」
「ああ。我々もそう思っていた。けど奴はそれだけじゃなく、おかしな魔法のような物を出してきた」
「魔法のような、物?」
「いや、なんといえばいいんだろうな……。光のようなものが来たかと思ったら、それにかすっただけで鎧が一瞬で溶けてしまったんだ」
多分、レーザーか何かと思えばいいんだろう。なるほど、通りで鎧に溶けたような後があったわけだ。
となると、やっぱり手ごわそうな相手には間違いないんだ。
「しかも向こうは自由に動き回れるんだが、こっちは思ったように動けない」
「どういう事ですか?」
「足場があまりないんだ。道の両端にはここよりも下へと落ちる崖になっていて、私が確認しただけでもそうとう深い。おそらく、落ちたら命は無いだろう」
……なるほど。
つまり向こうには地の有利があるということだろう。それならそれで、対処は考えられる。
ただ問題があるとするなら、その後なんだけど……。まあ、そこはなんとかするしかないか。
「――着いたぞ」
階段の終点が見えてきて、僕たちはさらにその向こうへと歩いて行く。
そこには、トイナさんが言った通り奥にある小さな箱へと続く道があるだけだった。もちろん道の両端には底がまったく見えない崖があった。
分かりやすく言うとするなら、橋のような道と言った方が分かりやすいか。まあ橋よりは幅が少し広いし、石で出来てるから崩れる心配はなさそうだ。
さらにどうやらここは広場みたいになっていて、学校にある体育館……までは広くないけど、それほどの空間があった。これはおそらく、大きなサソリのための空間だろう。ここにも松明があるから、さっきの階段よりは明るいけど、天井まで光は届いてなくて、どれほどの高さがあるのか分からない。
「おかしい……。ここにはまだ五人ほどの仲間が戦っていたはずだ……」
「あんまり考えたくないですけど、多分もうやられたと思います」
「に、二眇君……。その言い方はさすがに……」
「斉藤さんももう剣を抜いておいた方がいいよ。そろそろ、来る」
腰に指してあった二つの剣を抜きながら、辺りを警戒する。
『戦士の魂』を発動しなくても、この場の空気が重く感じるのが分かる。ここは相手の領域。どこから来てもおかしくはない。
「…………」
トイナさんも真剣な表情で剣を抜く。斉藤さんもシャイン・ウイングを抜いて、本来の姿へと変化させる。そして僕も『戦士の魂』をなるべく静かに発動させて、周りを見渡しながら奥の宝石が入っているであろう小さな箱へと歩いて行く。
真ん中辺りまで歩いてきた所で、音が聞こえた。間違いない、サソリの足音だ。僕達の足音はコツン、コツンという音に対して、カカカカッとまるで壁を歩いているような音が……。
「……壁を歩いてる?」
自分で思って、自分で疑問に思った。壁を歩いてるって、そんなカメレオンなんかじゃあるまいし。
しばらく止まって、どこから出てくるか身構えていると、急にその音が止まった。
不審に思っていると、上から何かが落ちてきた。見てみるとそれは、何の変哲もない石だった。
「上だ!」
トイナさんが叫ぶのと同時に上を見上げると、僕達を押しつぶそうと天井から大きなサソリの姿が落ちてくるのを見た。




