パート17
振り返ってみると、そこにはやっぱり斉藤さんがいた。
……実は、誰かから追いかけられているのは分かっていたんだけど、予想通り斉藤さんだったか。最近、他のみんなをしっかりとまとめていて、僕としては自由に動けて良かったんだけど、その斉藤さんが僕を放っておくとは思わなかった。
あ、いや、別にうぬぼれとかじゃなくて! ただ斉藤さんはクラス委員長だしな! 単独行動は絶対に許さなそうだからな!
なんて一人で慌てていたら、斉藤さんはどこか不安そうな顔をしながら僕の元にやってきた。
「こんな遅くに何やってるの?」
「ちょっと、創造についていろいろ調べてたんだ」
「創造について?」
僕は今日までに分かってきた事を全部、斉藤さんに言った。僕のつたない説明で伝わったかどうか心配だったけど、斉藤さんはクラスでトップの成績を取っているらしい。理解は出来るはず。
「そうなんだ……」
僕の話を聞き終わって、斉藤さんは少し何か考えていた。
……この流れだと僕としてはこれから先、一生後悔しそうな展開になりそうなんだけど。
僕のこういう時のラノベ勘は、異世界に来てからはよく当たってしまう。
そして、斉藤さんは予想通りの事を僕に言ってきた。
「ねえ野中君。私にも創造って、出来ないかな……?」
ほらきた。
そんな事を聞いてくるとは思ってたよ、うん。
けど僕は、『本来なら誰でも出来るはず』の創造を教えたくなかった。
創造というのは、ただファンタジー映画や漫画とかでも見ていれば、そこに出てくる剣とかを想像するだけで出来てしまう。それは僕がここにきて一番最初に創造した、ハンティングナイフが例だ。
簡単に言うならば、ただの剣に戦闘に有利な能力と一緒に創造してしまえばいいだけの話。
難しく考えずに、ただ思った事を想像するだけで出来るんだ。
だけどそれをしてしまうと、この世界で特別な扱いをこれから先受ける事になってしまう。
今はそれでいいのかもしれないけど、これから先の事を考えてしまうと、どうしてもためらってしまう。
命を賭ける戦いをするのは、僕だけで十分だ。
そう思っていた。
「……私は、あまり野中君の事を知らないけど、多分私たちが足手まといだから、たった一人で何もかも背負おうとしてるんだよね?」
だというのに。
なんで、斉藤さんはそれを見破ってしまうんだよ。
「創造が出来るのは野中君だけで、出来ない私たちはお荷物扱い。それだといつか、私たちのせいで野中君が危険な目に会ってしまう」
「別に……僕のことなんて……」
「それじゃダメだよ!」
いきなり、斉藤さんは僕の手を掴んできた。
「今の私たちの目標は、『みんなで元の世界に戻る』ことなんだよ!? そこにはちゃんと野中君のことも含まれてるんだよ!」
……ああもう、ダメだ。これじゃあ。
どこぞのトラウマ持ちの主人公とかが、ヒロインに救われるってこんな気持ちなんだろうな。これから小説書く時に参考にさせてもらうよ。
もう、今ので決心がついたよ。
「……分かったよ。斉藤さんに創造の仕方を教えるよ」
「本当に!?」
「だけど――条件があるんだ」
そう、だからといって、僕は簡単に教える訳にはいかない事を理解している。
だから僕は、一種の賭けに出る。
これが吉と出るか凶と出るかわからないけど、全ては斉藤さん次第だ。
「今から、僕と戦ってもらうよ」




