パート16
この異世界に来てから、三日間経った。
その間に僕は村でいろんな情報を集めていた。この村は、近くの砂漠を越える時に食料や道具を整えるためによく商人たちが出入りして、比較的情報は集めやすかった。
この異世界はどうやら『クレジオネ』と呼ばれているみたいだった。
国は大きく分けて三つに分かれていると、斉藤さんが言っていた。その大半を示しているのがヲルダ王国と呼ばれている国で、僕たちが今いるこの村もその領地に含まれているみたいだった。
そしてこの世界では、僕たちみたいにこの世界に召喚――というより連れてこられた人たちを、様々な呼び方をしていた。勇者、迷い人、咎人、賞金首……。
どうしてこんなに呼び方があるかというと、かつてこの世界に来た人たちがそう呼ばれていたから。
人を助けるために戦う人もいれば、罪を犯し続ける人など。
まあ正直な話、どれもある意味当たり前の行動だと思う。僕だって一人でこの世界に来てたら、いったいどんな事をやらかしていたか……。
なにはともあれ、どうやら僕たち以外にもこの異世界に来ている人がいるかもしれない。
そういう人から元の世界に帰れる方法を聞いた方が、手っ取り早く帰れるだろう。僕と斉藤さんはそういう結論に至って、明日にでもこの村の近くにある都の方に移動することにした。
……けど、せっかく元の世界に帰れる方法を知っている人が、わざわざ残っていたりするのだろうか。よほどこの異世界に執着心があったり、元の世界に帰りたくないとかなら分からなくは無い。
もしくは、その方法が困難すぎて無理だとか、そういう事も考えられる。
ともかく、しばらくの方針はこういう感じだった。
この村を出る前の晩。
僕はこの世界に来てから、欠かさず行っているある事をするために、みんなを起こさないように宿を出た。
周りに誰もいない事を確認してから、僕は武器を創造し始めた。
「『右に全てを切り裂く力を! 左に全てを守り抜く力を! それらを形にしその姿を現せ! 出でよ我が剣!!』」
そうつぶやくと、一秒も経たずに僕の両手に黒と白の双剣が現われた。
「……やっぱり、口に出さないと出てこないのか」
そう。僕が今しているのは、創造についての研究のようなものだった。
どれだけ早く出す事が出来るのか。また、よくラノベとかである精神力や体力などの消費があるのか。どれほどの威力を出す事が出来るのか。複数同時に出す事が出来るのか。
そう言った事を、一人でずっとやってみた。
「省略してやってみても、無理なんだろうな……」
とりあえず今分かっている事は、何度も繰り返し創造しているとイメージが定着されてくるのか、出てくるまでの時間がどんどん短くなる事。
あとは同じ武器は複製出来ないってことぐらいだ。けどこれには例外があるみたいで、なんの能力を持たないナイフとかは、いくつでも出す事が出来た。おそらく、これは能力を持った武器だけだろう。
あとは能力が強力すぎる武器は僕にはまだ無理みたいだった。一度試しにやろうとしてみたけど、出して十秒もしないうちに気絶してしまった。つまりやっぱり精神力の消費とかがあるみたいだ。
あと気になる事と言ったら、空白の設定だ。
正直、これをきちんと把握しない限りは新しく生み出した武器とかは使わない方がいい。一番最初に戦ったケンタウロスの時に思い知らされた。
ま、こういう地味な修行とかも案外楽しくなってきたしな。これからじっくりと――。
「…………野中君?」
またあれこれ試そうとしていたら、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。




