パート15
「……なんだぁ? あいつ」
二眇が村に帰っていく姿を、遠くで見つめる人影。
「武器を消してるってことはあっちの世界から来た奴なんだろうが……。ありゃ完璧中二病じゃねえか」
わらわらと、わざわざ口で言って笑う男がそこにいた。
「いやーしかし……。ありゃとんでもねえ奴だな。俺ほどじゃないが、そこそこ才能あるじゃねえか。それにあれだけ酷使してもなおピンピンしてるとなると、かなりの精神力があるってところか?」
打ったばかりの弓を消滅させ、望遠鏡を腰のバックにしまい込む。
「さらに厄介そうなのが、想創できる武器があれだけじゃなさそうって事だな。まあそれぐらいは誰でも出来るからいいとして、だ。あいつはそれをいくつでも同時に使える事もまた問題か。わらわら、こりゃあ久しぶりにたのしめそうじゃねえか。そう思わねえか? ウーゴさんよ」
「……問題なのは、そこではありません」
男の肩には、瑠花たちと一緒にいるはずのウーゴがいた。
「問題なのは、あの男がいずれこの世界の核心に気づいてそれを滅ぼしてしまうことなのです」
「俺はその核心とやらには興味は無いがね、そりゃ本当なのか?」
「それだけの力を隠し持ってるんです。この世界にいればいるほど力を増していき――いずれはこの世界の神に匹敵するほどの武器を作り上げます」
「未来予知が出来るあんたがそう言うならそうなんだろうが……。それで? 俺はあいつを殺せばいいのか?」
「はい」
何のためらいも無く、ウーゴはそう言った。
「かっ、てめえらが勝手に俺らを呼び出しておいて勝手に殺すのか。なんとも身勝手な話なんだろうな」
「私たちですら予想出来なかったんです」
「まさに神がかってる、ってとこか。そりゃすげえな」
再びわらわら、と笑いだす。
「……お?」
男が何かに気付いたようで、急いでその場から逃げる。すると、さっきまでいた場所に一本の槍が飛んできた。
「あっぶねぇな、おい!」
男が振り返ると、そこには様々な武器を持った少女がいた。
「…………あなた、賞金首でしょ。大人しく捕まって」
「ちっ、めんどい奴に出会ったもんだ……」
相手が自分を狙う賞金首ハンターだと気づくと、男は腕を横に振る。たったそれだけの動作で、男の手には巨大な大剣が握られていた。
「ま、せいぜい俺と出会うまで生き延びな。俺の将来のライバルさんよ」
遠くの山奥で、戦いの音が鳴り始めた。




