パート08
「う……」
目を覚ますと、僕はブレザーをかけられて横になっていた。
さすがの僕でも夢かと思ったけど、空は黒いまんまだからやっぱり夢じゃないんだろう。
……夢の方が良かったかな。なんとなく、これからの事を思うとそう考えてしまう。
「あ、目覚めたみたいだね」
するといきなり、僕の顔を覗き込んでくる女子が……って顔近いよ!
「うわわわっ!」
「きゃっ」
あんまりにもいきなりだったから焦ってしまった僕は、その女子から思いっきり離れてしまった。学校では女子とは全然関わりなかったから、こういう事をされるとどうしても拒絶反応が起きてしまう。
「び、びっくりした……」
「ご、ごめんね? 驚かすつもりはなかったんだけど……」
「あ、いや、今のは僕がただびっくりしただけ……じゃなくて、ええと、だから」
あまりにも気持ちがテンパリ過ぎて、自分でも何を言っているのかだんだん分からなくなってきた。
「とりあえずその、怪我とか大丈夫?」
「ぜ、全然大丈夫だよ。それにさっきのミノタウロスの攻撃は一度も当たってないから」
「そうじゃなくて……ほら、さっき私たちを守ってくれたあのドームで受けた方なんだけど……」
そういえば物理的ダメージは受けてなくても、内側からダメージをもらったんだった。けど寝たから別に体のどこかが痛むわけでもない。ただ、疲労感はまだ少し残ってるみたいだ。
「そっちも平気。そういえば他のみんなは?」
「私以外のみんなは、先にもう寝てるよ。今日は……いろいろあったから」
周りを見渡してみると、他の四人は横になって眠っていた。ミノタウロスの死体が離れた位置にあるってことは、どうやら気絶した僕をここまで誰かが運んでくれたってことか。多分、あそこでイビキをかきながら寝ているあの体育系男子だと思うけど。
でも……仕方ないか。いきなり変な世界に来たかと思ったら、いきなりミノタウロスが現れたからな。
というか、こんなだだっ広い場所で寝てて大丈夫なのか?
「それには心配ありません」
「うわっ」
いつの間にか、ウーゴが僕の肩に乗っかっていた。
「この辺りにはモンスターはいませんよ」
「あっそう……。ええっと、君は寝なくていいの?」
「え、私?」
「うん、君」
というか、クラスのみんなの名前とか全然覚えてないから、君とかお前しか言えないってのが現状。こんな事になるなら、ちゃんと覚えておけば良かった。
「もしかして……私の名前、知らない?」
「うっ」
いきなり図星言われた……。これほど恥ずかしい事ってそうそう無いぞ。
でも本当の事だから、素直にうなずく事にする。
「まあ、私もあなたの事は中二病って事しか知らないから、これでお互い様だね。私は学校だとクラス委員長をしてた斉藤瑠花って言います」
クラス委員長だったんだ。どおりで、さっきみんなが素直に従った訳だ。
「えっと……僕の名前は、野中二眇だ」




