第三十二章 歪んだ信念
第32章「歪んだ信念」です。
悲劇を経験したことで、揺らぎ始めた一人の教師の信念。
生徒を守るためには、何が必要なのか。
自由を与えることなのか。
それとも――
危険そのものを取り除くことなのか。
その答えを求める中で、少しずつ考え方が変わっていきます。
それでは、どうぞ。
――ある日の放課後。
高橋は、一人で学校に残っていた。
そして――
娘のことを思い出す。
高橋「……もし。」
「もっと早く、娘の周りにいる人間を把握していたら……。」
「もっと早く、危険から遠ざけていたら……。」
「……娘は死なずに済んだのか?」
――答えはない。
その時。
廊下から、教師たちの声が聞こえてくる。
教師「最近の生徒たちは、昔とは違いますからね。」
「教師が何でも介入するわけにもいきませんよ。」
別の教師「そうですね。」
――高橋は、その会話を聞いていた。
「……介入してはいけない?」
「危険だと分かっていても?」
「……それで、生徒を守れるのか?」
――拳を握る。
「危険があるなら、それを未然に防ぐのが教師の役目だろ……!」
「生徒が死んだんだぞ……。」
「それで、介入できないだと……?」
「ふざけるな……!」
――しばらくの沈黙。
「……あいつらは気づかない。」
「何も変わらない……。」
――そして。
水野の顔が頭に浮かぶ。
高橋「……先生だってそうだ。」
「生徒を信じる?」
「……そんなことじゃ、誰も守れない。」
――高橋の表情が歪む。
「元はと言えば……」
「あの時、もっと強く対応していれば……。」
「……娘は死ななかったんじゃないか……?」
――高橋は、ゆっくりと顔を上げる。
「……それでも。」
「俺が変わるしかない。」
「俺にしかできない……。」
――誰もいない教室。
高橋の声だけが響く。
「生徒たちを守るには……」
「危険を未然に防ぐ。」
「そして……」
「危険を排除する。」
――高橋の口元が、わずかに歪む。
「ふ……。」
「……ふふ。」
「……ふふふ。」
――その日から。
高橋の様子が変わっていく。
生徒への対応。
教師への接し方。
そして――
自分自身の考え方。
その根本にあるのは――
たった一つの想いだった。
――俺が、この学校を変える。
――いらないモノは。
――全て壊す。
第32章を読んでいただき、ありがとうございます。
「生徒を守る」という思いは、いつしか別の形へと変わり始めました。
本人にとっては、生徒を守るための正しい選択。
しかし――
その先に待っているものは、果たして本当に「正しさ」なのでしょうか。
揺らいでいた信念は、ついに一つの答えへ辿り着こうとしています。
次章から、その考えが具体的な「計画」へと変わっていきます。
引き続き、楽しんでいただけたら嬉しいです!




