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翼のない俺たちに幸せの粉を‼︎  作者: 織部りお
第1章 0からのスタート

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0話 辿り着けない境地


 人間は、死んだらどこへ向かうのか。

 長い人生の中で、「永遠のテーマ」とも言えるその疑問。


 仏教では「極楽浄土」。そのほかにも「成仏」や「輪廻転生」という考え方がある。

 キリスト教では「天国か地獄」。それに加えて「煉獄」という場所もあるらしい。

 イスラム教では「一時的なお別れ」という解釈で、日本と違い土葬するのが一般的だ。


 俺の中では「異世界へ転生し、可愛いヒロインに囲まれながら、魔王を倒すために授かったチート能力で無双する」。もしくは「人外系」「性転換系」「タイムリープ系」。

 「転生」ではなく「転移」の場合も……まあ、この辺にしておこう。


 まあこのように、その「永遠のテーマ」の答えはさまざまだ。

 正解は、誰にもわからない。

 生きている以上、辿り着けない境地。


 きっと、誰もがそう思っている。

 もちろん俺も、そう思っていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 朝が来た。

 何だか懐かしい夢を見たような気がする。心なしか泣きそうになっているように感じる。

 そんな中、俺はいつものように制服に着替え、玄関の扉を開けた。


「行ってきます」


 後ろに立つ母に声をかけると、返事を待つことなく俺は玄関のドアノブを捻った。微かに聞こえる「行ってらっしゃい」の声は、俺の意識に入ることはなく、ドアの閉まる音でかき消された。


 夏の朝。猛暑の中で、駅まで歩くその道のりが、苦痛で苦痛で仕方なかった。リュックと背中の間には、滝のように汗が流れ、首にかけたタオルで額を拭うも、次々と零れる汗は止まろうとしない。

 こんな思いをして、なぜ俺は学校になんて向かうのか。行ったって、何もいいことなんか無いのに。


 俺の視線の先で、1人の少女が歩いている。


「あぁ……あんな小さい頃に戻りたいな」


 ただただ何も考えずひたすら遊び、やりたいことを好きなだけ見つけ、好きなだけ実行し、世の中のいいところだけを直視できるそんな頃に。

 

「はぁ……ん?」


 足が勝手に動いていた、頭では考えていない。信号は赤だった、悪いのは車だ。



ーーーーーー何やってんだ? 俺。



 手のひらが少女に触れた。間に合った、良かった。

 安堵は束の間、現実は大型トラックと共に押し寄せた。


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― 新着の感想 ―
冒頭の、父と花火を見ていた記憶がとても優しくて、そのぶん後半の現実との落差が強く胸に残りました。とくに「幸せ」とは何かを問いかける流れが印象的で、ただの導入ではなく、この物語全体の芯を最初に置いてくる…
「そう言った父さんの瞳には、花火は映っていなかった」この言葉が効いてます。父親の愛情がどこに向かっているかを如実に表す表現です。素晴らしい!
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