0話 辿り着けない境地
人間は、死んだらどこへ向かうのか。
長い人生の中で、「永遠のテーマ」とも言えるその疑問。
仏教では「極楽浄土」。そのほかにも「成仏」や「輪廻転生」という考え方がある。
キリスト教では「天国か地獄」。それに加えて「煉獄」という場所もあるらしい。
イスラム教では「一時的なお別れ」という解釈で、日本と違い土葬するのが一般的だ。
俺の中では「異世界へ転生し、可愛いヒロインに囲まれながら、魔王を倒すために授かったチート能力で無双する」。もしくは「人外系」「性転換系」「タイムリープ系」。
「転生」ではなく「転移」の場合も……まあ、この辺にしておこう。
まあこのように、その「永遠のテーマ」の答えはさまざまだ。
正解は、誰にもわからない。
生きている以上、辿り着けない境地。
きっと、誰もがそう思っている。
もちろん俺も、そう思っていた。
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朝が来た。
何だか懐かしい夢を見たような気がする。心なしか泣きそうになっているように感じる。
そんな中、俺はいつものように制服に着替え、玄関の扉を開けた。
「行ってきます」
後ろに立つ母に声をかけると、返事を待つことなく俺は玄関のドアノブを捻った。微かに聞こえる「行ってらっしゃい」の声は、俺の意識に入ることはなく、ドアの閉まる音でかき消された。
夏の朝。猛暑の中で、駅まで歩くその道のりが、苦痛で苦痛で仕方なかった。リュックと背中の間には、滝のように汗が流れ、首にかけたタオルで額を拭うも、次々と零れる汗は止まろうとしない。
こんな思いをして、なぜ俺は学校になんて向かうのか。行ったって、何もいいことなんか無いのに。
俺の視線の先で、1人の少女が歩いている。
「あぁ……あんな小さい頃に戻りたいな」
ただただ何も考えずひたすら遊び、やりたいことを好きなだけ見つけ、好きなだけ実行し、世の中のいいところだけを直視できるそんな頃に。
「はぁ……ん?」
足が勝手に動いていた、頭では考えていない。信号は赤だった、悪いのは車だ。
ーーーーーー何やってんだ? 俺。
手のひらが少女に触れた。間に合った、良かった。
安堵は束の間、現実は大型トラックと共に押し寄せた。




