ルシィの特技
午後の授業が終わり、エルサム様はアリシア様と午後のお茶会を楽しむため王室専用サロンへ向かっていた。他貴族と制服が違うので、生徒に混じり廊下を歩くだけで目立つ。
他の貴族の生徒も、エルサム様が廊下の真ん中を歩くと、邪魔にならないように端によっている。エルサム様が、美しい顔を上に向ける。
ふと、窓を見たらしいエルサム様は一気に窓の方へ向かう。あぁ、、窓側に寄っていた貴族令嬢が避けきれずに窓とエルサム様に挟まれている。
あまりの美貌に気絶してない???その令嬢には悪いが、無視して僕もエルサム様の側で窓の外を見る。
そこには驚きの光景があった。
窓の外には、アリシア様とルシィがいた。何やら話し込んでいる。、、と思ったその瞬間。
ルシィの手が天に上がりそのままアリシア様目掛けて落ちていく、まずい殴られる。そう思った僕はアリシア様の位置を意識した。
パァンッ
いい音がしたなって思った瞬間に、左頬に鈍い痛みが走る。
「イッタ、、!」
思わず僕は左頬を押さえる。間に合ってよかった。
僕は将来、エルサム様の奥様になったアリシア様に間接的に使えることが心の支えなのに、ここでアリシア様に何かあったら大変だ。
僕はルシィを見た。ルシィは突然現れた僕に驚きつつも怒ったのか顔が真っ赤だ。
「なんでエルサムの金魚のフンがここにいんだよ!?アリシアどこだよ!???」
キンギョ、、、?異世界の生き物なのかな?とりあえず悪い意味なのは理解する。
「“様”をおつけください。ルシィ男爵令嬢。今のはアリシア様に当たってしまっていたら、即刻死刑でしたよ。」
僕はルシィに注意をする。この様子だと脳みそ弄って、異世界転生者だってことを知っているとは気取られてなさそうだ。
ルシィは僕に詫びれもせず、僕に指を刺す。
「いい?!アリシアが私のことを“先に”叩こうとしたの!!これは正当防衛なの!!わかった!??」
この距離でキンキン叫ばないでくれないかな?聞こえてるよ。言いたいことを言うと令嬢にはあるまじき大股でドスドス歩いて行ってしまった。
あれ、護衛だったはずのプリシラが近くにいない、、。どこいったんだ?そう思ってあたりをキョロキョロしていると、プリシラが中庭に通じる渡り廊下の向こうから走ってきた。
「エディ殿!!アリシア様は!?」
「え、?多分2階にいると思うよ。それよりプリシラはどこにいたの?」
そういうとプリシラはバツの悪そうな顔をした。
「やられたよ。ルシィの特技はかなり強力らしい。男子生徒が20人束になって私を止めてきたよ。」
なるほど、流石に無抵抗の貴族の男子生徒を殴って突破するわけにはいかないもんな。
殴ったら、主人のアリシア様の評判が悪くなっちゃうし。そう納得してたら、プリシラが驚いた顔をした。
「エディ殿!左頬が赤くなっております!すぐ治療を!」
「あぁ、、これね。後で自分でやるから大丈夫〜」
そう僕は二ヘラと笑う。すると
「なりません。」
凛とした声に弾かれるように振り向くと、そこにはアリシア様と、後ろにエルサム様がいらっしゃった。
「私の代わりに、、、痛かったでしょう、、、」
そういうアリシア様が、僕の赤く腫れた左頬に手を触れると、暖かい光と共にみるみる腫れが引いていく。
そう、これがアリシア様の特技『大天使の癒し』。どんな怪我も病もアリシア様の手にかかれば立ち待ち治るのだ。
治療が終わるとアリシア様は、天使のような穏やかな微笑みを浮かべる。
「もう治りましたよ。ありがとう、エディ」
あぁ〜幸せ〜そう思っているのも束の間。
後ろでは、魔獣グマも泣いて逃げるほどの形相を浮かべたエルサム様が、ルシィが立ち去った先を氷のような眼差しで射殺するように睨みつけていた。
そして僕と目が合うと、アリシア様に気付かれないように僕に向かって、ニコリとハンドサインで“殺す”と伝えてきた。
もう、、独占欲が強いんだから、、、。さよなら、さっきまでの幸せな気持ち、、、。
【アサノニア帝国歴1026年冬の月25日目に追記】
この時、子猫と戯れる感覚だったんだろうエルサム様が、本気で狩りに行く姿勢に変わった出来事だったんだと、振り返ると思う。




