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どうか私と茨の道でワルツを その2

社交界で見かけた美しいエルサムとは正反対の姿をした男の目の前に、アリシアは無言で座る。


すぐさまそばで控えていたメイドが紅茶を出す。アリシアはその紅茶を凝視し、しばらく見つめる。その様子は何かを考えているようだ。


「どうした?君が好きな茶葉だと聞いて取り寄せたんだが?」


男は脂ぎった肌をテカらせながら、ニタニタとアリシアに笑って見せた。彼女は男のそれには反応せず、カップの縁を人差し指で軽く触れた。


男は訝しげにその様子を見ていた。アリシアは両目を閉じ、静かにため息をついた。


「姿を変身魔法で変え、尚且つレディの紅茶に薬を仕込むとはどういう了見ですか?」


そう言われた小太りの男は、ニチャ...と下品に笑ったかと思ったら、指を鳴らした。


その途端、魔法陣が男を包み込む。


そこから、完璧な彫刻が動き出したかと思うような、美しい男が姿を現す。アリシアは記憶の中のエルサム王子と一致したことを確信した。


エルサムは、道端で捨てられた仔犬のような顔でアリシアに語りかける。


「申し訳ないレディ。非礼を詫びよう。非礼ついでに、私の魔法と薬に気づいた理由をお伺いしても?」


エルサムは、並の令嬢ならあまりの美しさで卒倒するような笑みを彼女に向けたが、アリシアは気にも留めていない様子だった。


「エルサム様のお姿は、王族のパーティでお見かけしておりました、またお声も一度拝聴しておりましたので記憶しており、お声を聞いた瞬間にすぐにわかりました」


「ほう・・・」


エルサムはアリシアの見解に感嘆の声をあげる。


「薬については、紅茶の香りと温度で判断をしました。この茶葉は90℃ほどの熱湯で一気に香り立たせるものですが、カップから伝わるのは人肌温度でした」


そう言いながら、紅茶のカップの外を指でなぞる。


「考えられるのは、熱湯だと効果が出ない何かを入れたこと。薬と言ったのは感です」


アリシアはここまで話すと、エルサムは静かに拍手を彼女に送った。


「素晴らしい。今までの令嬢はここまでわからなかった」


エルサムは満足そうに微笑む、その顔は絵画の中で微笑む女神のようだった。アリシアはその笑顔に絆されることなく、毅然とした姿勢をとる。


「なぜ、このようなことを?」


アリシアの問いに、エルサムはテーブルの上仁に両手を置いて、彼女を晴天の青の瞳で捉える。


「婚約者を探していた・・・君のような。女の園の扱いは私には過ぎたもの。君に舵をとってもらえればありがたいと思っている」


(これは、事実上の求婚に近いわね)


アリシアは表情を変えず、この状況を整理する。周りに従者の類はいない、つまりこの場は非公式であると暗に示されている。


(冷血漢と噂されているにしては、配慮がある方なのね)


彼はアリシアに結婚を強制する意思はないと理解すると、彼女はエルサムに向き直る。


「お断りします。・・・陛下、どんな理由であれ、令嬢(国民)を傷つけてはなりません・・・そのような方に付き従うのは難しく存じます」


アリシアは、そのままエルサムに一礼し、その場を後にした。


自宅に帰るとことの経緯を父たちに伝えた。彼女は不敬罪で捕まるかと覚悟したが、その後、事態が急変した。


令嬢を中心に社交界で噂になったのだ。


「エルサム様とアリシア様はご結婚される」と。


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