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番外編3 私の人生再スタート

ちょっと読む人を選ぶ内容だと思うので、少女は笑顔でいてほしいと思う人はスキップしてください。

「カトウチエミでっす♡ちぃちゃんって呼んでぇ〜」


港区にあるオシャレなイタリアンのお店で甲高い声が響く。


店全体は間接照明がついており、それを補佐するように、テーブルで輝いている蝋燭の火が揺れている。


「へ・・・へぇ、ちなみにカトウさんの趣味はなんですか・・・?」


「えぇ〜趣味は〜・・・カフェ巡りだよ〜」


そう言った当たり障りのない会話をしながら、一時間が過ぎていった。


・・・


「チッ!!28歳証券マンっていうから期待してたのに!LIme交換すらしないの童貞すぎ!!」


カトウは本日のマッチングアプリの結果に満足いかず、家でビールを飲みながら携帯でマッチングアプリを開き、次の相手を物色していた。


「42?じじぃが!キモ!・・・次は、顔はイイけど年収300万!?ムリ〜」


彼女は高校卒業後、工事系の事務職に就いていた。年配の社員にチヤホヤされていくうちに、自分はモテると確信し、港区のラウンジに行くようになった。


「こいつは〜営業主任?まぁ、年収いいしいいかな?ゲ!ハゲじゃん!!」


20歳から25歳ごろは、お金を持っている男性が高級なご飯を奢ってもらい、ブランド物バックやアクセサリーを買ってもらった。


「23歳か〜年下だけど、年収800万!?ん〜及第点かな〜?」


26歳ごろになると、相手にだんだんしてもらえなくなったため、もらったブランド物バックやアクセサリーを売り、昼職についた。現在の年収は280万である。


「うわ!絶対ホストじゃん!なめんなよ」


27歳ごろになると30歳の彼氏が出来、32歳ごろまで同棲をしていた、そのまま結婚できると思っていたら、別れを告げられた。


「38歳・・・年収が400万じゃん!ザッコwww」


後で知ったが、その彼氏は23歳の女性と結婚したという。


そのまま6年間婚活をしているが、良い出会いがないのだ。理由は、見返したいというプライドが高いためである。


彼女はマッチング依頼リストを右へ左へスワイプしながら、今日も理想の相手を見定めて行く。


「はー!今日はこんなもんでいいかな?」


カトウはマッチした相手にメッセージの返信をし、マッチングアプリを閉じた。すぐに、outstagramを開く、そこには高校時代や寿退社、育休産休に入った職場の人の投稿で溢れかえっていた。


『結婚して8年!やりくりしたお金で明後日からかねてから計画してた新婚旅行のヨーロッパ〜♡子供も一緒で不安だけど、旦那としっかり準備したから楽しみ〜!』


「ハッ低収入旦那と結婚するからよ!新婚旅行に8年!?可哀想〜子連れで飛行機とか迷惑〜www」


彼女はそう言いながら、高校時代の友人の投稿に♡を送る。


『赤ちゃんが生まれて半年経ちました。日に日に愛おしさが増します。私の宝物です』


「うわッ!一重遺伝してんじゃん〜、将来可哀想〜」


彼女は、育休中の先輩の赤ちゃんの手を握っている写真に絵文字でリアクションを送った。


「はー・・・」


カトウは、脳裏に浮かんだ“惨めさ”を消すために、ため息をつくと、携帯を充電器に刺した。そして、家庭用ゲーム機のニュイッチを起動した。


「エルサムのイベやろっと」


その独り言は誰もいない部屋に落ちていき、ゲーム音だけが、一人の部屋に響いたのだった。


『ルシィ・・・君は僕の太陽だ、時を巻き戻せるなら、君と先に出会いたかったよ・・・』


「ムフフ〜だよね〜エルサム〜♡」


カトウは、もう何十周もしたゲームのセリフを飽きもせず聞いている。そして、最適な選択肢を迷いもなく選択した。


『ルシィ・・・同じ気持ちで嬉しいよ。ここのブティックで好きなものを選ぶといい!僕から君への愛の印さ』


「きゃ〜イラスト神〜!!!かっこいい〜」


(エルサムだけよ。私を愛してくれるのは)


エルサムは最初は冷たいが、愛したものには甘く、自分が欲しいものを全て与えてくれる。カトウにとって、理想の相手である。


(顔もイケメンだしね)


カトウは、夜を徹してゲームにのめり込んだ。次の日が人生最後の日となるとは知らずに。


ー翌日ー


カトウは寝不足でふらふらしながら、満員電車を降りて、駅から出るために階段を降りた。その時、ヒールが滑ってしまい足を踏み外し、階段から落ちてしまった。


「え!!!」


彼女を受け止めるものは誰もおらず、階段を雪崩落ちる。


ダダダ!!!


凄まじい肉が打ち付けられる音とともに。彼女は回転しながら階段を落ちていく、その回転が力となり、一番下にあった硬い点字ブロックに頭を打ちつけた。


パキャという音と共に、そこで意識が途絶えた。



「う・・・ん・・・?」


カトウが目を覚ますと、あたり一面が白い空間にいた。ゆっくり立ち上がると、特に目立った外傷はないが、ひどく頭が痛い。


彼女は頭を抑えながら、出口を探して歩き出す。


「ここはどこなの・・・?病院にしたって窓ないじゃない・・・」


少し進むと女の子が、ぬいぐるみと遊んでいた。


カトウは出口を訪ねるために少女に近づく、少女は血まみれのカトウに気づくと、怯えた顔をした。


そしてすぐさま駆け寄り、心配そうにカトウを見上げる。


「お姉さん・・・血だらけで痛くない?」


「え?・・・この子は?」


カトウは女の子の心配してくれている声に返答することなく、少女を吟味する。


サラサラの髪、美しい瞳、りんごを思わせる頬と唇。そして現代では考えられないほど、豪華だが古典的なフリルのドレス。


カトウは確信を持って少女に問う。


「あんた名前は?」


「・・・?ルシィと言います」


ルシィは自己紹介をすると、ぎこちながらもスカートの裾を広げ、お辞儀をする。


それを見てカトウはニヤリと笑う。


(ここはルシィの精神世界かなんかよ!転生できた!しかも今なら、この子の体の主導権を私が握れるかも!)


カトウにとって、これは神の導きとしか思えない状況だった。


彼女はこれで、誰も愛してくれない惨めで満たされない生活から解放されると本気で信じたのだ。


カトウはルシィの小さな肩に手を置く。


「その身体、よこしなさい!!!!」


「きゃああああああ!!!!」


怯え叫ぶ少女の首に、容赦なくカトウは手を伸ばした。

...

アサノニア帝国歴1029年 春の月


アーベル領では、春特有の暖かい陽気だ。木々からは花が咲き、ミツバチが蜜を集めるため忙しく飛び回る。


優しい朝日がルシィの顔にかかる。彼女はその眩しさで目を覚ました。


「ルシィ・・・!!」


少ししわがれているが、懐かしい母の声。それに反応し、母の方を見る。顔は疲労感があり、シワが増えているが母の顔であるとルシィは理解できた。


「おかあ・・・さま?」


「あぁ・・・!ルシィ!!ルシィ・・・!!ごめんね!ごめんねぇえ!」


母はそういうと、ルシィを気遣うように優しく抱きしめた。その騒ぎを聞きつけたのか、男性が部屋に入ってきた。男性も少し疲労感があるが、その眼差しは記憶の父と一致する。


「おとう・・・さま?」


ルシィはその男性を父と呼んだ。父からは涙が決壊した川のように流れてきた。母の上から包むように力強く抱きしめた。


「ルシィ!!ルシィ・・・!!会いたかった!!」


重なる二人の暖かさに、帰ってこれたと本能的に感じたルシィは、迷子が両親を見つけたように泣き出した。


「おがあさま!!おどうさま!!ルシィ・・・!こわ“がったの!ほんとうにこわがったの!!!」


数年の時を経て再開した親子は、その後は幸せに暮らす。そしてルシィはヨルヴァスの男爵家と結婚する。それを機に彼女の特技で商売を始める。


しっとりしたクッキーにアイスクリームをサンドしたその名物は、やがて大陸全土の人に愛される名菓となった。


END


後もう一話番外編書いたら、二部公開します、、、!

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