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番外編2 神は人の業を裁くが人の罪を裁くのは王である その2

ー同日の夜ー

ーヨルヴァス国の繁華街ー


その夜、僕の空間転移でヨルヴァス国についた。


会合があった際に訪れ、昼の繁華街を視察していたので、空間転移することができた。


昼間に見た時は、まばらに人がいる普通の飲食店街だと思ったが、夜は姿を変える。


光や雷の魔道具の一種だろうか?色鮮やかに光る看板に、肌の露出が多い女性が窓から客引きしている。


普通なら、昼とは打って変わった雰囲気にドギマギするのだろうが、僕は、エルサム様の今の彼の姿が信じられず、ずっと固まっていた。


今のエルサム様は、中肉中背でだらしない身体。最低限の清潔感があるボサボサの髪の毛。整っていない眉、目なんか腫れていて細いし、肌は荒れている。


「よし。行くか」


そこから出てくるいつもの美声に、僕は我慢できなかった。


「なんで、そんな姿に魔法で変身したんですかぁああ!!!」


僕の叫びは、繁華街のざわめきに消えていった。しかし、目の前のエルサム様にはしっかりと聞こえたみたいで、うるさそうにしている。


「これから尾行をするんだから、目立たないほうがいいだろう。繁華街にいる男性の平均的な姿に変身したまでだ」


「だからってぇ〜だからってぇ〜、、、!」


今までずっと、この世の全ての美を集めた人をずっとそばで見ていた。


そんな僕にとって、ヨルヴァスにいる一般的な男性に変身した、エルサム様の姿への衝撃は思っていたより大きかった。


(僕って、こんなに面食いじゃ、なかったはずだったんだけど)


落ち込みながら、エルサム様の後についていく。ここにいる理由は一つ、帝王様の部下からガーディナー枢機卿の情報を共有されたからだ。


真相を探るため、遥々、ヨルヴァスの繁華街にやってきたのだった。


「というか、そもそも信じて良い情報なんですか、、、?」


僕でもわかる、あの短い時間で文官長に伝わり、ガーディナー枢機卿からの抗議文の速さ。


(帝王様が情報を流したとしか思えない、、、)


前を歩くエルサム様が、繁華街を行く人混みをかき分けていた。


「あのタヌキ親父のことだ。自身の影と情報を貸してやる代わりと言ったところだ」


「代わり、、、ですか?」


(代わりってなんの代わりなんだろう?)


その疑問が視線で伝わったのか、エルサム様は歩みを止めないながらも、振り向いた。


「そのままだったら、息子が蹂躙するだけだから、ハンデをあいつらにやったんだ」


「え?つまり助ける代わりに、僕たちは難易度上げられたってことですか!?」


エルサム様は、短く笑う。まるで、そういう考えもあったのかというように。


「違う。父上なりの愛情だよ。私が“つまらなくないように”バランスを調整してくれただけだ」


振り返りながらいう彼。今は変身魔法で冴えない中年男性になっているのに、その眼差しだけは、元の美しいエルサム様だった。



しばらく歩いていると、娼館にたどり着いた。慣れない場所と空気なので、少し恥ずかしくもある。僕たちが息を潜めて待っていると、黒塗りの馬車が来た。


娼館の前で馬車を止めると、中から人が出てきた。


(ガーディナー枢機卿だ!!!)


僕はあらかじめ、渡されていた魔映写機のシャッターをおす。


(娼館の中に入るところをしっかり取れたぞ!)


達成感で思わず、魔映写機を抱きしめる。エルサム様が頭をポンと撫でた。


「このまま、出てくるまで待つぞ」


(えーーーー)


僕たちは、そのままガーディナー枢機卿が出てくるまで待機した。1時間後、出てきた彼がとった行動は驚くべきものだった。



1時間後、ガーディナー枢機卿が娼館から出てきた。そのまま迎えの馬車に乗る。僕はバレないように、物陰から監視していると、エルサム様の声が上から降ってきた。


「エディ、君の転移は自分だけなのか?他者も転移できるのか?」


「え、、、?試したことないから、わからないです」


僕が不安気にいうと、エルサム様は僕の肩に手を置いた。


「よし、ではやってみてくれ。私が喜んで実験体となろう」


「嫌です」


王子の身に何かあったら、僕も僕の家族も何かしらの罰を受ける可能性があるのに、そんな危険なことできるわけがない。


そのことを伝えると、エルサム様はやけにあっさり引き下がった。


「そうか、わかった。ではガーディナー枢機卿の魔力を覚えたな?空間転移で彼の後を追ってくれ、場所がわかれば、俺の元に戻って伝えて欲しい」


僕は、エルサム様の命令に沿って、ガーディナー枢機卿の後を追うことにした。身体の力を抜き、ガーディナー枢機卿の魔力を辿る。


空間転移を発動したその瞬間、肩に何か触れる感覚がしたが、途中で止めるなんて器用なことができない僕は、後ろを確かめられなかった。


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