おもしれぇ女
エルサム様とアリシア様のお茶会を見守る僕。この時間が、僕は好きなんだ。エルサム様が世界一穏やかだから。
僕は束の間の心の休息を楽しんでいると、僕たち以外誰も入って来ないはずの王室専用サロンの入り口の方からガサガサと音がする。僕たちは、訝しげに音の方を見る。
主人を守るため、エルサム様の方を見るとエルサム様はすでにアリシア様を守るため、アリシア様に魔法結界を貼ってる。個人に貼るにしても、常人なら2-3時間かかるものを最も簡単に、、、。
そうこうしていると、足音が止まったので視線をそこに向ける。
そこには帝国学園の制服を着た女性が立っていた。胸につけている位を示すマークとリボンの色的に、男爵令嬢の1年生だな。
歳にしては幼い印象を与える耳寄り高いツインテールに、勝気な吊り目。この国ではよくある栗色の髪をした女性だった。
ちなみに、一目で位を解るようにしているのは、いずれ社交界に出るためのマナー練習の意味も兼ねている。
というのは建前で、知らずにアリシア様に無礼をはたらかないようにするための、エルサム様が幼等部にお決めになったものである。
全員の視線が招いていない男爵令嬢の1年生に向いていると、彼女はエルサム様をみてニヤッと笑う。
「やったーー!!エルサムみっけ!探したんだから〜♡最初に出会うはずの中庭にはいないしさ〜」
え???は????この男爵令嬢は死にたいのか??エルサム様を呼び捨て??死ぬより辛い目に遭うぞ、、、??
僕がポカンとしていると、男爵令嬢はエルサム様の目の前までツカツカ歩いていった。
エルサム様は氷より冷たい視線を彼女に向けながら、睨みあげる。
「俺は気分が良い。即刻立ち去るなら、爵位剥奪で許してやる。」
その声は聞いたものであるなら、全員震え上がるほどのドスの効いた声であった。でも男爵令嬢は気にしていないようだ。
「やだ〜も〜!そんなに怒らないってば!私はルシィ♡でっす♡よろしくね!エルサム〜♡」
そういうと、彼女はエルサム様に抱きつこうとした。僕は咄嗟に空間転移魔法で、エルサム様を僕の後ろに転移させる。
エルサム様は、トッと華麗に着地した。他人を空間転移させると、転移した人は着地のタイミングがわかんないから、大体尻餅するんだけど、なんで綺麗に着地できるんだこの人。
エルサム様は僕の耳元で話しかける。
「よくやった。先ほどの猿女を止められなかった件は不問にしてやる。」
あぁ〜よかった!!この特技あってよかった!!!!僕が生きていることに感謝していると、ルシィが僕を睨んでくる。
「ちょっと!何すんのよ!!」
ルシィが僕に掴み掛かろうとしてきた時。
「おやめください。ルシィさん!」
月の聖女、、、いやアリシア様が椅子から立ち上がり、止めに入ってくださった。
呼び止めたルシィがアリシア様の方を見る。その顔は、淑女として見るに堪えないすごい顔で、アリシア様を睨んでいるのだった。
アリシア様は臆せず、ルシィに話しかける。
「ルシィさん、ここは王室専用のサロンです。招待されていないものは、入ることは許されません。新入生で迷ってしまったのですね?出口まで案内します。」
さすが、アリシア様。聖女のようだ。アリシア様はルシィが迷ったことにして、この場を収めようとしているのだ。
じゃないと後ろで怪物のような禍々しいオーラを発している悪魔じゃない、、。
エルサム様が何をしでかすかわからない。僕がアリシア様の優しさに感銘を受けていると、ルシィがアリシア様に近づく。
「ハァ!?なんであんたに、、、そっか、あんたがアリシアか、フーン。、、、ま!次のイベントもあるしここは帰るわ。」
公爵家の人間を呼び捨て、しかも婚約者の目の前で言い寄るって、侮辱しているのと同じだ。
公爵家の怒りを買ったら、一族郎党全員路頭に迷うぞ、、、。
僕がルシィのあまりの行動に恐れ慄いているとルシィは踵を返して、出口の方へ向かう。そしてエルサム様の方へ向いて、にぱっと笑う。
「じゃあね♡エルサム〜」
ルシィが王室専用サロンを出て行くと、エルサム様が僕にしか聞こえないドスの聞いた声で言う。
「俺のアリシアに侮辱の限りをあびせおって、、一族諸共晒し首にしてくれる、、、」
僕に言われているわけじゃないのに、寿命が縮んだ気がした。
それを聞いていたのか、長年の付き合いで察したのかアリシア様がエルサム様に「今回はどうか恩赦を」と掛け合っていた。




