転生者カトウさんという人
アサノニア帝国歴1026年冬の月30日目。天気快晴。
僕は、エルサム様の執務室にて、紅茶のおかわりを用意していた。当のエルサム様は、本になったカトウチエミさんの知識を、かれこれ30分ぐらい読んでいる。
エルサム様の紅茶のおかわりを、カップに注いでいると、エルサム様がパタンと閉じた。
「“次”のやつは、もう少し勉強ができたやつが良いな。“投資”や“スマホ”の仕組みを、もう少し詳しく知りたいものだ。」
エルサム様は注がれた紅茶を飲みながら、期待はずれと言わんばかりに、深いため息をついた。僕は思わず、意見を口に出してしまった。
「本当に、ルシィ、、、彼女は“何もなかった”のでしょうか?」
あ、やば、、、と思い、すぐに「なんでもございません!」と言ったが、エルサム様は数秒窓の外を見ると、飲んでいたカップをソーサーにおいた。
「、、、彼女は“海外”が好きだったようだ。」
「え?」
「幼い頃に、異国の食べ物や建物を特集している“テレビ番組”というものを見て、興味を持ったそうだ。将来は“キャビンアテンダント”になりたかったそうだが、経済的な理由と組織に入る倍率、学力的な問題により、夢を絶たれたようだ。」
エルサム様は、ご自身の瞳と同じ空を眺めていた。
「この世界で、あの特技を持っていたのだから、目先の欲望に惑わされなかったら、外交官や貿易商を目指す道があったかもな。」
そうか、どうやって彼女が、この世界に来たかはわからない。でも、どんな環境でも、どうあるかは自分次第だったんだ。
僕は彼女に対し、少し感傷に浸っていたところ、エルサム様がパンっと手を軽く叩く。
「まぁ、過ぎたことは気にしてもしょうがない。彼女の知識で面白そうなことも発見したしな。」
「面白いことって?」
エルサム様は、“彼女”を僕に渡すと、口角を少し上げた。
「この世界を模した遊戯は、あちらの世界では人気だったらしい。2部や3部、派生モノなどあるらしいぞ。そういえば、ガイナスから“異世界から来た”とヨルヴァスで騒いでいる輩がいた。と聞いたしな。」
(ウゲェエエ!!勘弁して〜!)
僕の心とは裏腹に、とても良い天気が恨めしい。
エルサム様は次なる“おもちゃ”が来るまで、愛しのアリシア様と優雅に暮らすのであろう。
長い脚で愛しい人の元ヘ向かうエルサム様に、置いていかれないように、早足で執務室のドアを閉めて、後を追いかけるのだった。
あぁ、今日もきっとご主人様が有能すぎて、やることがないので、僕は日記を書き続けるのだろう。
そう書いて、僕は書いた日記を閉じて、明日に備えて就寝するのだった。
これにて1部は終了です!
番外編と、書きたいものがあるので、まだまだ続きます〜




