交差する思い その2
-同刻-
-裁判所 被告人控え室-
-ルシィ視点-
(どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!!!!こんなことに、、、!!!)
私は頭を思いっきり掻きむしった。この30日間あまりは、エルサムが言う通り、何もできなかった。
いつもは怒ってきても、上目遣いで小首を傾げれば、コロッと許してくれる両親も、ずっと怒りっぱなしで外出や手紙を書くことすら許されなかった。
私の唯一の味方だったクルミとは、ここに来る6日前にあったけど、私の存在なんて知らないといったふうに無関心だった。
最後は事務的に身支度を整えて、別れ際に挨拶もなかった。
(この場所にきてから、何かが変だ)
看守にこの場所から出してもらおうと、上目遣いで小首を傾げても、可哀想なものを見る目を向けられた。
私は、“裁判”の日までここで座って待っているしかできなかった。
カチャン、、、カチャン、、、と金属が擦れる音がする。
看守が来たのだ。
「ルシィ=アーベル。時間だ。出ろ。」
私は言われた通りに、出入り口まで自分の足で向かうと、両手に手枷をつけられ、「ついてこい」と手枷についていた鉄の鎖を引っ張られた。
歩くたびに、肌が鉄に擦れる感覚と鉄の匂いが鼻をついていて不快だ。
しばらく歩くと、ドアがあり、そのドアが開く。
中から入ってくる光が眩しくて、目を細める。目が慣れたころ、しっかりと目を開くと、息を呑む光景があった。
目前には、一面の白。日本でよく見るタイプの法廷だけど、全体的に広い。
床は朱色の絨毯で敷き詰められており、歩く感触が裸足伝いに、高級ホテル並みに良いものだと感じる。
左右には、傍聴席があり、中部から後方部にかけて見知った顔が、並んで座ってこっちを見ている。
(多分、、、助けに来たわけでは、ないんだろうな)
私は、恨みや侮蔑の視線に耐えきれず、景色を朱色にしながら歩いた。
証言台のようなところに着くと、ガチャンッ!と音を立てて、鎖をその台に付けられた。
私を連れてきた看守は、背後にある唯一の通路に2名で塞ぐように立った。
頭の上から、しわがれた声が聞こえる。
「被告人。表を上げよ。」
私は、その声に従い顔をあげる。上を見る余裕がなくって気づかなかったけど、私の視線より上にも人がいた。
多分真ん中が、裁判長で後ろにいるのも関係者なんだろう。その中に一際、この場に浮かないような豪華な席があり、そこには。
「エルサム、、、」
ポツリと声に出してしまった。近くにいた看守に「不敬であるぞ!」と怒られてしまった。
(エルサム、、、黒いスーツ姿もかっこいいな。グッツであったら絶対買ってたよ、、)
(バカでもわかる。今日は、冬の月24日目。最終イベントの日だもん)
私は一つ深呼吸をする。私はこの世界のヒロイン。ルシィに転生した。
(めちゃくちゃ逆境だけど、まだ逆転できるはず、、、!だって私は主人公なんだから!!)
無駄な祈りだとはわかってる。でもそうでも思わないと、取り乱してしまう己の心を励ますために、そう思うしかなかったのだった。
そんな健気な心がこの後、粉々になるとは微塵も思っていないルシィは、この後、膝から崩れ落ちるほどの絶望をエルサムから与えられる。




