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エルサム様の筋書き

アサノニア帝国歴1026年冬の月5日目。天気雨。


外は寒く、息をすると白い靄が共に出る。空気中のチリが僕の吐く息の水蒸気と反応して、一瞬凍る現象には、見ているだけでも視覚的な寒さに拍車をかける。


もっと気温が寒くなると、帝都でも雪が降る頃だ。


しかし、今日は、雨が降っているので、気温がさらに下がっているので、手先が真っ赤になっている。


ここ30日ほどは、すごかった。


後夜祭の日、ルシィは王子に挨拶しようと近寄ったところ、体調不良で、もたれかかってしまった。と言うことにされ、衛兵から解放された。


レイモンド様からの話では、午前と午後で衛生監査の教員がチェックに来たときに、衝撃の真実が発覚した。


午前と午後で衛生面の管理方法には、天と地の差があったそうだ。


例えば、レイモンド様率いる午前班は、一度使った器材は毎回洗い、しっかりと器材を清潔な布巾で拭いて、次の料理に取り掛かっていた。


もちろん、店内に用意した飲食スペースにある机の上の、食べカスの清掃用の布巾とは、きっちり分けて作業していた。


しかも、すぐわかるように、調理器具は青い布。飲食スペースの清掃には、赤い布と分けていた。


しかし、ルシィ率いる午後の班は違った。机についた食べカスを掃除する布巾と、器材を清掃する布巾を同じものにしてしまったのだ。


班にいたメンバーの証言によると、どの布巾を使えばいいかルシィに確認したところ、「これを使って」と指示があったとのことだった。


しかも、衛生管理テストに関しては、ルシィが担当教員に魅了を使い、本来不合格だったものを合格にしていた疑惑が発覚した。


彼女のテスト解答用紙を念のため、採点しなおしたところ、明らかに合格点に達していないことがわかったからだ。


レイモンドたちのクラス事情は、教員方も把握していたため、ルシィ班にいたメンバーのみ、反省文と経営学の実習分の単位剥奪の処分が下された。


そして、魅了の餌食になった教員は、事情聴取の結果、魅了による記憶の混濁が認められたものの、1週間の謹慎処分とされた。


余談だが、後夜祭がおわり、ルシィが解放されるまでの間に、残りのクラスメイトの魅了も、レイモンド様が完全に解除した。


後から分かったことだが、ルシィの大暴走を目の当たりにしたショックで、魅了は解けかっていたらしい。そのおかげで、深く魅了がかかっていたはずなのに、あっさりと解除できた。


そのため、現在学園には、誰もルシィの味方をするものはいなかった。


...


後夜祭の身の程をわきまえない振る舞いに、悪い意味で全校生徒の噂の的になってしまったルシィは、その刺すような視線と好奇の目に晒され続け。


1週間程度で、学園に通ってこなくなったとのことだった。


自業自得とはいえ、なんだか後味が悪いなと思いながら、シトシトと降る雨を窓から眺めていたところ。


天気とは裏腹に、晴れやかな顔をしたエルサム様が部屋に入ってきた。部屋にこいと言ってたのに、いなかった主人の帰りに出迎えようとすると、それを止められた。


「最終イベントをやるぞ」


「はぇ???」


僕は思わず、素っ頓狂な声を出してしまった。


エルサム様が冬の月を待たずに、ルシィに終止符を打ったものだと思ったから、もう飽きたのかと思っていたが、エルサム様の筋書きは違ったようだ。


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