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決戦直前

アサノニア帝国歴1026年秋の月62日目。天気晴れ。


文化祭当日となった。長袖のシャツ一枚で充分になってきて、風が吹くと心地いい、そんな天気だ。


学年のクラスごとに、飲食店や雑貨など思い思いの店を出店している。僕はエルサム様と共に、文化祭の視察を行なっていた。


ちなみにエルサム様のクラスは、特に歴史ある名家揃いなので、古市という名前で、各家で不要なものを持ち寄り、オークション形式で販売している。


マニアが見たら、喉から手が出るほど、欲しいお宝があることだろう。


エルサム様が企画されたので、クラスメイトの面々が役割分担し店を回している。ちなみにエルサム様が出品したのは、王家の首飾りだ。


先代の女王陛下、エルサム様にとってのお祖母様が、趣味の野鳥の巣箱作りの延長で作ったもので、お祖母様にも、出店の許可はいただき済みの者だ。


(確か、エルサム様のお祖父様が趣味で集めた宝石に、お祖母様が特技で、金属を加工し作った代物って聞いたけど、、、。)


出品されるという話が出た段階から、学園の周りで資金繰りに悪戦苦闘している生徒を何名か見た。


僕は落札価格を想像したが、恐ろしくなってやめた。


エルサム様が発案、企画、オークションの流れまで全てお一人で準備されたので、クラスメイトたちは文句も言わず、当日はあくせく働いている。


そのおかげで、エルサム様は貸し切った広場で行われている文化祭を、好きなだけ視察という形で回ることができるのだ。


そんな彼は、さっきから筋の通った鼻で、美しい旋律を奏でながら歩いている。


(機嫌が良さそうだ。)


小さな演奏会を隣で聴いていると、ルシィのクラスが出店しているエリアへやってきた。いきなり、最終決戦が始まる、、、わけではない。


午前中の時間は、レイモンド率いる班が、店番をやっていると聞いている。


遠目から、客への接客などの動きを見ているけど、さすがレイモンド様。綺麗な統率と連携で、クレープを提供している。


心なしか、レイモンドのクラスメイトの表情も、前見た時より、生き生きとしているようだ。


(レイモンド様がうまく立ち回り、自分が関わっている班のメンバーのルシィの魅了を解除できたのかな?)


クラスメイトの彼らが、エルサム様に気づくと道を開けるように左右に分かれ、右手を胸にあて、頭を下げて敬意を表している。


ルシィの支配下にあったときは、エルサム様がそばにいても、ルシィを優先していたため、しなかった行動だ。


僕は、自分の立場を危うくしてしまうほどの、強い魅了を持っているルシィに、改めて恐怖した。


エルサム様は「気にするな」と一言言うと、彼らは一言礼を返し業務に戻っていく。そんな中、レイモンド様がエルサム様に近づいてきた。


「エルサム様。ようこそおいでくださいました。こちらの席へどうぞ。」


「あぁ。」


レイモンド様のエスコートに続き、案内された席に着く、簡単に飲み物を注文すると、レイモンド様は厨房に指示を出すべく戻っていった。


エルサム様が、その背中を見て小声でつぶやく。


「辺境伯子息に、給仕のように振る舞われるのは、悪く無いな。」


辺境伯の地位とは、王族を頂点とすると、上から数えたほうが早いぐらい、地位も権力がある。給仕されることは、あれど、自分がすることはあまりないと言える。


そんな中、レイモンド様は進んで給仕を行っているのだから、職に対する敬意がすごいのだと見て取れる。


(この悪の帝王様は、地位も権力も高い人が、給仕のように振る舞っているのを見て、良からぬ“楽しさ”を覚えなきゃいいけど。)


主人の正体を案じることしかできなかった。そんな、僕の不安を溶かすように、甘い香りの中に香ばしいスパイスを纏わせた、王宮パティシエ直伝の至高のクレープが運ばれてきた。


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