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エルサム様の作戦共有会

アサノニア帝国歴1026年秋の月15日目。この75日を過ごすと冬の月だ。つまりエルサム様のいう、決戦の時は近いということ。


今日もまた、中休みに学園にある王室専用の応接室の一級品の長机に備え付けの、これまた一級品の椅子に本日の主役たちが腰掛けていた。


メンバーは、アサノニア帝国第一王子、エルサム様。エルサム様の婚約者で公爵家令嬢、叔父は帝国宰相のアリシア様、そして辺境伯令息のレイモンド様。


え、、、絵面が眩しすぎる、、、。


僕はお代わりをいつ要求されても良いように、紅茶の準備をしながら立っていた。


エルサム様が、紅茶を飲んでいたカップをソーサーに起いた。


「集まっていただいたのは他でもない。文化祭であの汚女を追い詰める。冬の月の新年の幸福を願う晩餐会にて、あの汚女を倒すために」


エルサム様が、堂々とした態度で議題を上げる。それを聞くと、対照的にアリシア様は憂いた表情をされた。


「やはり、、、止められないところまで来てしまっているのですね。」


アリシア様はエルサム様と長い付き合いなので、こうなることはある程度は、予想されていらしたのだろう。その声音は諦めを含んでいるようだった。


まぁ、この学園を卒業したらすぐ成人となり、家を継ぐか、何かしらの職に着くか、しばらくしたら嫁ぐ歳になる。


この歳で自分で改善する努力を見せなければ、周りが手を差し伸べても意味のないこと、なんなら共倒れになる。


そもそも、アリシア様の役割ではない。将来、帝国の国母となる方だ。その辺の線引きは、きちんとされている。


でもきっと、ルシィがこんなになる前に、アリシア様に助けを求めていたらきっと、手を差し伸べられたでしょう。女神のように、お優しい方だから。


そんな、アリシア様の心中を鑑みていると、エルサム様が話を進める。


「まずは、レイモンド。確認したいんだが、料理の経験は?」


「はい。父と良く狩に行きますので、解体はもちろんのこと。簡単に焼いた程度ですが、料理の真似事の経験もあります。」


レイモンド様の回答に、エルサム様は素晴らしいと呟き、紙束をレイモンド様に渡す。


「レイモンド、君には14日間我が屋敷へ通ってもらい、完璧な“クレープ”を作れるようになってもらいたい。これは我が宮廷パティシエに作らせた詳細なレシピだ。そして、衛生管理講習を受け、必ず合格してくれるかな?」


「はい。かしこまりました。」


レイモンド様はエルサム様の指示に即答し、座ったまま深々と頭を下げ拝命した。


どうやら、あの紙束には、すでにパティシエが試作に試作を重ねた、至高のクレープのレシピが事細かく書かれているのだろう、、、。食べたい、、、。


「レイモンド、まだあるぞ。“クレープ”屋の主導はあくまで、あの汚女にやらせろ。君は補佐に徹してほしい。そして、レイモンド班とあの汚女班に分けて作業させ、その記録をとってくれ。」


レイモンド様は、出陣前の騎士のような面持ちで、うなづく。エルサム様は、木箱を取り出した。


「あと、君に班になったものたちには、この薬を与えてほしい。与え方は任せるが、あの汚女に、気取られないようにしてほしい。」


そういうと、エルサム様は厳重な木箱の中から、小瓶を取り出し、レイモンド様に渡した。どこにでもある小瓶の形をしている。だが、中身の色が毒々しい。


レイモンド様が手に取り、エルサム様へ質問の許可を得て発言した。


「エルサム様、この薬は何のものなのでしょう?」


「これは、“魅了”に犯されたものを正常に戻す薬だ。元々王宮にあったんだが、ようやっと使う時が来た。」


そうか、魅了の特技って悪用したら犯罪し放題だもんね。そうゆう洗脳系特技を無効化する薬が、すでに開発されたっておかしくないもんな。


レイモンド様が、その薬を懐に大切に保管した。それを紅茶を飲みながら、見ていたエルサム様は、紅茶を飲んでいたカップを、ソーサーにカチャと置いた。


その音に全員の視線が集まる。たっぷり視線を集めてから、エルサム様は声高々に宣言する。


「では、これから詳細を説明する。各々抜かりなく実行するように」


エルサム様がこういう時は、“失敗は許さない”という意味を含んでいる。僕は片唾を飲みながら、エルサム様の話に集中した。


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