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第二試合開始

僕とエルサム様はアーベル領領主、アーベル男爵に挨拶するため、彼の屋敷を訪れた。


もう、ついた時からすごかった。アーベル男爵に使える使用人が、馬車から降りたら全員整列し、頭を下げて待っていた。


しかも、外なのに馬車が止まった門から玄関まで伸びる絨毯が敷いてあった。


まぁ、当然の対応っちゃ対応だけど、ちょっとやりすぎって言うか、、。あ、ルシィの件を挽回しようとしているのか。


エルサム様は涼しい顔で、絨毯の上を歩いていく。僕もその後に続く。


玄関に到着すると、使用人がタイミングよくドアを開けてくれてた。


その先にはアーベル男爵と、その奥様である婦人が不安そうな顔をしながら、もうヘコヘコしていた。


「よ、、ようこそ、アーベル領へ。領民共々歓迎させていただきます。」


「あぁ、早速だが、領地経営についての報告と、視察先のすり合わせをしたい。執務室へ案内できるか?」


エルサム様は最低限の挨拶を返しながら、アーベル男爵へ表情を変えずに伝えた。


なんか上からドンドンってすっごい音がするんですけど、、、。僕が2階を気にしていると、それに気づいたアーベル婦人が、慌てた声音を上げる。


「む、、、娘は流行り病でッ!少し寝苦しいのか、寝相が激しくて、、、。ご迷惑をおかけしますが、お気になさらず、、、!」


いや、その言い訳は無理がありませんか?そう思ったが、まぁ苦し紛れなんだろうし、しょうがないか。その言い訳に乗っておこう。


僕とエルサム様はアーベル男爵に案内されるまま、1階の執務室へ向かった。


報告と視察先のすり合わせは滞りなく終わり、そろそろ帰ろうとしていた頃。


ドンドン音がしていたが、バンッ!!!と強い音がした。うわ、嫌な予感。


目の前にいるアーベル男爵と婦人の顔色が一気に白くなる。それとは裏腹に、毒見済みの紅茶を優雅に飲むエルサム様。


まぁ毒見しなくても、エルサム様は鑑定の特技があるから、見れば安全かどうかわかるらしいんですけど、他者に特技がバレるのを防ぐために、あえて僕に毒見させてるそう。


まぁ、毒味する僕はわかんないから毎回ドキドキなんですけどね。命懸けで紅茶の毒見をしたのに、涼しい顔で僕が口つけたところを拭いてから飲むのは地味に傷つく、、、。


エルサム様に恨めしい目線を送っていると、さっきのドンドン音とは裏腹に静かになった。


そして、ゆっくり執務室のドアが開いた。僕は1人しかいない訪問者の姿を見て、開いた口が塞がらなかった。


ルシィの格好は、なんだ?なんて言ったらいいんだ?


白いバスローブだけを着ているけど、肩をはだけさせて、もう胸の谷間が見えている。足も出してなんて言うか、一言で言うと売婦がしそうだけど、売婦の方がもう少し品があると思う格好をしていた。


これも異世界では、普通の格好なのかな?


その売婦、、、じゃなかった、ルシィがエルサム様を見つめている。まるで10年会えなかった恋人のように。


「あぁ〜♡エルサム様〜♡ルシィい、風引いちゃっててぇ〜体が熱いんです〜♡」


そう言いながら、エルサム様へ近づこうとするので、僕は主人を守るため主人を背に向け、中腰になった。


その時、アーベル男爵が怒鳴り声を上げる。


「ルシィ!!!令嬢ともあろうものがなんという格好だ!!即刻部屋に戻りなさい!!」


「うっさいわね!!私は今!結婚がかかってんの!!黙ってなさいよね!!」


エルサム様が目の前にいるのに、父親に暴言を吐くルシィに僕は若干引いていた。


アーベル婦人はエルサム様の元へ両膝を突き、両手を体の前で組み、神への懺悔のようにしていた。


「エルサム殿下!申し訳ございません!娘は流行病の上、意識が朦朧としており!決して殿下のお気を害そうとしているのではございません!」


アーベル婦人は涙を浮かべながら、娘を庇っている。こんな娘でもお腹を痛めて産んだ子だもんな、、、。


そう思ってみていると、エルサム様はこの混沌とした状況をものともせず、冷静に飲んでいた紅茶をソーサーの上に置いた。


カチャン。


小さな音だが、皆がその音に集中した。


「ルシィ嬢。アーベル婦人から流行病と聞いた。挨拶は気にしなくて良い。部屋に戻り安静にすると良い。お大事に。」


その言葉と共に、ルシィにニコっと笑った。うわ、他所向きの貼り付けた笑顔だ。


アリシア様に向ける甘いものとは違う。でも、ルシィには効いたのか、目をハートにしながら「はい、、、♡」と言って、ふらふらと部屋に戻った。


バタンッとドアが閉まると、再び紅茶を口にしながら言った。


「アーベル男爵、この紅茶に免じて許そう。馳走だった。」


その言葉に、アーベル男爵と婦人は腰を折り、深々と頭を下げた。


帰りの馬車で僕はエルサム様に発言の許可を取り、疑問に思ったことを口にする。


「エルサム様。どうして、今回の件を不問にされたのですか?」


いつもだったら、処刑だと言っても良いぐらい。今回のは下品極まりなかったと思いますと言うのは飲み込んだ。


エルサム様は、馬車の窓から見える景色を見ながら話す。


「言っただろう。俺は彼女の矜持に乗っ取り壊すと、でも失敗続きでは萎えてしまうだろう?だから、成功体験を与えて、やる気を出してもらい、異界から来たものの真骨頂を出してもらわなければ、興に乗った俺がつまらないだろう?」


う、、、うわ、、、、。と言うことは、相手が途中で萎えないように、あえてやったってこと?完膚なきまでに叩き潰すために、全力を出させる燃料に自らなったってこと??


僕が言葉をなくしていると、エルサム様の芸術品のような顔が微笑む。


「全力の敵を叩き潰すのが、楽しいと言うもの、、、だろう?」


僕はその問いに、引き笑いで回答するしかなかった。このエルサム様の“楽しい”と言う今の言葉に、一生同意できないなと思いながら。


あ、ちなみに、アーベル領での“イベント”もちゃんとあって、アーベル領へ視察に来たエルサム様と2泊3日のデートをすると言うもの。


まぁ、実際の王族が視察に着て、それをほっぽり出して婚約者でもない女とデートなんて、税金の無駄以外の何ものでもないんですけどね。


そのあとは、アーベル男爵達がうまくやったのか、エルサム様のお言葉で満足したのか、ルシィの襲来はなかったので、2泊3日の視察は滞りなく終わった。


僕は帝国へ帰ると、思いもよらない嬉しいことが待っているとは、梅雨しれず、帰りの馬車でぐったりとしていた。


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