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真夏はスリルが欲しくなる?

「アーベル領へ行こう」


アサノニア帝国歴1026年真夏の月18日目。天気晴れ。


外出するのが億劫になる程、日差しが照り付けて、気温が暑い頃。


エルサム様が夏に似合う爽やかな笑みで、そう言った。僕は古い記憶を辿りながら呟く。


「アーベル領って確か、、、?」


「あの汚女の領地だ。帰省しているのも確認済みだ。」


「え!?なぜ??」


なぜ、エルサム様が、わざわざあのルシィに会う確率の高い場所へ赴くのか、納得できなかった。エルサム様は余裕の表情を浮かべる。


「俺はあの汚女の矜持に乗っ取り、潰すことを目的している。このまま何も起きず、勝手に自滅する様を見てもいいが、それではつまらない。だから“イベント”を利用してやろうと思ってね。」


なんと邪悪な、、、。この人、暇だから相手を刺激しに行こうと思っているのだ。


「もちろん。アリシアは連れて行かない。行くのは、俺とエディ、君だけだ。」


えぇ〜!!ヤダァ〜!!その僕の心の叫びは無視され、エルサム様とルシィがいるアーベル領へ向かうことになった。



ーアーベル領ー


アサノニア帝国歴1026年真夏の月27日目。天気曇り。


アーベル領は、アサノニア帝国の北側に位置し、水と森の資源が豊富なのどかな場所だ。冬は極寒だが、夏は涼しいのも特徴の一つだ。


僕とエルサム様は、アーベル領へ馬車で2日かけて王宮の別荘までやってきた。天気も僕の心を表しているように空を灰色に染め上げている。


エルサム様は、何も気にせず降り立つと周りを見渡す。


「景色“だけ”は最高だな。全て片付けたらアリシアとまた来よう。」


、、、楽しそうでなによりです。僕はエルサム様の声を聞きながら、エルサム様の荷物を、どこに置いて欲しいのかを別荘にいる人達に指示した。


別荘の管理人兼執事長が、エルサム様に歓迎の挨拶を述べていた。エルサム様は片方の手のひらを執事長に向けて、軽い挨拶をする。


そのまま屋敷の中へ案内されていた。


僕は荷物の整理をしてから、エルサム様がいるはずの執務室へ向かう。


「ご苦労だった。」


中に入ると、エルサム様から労いの言葉をいただいたので、一言礼を述べてから報告する。


「荷物の運び出しと、エルサム様の自室への運搬、荷解きは完了しております。この後の予定を整理されますか?」


僕はエルサム様の今日の予定をメモした手帳を広げながら、確認をする。


「いや、不要だ。頭の中に入っている。」


(ですよね〜。)


そう思いながら、いつも活躍できない手帳をしまう。この後、馬車の準備ができたら、アーベル領の領主に挨拶をしに行く。


、、、けど、、、。僕が不安そうにエルサム様を見つめると、その視線にエルサム様が気づかれた。


「なんだ?不安そうだな。」


「だって、アーベル領に領主に会いに行くってことは、その、、ルシィ嬢と会うってことじゃないですか?」


「あぁ、、その点は問題ない。前回どうやらあの汚女は警備兵の世話になったそうでな。アーベル男爵は、これ以上外聞を汚さないように娘を屋敷にて軟禁しているようだ。」


わざわざ俺に、報告の手紙を送ってきたとエルサム様が付け加えた。確かに、保釈されてますけど、前科持ちになってますもんね。


そのことをアーベル男爵がなんも対策をしないってエルサム様に思われたら、後々マズイから先に報告って形で手紙を送られたのか、、。


だから、エルサム様が会いに行く時は、流石に会わないだろうと、、。


僕が納得していると、その様子を察せられたのか、エルサム様が歩き出す。


「さぁ、行こうか。」


あぁ、悪の帝王様は楽しそうに笑みを浮かべてる、、、。僕は何も繋がっていないけど、引きづられるように着いて行った。

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