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僕のご主人様

本作は、私なりの“ザマァ”を書いた物語です。転生モノですが、転生者が主人公ではありません。


転生先の帝国の王子を主人公に、その執事の視点を通して「異物」としての転生者と、その末路を描いています。


おそらく好みは分かれると思いますが、楽しく書けた私の世界を、楽しんでいただけたら嬉しいです。

アサノニア帝国歴1026年冬の月24日目。天気曇り。


僕は自室で趣味の日記を書くために、椅子に腰掛け、今日あった出来事を日記に書いていた。


僕は、さっきまで裁判所にいた。神話の時代からあったとされるこの白い建物は、補強工事が行われ、外観は古いままだが、内装は現代風に改装されている。


そこで、とある人の裁判が行われていた。


僕は一階にある証言台の上、二階席で主人の後ろからことの顛末を見守っていた。


「判決を言い渡す。ルシィ=アーベル、被告は」


裁判長が、長々と判決内容を彼女に伝えている。しかし、彼女がただの犯罪者だったから判決ではない。“彼女の正体と目的”から、起因した末路である。


証言台に立っている彼女の後ろの傍聴席に視線を移す。


判決を聞き、喜び抱き合う彼女の両親。冷たい視線を送るクラスメイト。そして、彼女のメイドの姿。


(異様だな、、、)


僕はこの一見すると不可思議な状況に、難色を示していた。


ただひとり、僕の目の前で、足を組んで座っているご主人様は、こうなることは当然だといわんばかりに、彼女を見下ろしていた。


勝利に少し浸っているのか、小さく口角を上げながら。


(おー怖)


僕は主人のその様子を見て、底知れなさに恐怖した。春の月に、主人を怒らせることをしなければ、きっと彼女は幸せに暮らせていただろう。


(まぁ、彼女の“正体と目的”、、、この世界を遊戯だと思い込んだ振る舞いを考えたら、無理な話か)


僕は彼女が、勘違いしていた。アサノニア帝国の歴史を確認するべく、歴史書を開いた。



アサノニア帝国歴526年今から500年前の話。アサノニア帝国のすぐ隣の国ヨルヴァスは、瘴気が漂い、空気が汚れていた。


そのため、“人間”は近づくことさえできなかった。しかし、そんな土地を開拓して住み、長い年月を経て、その環境に適応した“人間”や動物がいる。その者らをアサノニア帝国の人は、“魔族”や“魔物”と差別し呼んでいた。


初めは違いの文化や価値観の違いから、戦争が絶えなかったが、第14代皇帝エルク=レ=アサノニアが度重なる対話から友好関係を築き、ついに友好条約を締結した。


それ以降、500年に渡り、友好関係を保ち、現在は文化交流や特産品の貿易などアサノニア帝国の生活にとって、欠かせないパートナーとなった。


その後、隣国ヨルヴァスの血がアサノニア帝国の王族や国民と混ざると、魔法とは別の“特技”と呼ばれる異能を手にするようになっていった。


ーアサノニア帝国歴史書第1節より抜粋ー


(やっぱりそうだよね、、、?彼女が言ってた歴史とは食い違うところがある)


僕は、ご主人様と彼女が出会ってから、今までの出来事を振り返るために、日記のページを遡った。



ー帝国アサノニアー

ー帝国立アサノニア学園内王太子特別室ー


アサノニア帝国歴1026年春の月21日。天気晴れ。


アサノニア学園へ新しい生徒たちが入学してきて、早数週間がたった。


僕の主人、アサノニア帝国第一王子エルサム王太子は、王太子特別室に用意された、生地も座り心地も一級品の椅子に腰掛けていた。


絹のような金髪を風に靡かせ、晴天を思わせる青い目を伏せがちにしながら、帝国文官から半ば強引に引き取った仕事の書類に目を通している。


確か交通路の整備計画資料だったような、、。文官の友人からは、交通系の仕事は速くて2-3年かかる一大事業で、負担はでかいが文官でも優秀なやつしかできないと言ってたな。


エルサム様は、二、三事さらさらと記入すると、演奏会で聴く重低音のバイオリンのような美しい声で私を呼んだ。


「エディ、この書類をあの文官まで持っていってくれるかな?」


僕は2つ返事で受け取り、王宮に帰った時に渡そうと、その書類を大切にしまった。そうすると、エルサム様は「違う違う」と私に声をかける。


「エディ、君の特技はなんだ?」


「...はい。空間転移です。」


僕が素直に答えると、大天使がここに降臨したのか?という笑顔を私に向ける。


「そうだな。だからお前は俺の執事になれたんだ。だったら、俺の望みがわかるだろう?今すぐ、あの仕事がカタツムリより遅く、頭が洞窟より空っぽの文官にそれを渡せ。」


―そう。我が主人、エルサム様は容姿端麗、頭脳明晰、武力にも優れたアサノニア帝国第一王子だ。


何にでも秀でているエルサム様だが、神は、この方へ“道徳心”というものだけは与えなかったらしい。

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