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メリー・クリスマス ミクス・マーダー  作者: 臣 桜


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3/10

二人のクリスマスパーティー

 でも悠衣は『基本的に無害だから』と言って、まったく気にしていないので、私もなるべく動じないように努めていた。


 悠衣は子供の頃から幽霊が〝視える〟らしく、一緒にデートしていると、誰もいないほうを見ている事もあった。


 私は〝そういう世界〟があると知っていても基本的に霊感ゼロなので、余計に悠衣を特別視していた。


 彼女は文才に恵まれているし、霊感まである、類い希な人だ。


 けれど困ったところもある。


 悠衣と小旅行する際、彼女は自殺の名所とか、廃墟とか、幽霊のいそうな所ばかり行きたがる。


 彼女の事は尊敬しているけれど、その趣味については辟易としていた。


「ホラー映画でも見るか」


 悠衣はボンネットを取り、ワンピースのファスナーを下げて下着姿になる。


 私がいる事もまったく気にせず、パニエやタイツを脱いだあと、適当に放ってルームウエアに着替える。


「ちゃんとハンガーに掛けないと」


「あとでねー」


 困った事に、悠衣は家に帰るとまったくのオフモードになってしまう。


 私はいつものように悠衣が脱いだ服を拾い、ハンガーに掛け、洗濯物は洗面所に持って行った。


「私も脱ごうかな」


「だめー。夏樹はそのままでいて。せっかく可愛くしてるんだから」


 髪をユニコーンカラーに染めた悠衣はそう言うと、私の金髪ウィッグをポンポンと手で弄ぶ。


「今日、夏樹はもてなされる側だからね。プレゼントにアドベントカレンダーを用意したから、震えて待ってな!」


「マジ!? アドベントカレンダーくれるの!?」


 デパコスのクリスマスコフレ商戦は、毎年秋頃から始まるけれど、デパコスの現品やミニサイズがふんだんに入ったアドベントカレンダーは、万単位いって当たり前の金額になる。


 それをポンとプレゼントしてくれるのだから、やっぱり悠衣は凄い。


「とっておきだから、楽しみにしててね~!」


 悠衣はそう言ってキッチンに向かい、クリスマス時期に出る子供用のシャンパンもどきを冷蔵庫から出す。


「じゃーん! 懐かしいでしょ。私も子供の頃飲んでたんだ。それにほら!」


 もう片方の手にあるのは、サンタクロースのブーツにお菓子が入った詰め合わせだ。


「懐かしい~! 何? 今日は童心に返るスタイル?」


「そうそう。古き良き〝家族〟のクリスマスを再現しようと思って」


 悠衣は大きなソファにポンと座ると、リモコンを操作して配信映画のメニューから、ホラー映画を吟味していく。


「ホラー映画って、殺人鬼がパリピを()ってくの多いじゃん。ああいうのスカッとしない?」


「まー……、そうだね」


 私は本当はホラー映画が得意ではないけど、悠衣が好んでいるので、付き合い程度に見ている。


 けれど、フィクションであろうが人が死ぬシーンを見て「いい」とは感じられなかった。


 そのあと、私たちはチキンやコンビニで買ったサラダ、生ハム、チーズを食べながら、部屋を暗くしてスラッシャー映画を見る。


 正直、作り物と分かっていても、大画面の中で阿鼻叫喚の地獄絵図が広がり、肉片やら目玉、内臓が出ている映像を見ながら食事をするのはつらい。


 私は食欲が湧かないながらもチキンを食べ、指についた油をペーパーで拭う。


 自分の手を見ると、コンプレックスがあるので溜め息が漏れてしまう。


 悠衣は女の子らしい小さな手をしているのに、私は骨格ナチュラルだから、手が大きくて骨張っている。


 身長がヒョロッと高くて悠衣には『モデル体型』と言われるけれど、もっと女性らしい体つきに生まれたかった。


 十九時ぐらいから始まった映画祭りは、三本連続スラッシャー映画を流し、深夜に入って一旦終わろうとしていた。


 雰囲気を盛り上げるためか、テーブルの上にはキャンドルが置いてあったけれど、かなり短くなっている。


「今ってもう、性の六時間始まってね?」


 悠衣がネットスラングを口にし、私は「ぶふっ」と噴き出す。


「私も本当は、クリスマスに性の六時間を過ごす生き方をしたかったなぁ」


 やにわに悠衣がそんな事を言い、私はドキッと胸を高鳴らせる。


 私たちは女同士だ。


 そういう事をできない訳じゃないけど、男女ではない。


 気まずく思っている私を無視し、悠衣は続ける。


「ホラ、私って家庭環境が終わってるじゃん。だからまともに男と付き合いたくても、将来性がなくて無理なんだよね」


 さっき悠衣がパンケーキを食べながら歌っていたのは、でたらめではない。


 死んではいないけれど、ご両親は不仲で、お父さんは浮気相手と暮らし、お母さんは別の相手と過ごしているそうだ。


 お兄さんとは疎遠で、お姉さんは地下アイドルをしているらしく、多忙だから会えないとか。


 いつか悠衣は『いいと思った男がいても、私の家庭環境を知ったらロクな女じゃないと思うに決まってる』と零していた。


『私がいるよ』


 そう言っても、悠衣は曖昧に笑って何も言わなかった。


 悠衣はいつもこういう事を言う。


 私と恋人同士のはずなのに、本当は男を求めているような素振りを見せたり、テレビに出ている俳優を見て『めっちゃ格好良くない!?』とテンションを上げる。


 普通、恋人が隣にいるなら、芸能人が相手でもそういう事は言わないのがマナーだと思うのに。


 悠衣は電子煙草をふかし、テレビ台からケースに入ったDVDを二枚出した。


「裏ビデオ見せてあげる」

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