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放課後

作者: 雨とともに

六限目、国語の授業だ。

黒板にチョークで書く音が、

心地良い。

「実はね、この学校の都市伝説があって」

「かくれんぼで・・・見つけら・・・」

先生の声もどこか遠くなっていく。

駄目だ、耐えられない。

少しだけだからと身体を委ねる。


「咲人、起きろ」

後ろから声がかかる。

少し、揺れている気がする。

ふわふわしながら時計を見ると、もう放課後。

少しのつもりが寝過ぎたようだ。

教室の窓には茜色が差し込んで、みんな帰り支度をしている。


「咲人、先行ってるからな」

修真の声が教室の外から聞こえた。

後ろの席の親友だ。

さっきまで後ろの席にいたはずなのに、

もう教室出てるなんて全くせっかちだ。


「わかった。すぐ行く」

と声を掛け、

帰り支度をする。

立った瞬間、少し眩暈がする。

さっきまで寝てたからそのせいかと思い、肩に鞄を掛け修真を追う。


下駄箱に着くが、修真の姿はない。

下の木の板がギシ、と鳴る。

「あいつ、どこ行ったんだ?」

下駄箱を見ると、まだ靴が置いてあった。

こういう時は大体靴を履いて玄関で待ってるのに。


探しにいこうとした瞬間

不意に肩に手が置かれる。

そのまま勢いよく振り返ると

クラスメイトが立っていた。

「あ、ごめん。修真くんなら先生に呼ばれたから職員室に行ったよ」

急で心臓が跳ねた気がする。

修真から伝言を頼まれていたらしい。

「ありがとう」

と伝え、職員室に向かう。

職員室は西棟だ。

2階の渡り廊下を通っていかないといけない。

面倒だなと思いつつ、階段を登る。

そういえばさっきのあいつ、足音聞こえなかったな。

今日は何だか静かだ。

ここに来るまでに誰ともすれ違っていない。

部活の声も聞こえない。

疑問に思いつつも渡り廊下に着いた。


外は茜色から深い青に変わりつつある。

渡り廊下を進み始める。

俺の足音だけが響いている。

静けさがさっきよりも重い。

青も心なしか更に深くなった。

そんなことを思ってると、背筋の毛が逆立つ感覚に襲われる。

今、後ろを振り向きたくない。

でも脳が確かめろと言わんばかりに指示を出してくる。

息をふぅ、と吐く。

そして勢いよく振り向く。

何もない。

そしてもう一度気合いを入れる。

勢いよく前を向く。

何もない。


良かったと一安心だ。

呼吸の仕方を思い出す。

もうすぐ職員室だと

一歩踏み出した瞬間

肩に手が置かれる。


嘘だろ、と思い肩を見る。

青白く長い指。

長く伸びた爪。

そして耳元で

——「ケラ」


声は出なかった。

正確には喉が鳴った。

ただ全力で走る。

何も見なかった。

何も聞こえなかった。

でも全力で逃げる。

渡り廊下を抜け、職員室にたどり着きドアを開ける。

入った瞬間、

ドン、と何かにぶつかり尻餅をつく。

「いたっ」

人と当たったみたいだ。

相手は両手を地面に着いていた。

よく見た後ろ姿だ。

「良かった、修真。大丈夫か?」


這いつくばりながら横にいく。


「大丈夫だよ、ありがとう」


修真がゆっくりとこっちを向く。


あるはずの目がなく、口は三日月上に歪んでいる。

顔に伸びてくる青白い手。

そして耳元で。

「——けた」と笑い声。


「うわああああああああああ」

ガタンと、音を鳴らしながら立ち上がる。

焦点が合わない。

息も上手くできない。

力が抜けて机に突っ伏す。

すると後ろから声がかかる。


「咲人、大丈夫か?」


落ち着くまで背中を撫でてくれる。

優しいやつだ。

手は少し冷たいけど、

火照った身体に心地良い。


「ありがとう」


「いいって、親友だろ」


チラッと見ると茜色が窓から差し込んでいる。

どうやら放課後みたいだ。

さっきのは夢か、良かった。

そう思うと落ち着いてきた。


「助かった、ありがとう。修真」


ゆっくり振り返って修真を見た。


「みつ、けた」


そこで気を失った。

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