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あかいいと
運命の赤い糸があるなら、今すぐに糸を解いて私とあなたを繋ぎ直す。
「私たち結婚することになったの」
親友の茜と悟が、笑顔で私に報告する。
昼下がりのカフェ。久しぶりに三人で会いたいと、連絡してきたのは悟からだった。
ランチを終えて、一息ついた頃に二人は意を結したように、口を開いた。青天の霹靂だった。
おめでとう。渇いた喉から搾り出した声は二人に届いていただろうか。
目の前でうつくしく笑う茜が心底憎い。親友のふたりは私を差し置いてめでたく結ばれた。
一番に香織に報告したくて、と茜と悟は目配せをして笑い合う。
茜と悟そして私。私たちは幼稚園からずっと一緒の幼馴染だ。
視線を、一瞬、悟へと投げる。悟と私の視線が交じり合う。
悟は、まるで勝ち誇ったように微笑んだ。
私は、ありったけの殺意を込めて悟を睨む。
「香織もいい人ができたら教えてね!応援するから」
ああ、あなたの無邪気な笑顔が心底、憎い。
初めから一方通行の赤い糸。私の糸の先は、茜じゃなかった。