表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

うつくしい標本

「先生はなんで理科の先生になったの?」

放課後。生物部に所属している生徒がふと呟いた。顧問兼、理科の教諭である湯谷は窓の外を眺めつつ、そうだなあと差し込む夕日に目を細めた。

思えば、あの日も今日みたいな燃えるような夕刻だった。

珍しく、体を拭いて欲しいと彼女は言ったのだ。どれだけ辛い療養中でも頼らなかった彼女の願い。

肉は削げ落ちて、骨の上に皮が載っているだけの薄い体を濡らしたガーゼで拭いたときを思い出す。背骨が浮き出ても、彼女の背はとても美しかった。

『最後のお願いきいてくれる?』

久方ぶりに笑った彼女の笑顔が脳裏に浮かぶ。きっとこの先も、誰にも言うことのない約束だ。

湯谷は夕日に照らされた、人体模型のガラスケースを指先でなぞった。

真白の標本はまるでほんとうに存在していたかのような生々しさと美しさを放っている。

「好きなひとの側にいるためかな」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ