第三話 クラス
人は何で生きているのだろう?
いや、なんでこの世界というものがあって、生物が生きているのだろう?
『さて、力も望みも叶えたおれを失望させるなよ』
悪魔はこういって去っていった。
俺を見据える碧眼が、俺の全てを見透かしてるようで思うように動かなかった。
人には――、生物には寿命がある。それはその名前にあるように生きてる物であるからである。
生物が生きているのには時間という永遠の刻を刻んでいる中に、有限の生命があるからであって、『時間には限りがある』『時間がない』この言葉のように自身の生命を無自覚ながら感じ取っているのだろう。
――つまり何が言いたいのかというと。
――唯単に俺の時間は有限であって、時間がないということであった。
☆ ☆ ☆
気がついたら、見知らぬ部屋にいた。
この広々とした部屋に多くの書物があり、まるで学校みたいな……学校?
「ハルキ、大丈夫?」
そう声をかけてきた彼女、顔が若干幼さを残すながらもだれもが美少女というような女の子。凛とした声が耳に響く。そんな彼女に自分が大丈夫だと伝えると、若干心配そうな表情ながらも「よかった」というこえが小声ながらも耳に届いた。
「ハルキさん、早速ですが、カードを見せてもらえないでしょうか?」
そう声を出したのは一見ふくよかな女性。一瞬、何のことだか分からなかったが自分が異世界に来てたことを再認識する。カードといわれて辺りを探してみるがいつの間にか手に持っていたらしい。
そのカードを見てみる。
名前:ハルキ・イチハラ
魔力適正:A 身体能力:EX《測定不能よってEXと記す》
武器:剣
見なかったことにしよう、なにか異世界にきてしまって今更疲れがでたらしい。そのままじゃ埒が明かないのでそのまま学院長に渡すことにした。
学院長はそのままカードを受け取ると目線を下ろす。リリアも気になるのか、学院長の隣移動して俺のカードを覗き見しようとしている。……やめてくれ。
『…………………』
あぁ、今日は空が綺麗だ。
こんな世界に着たけれど空だけは変わらない。さて、こんないい天気だ、外で太陽にあびてこよう。
「ハルキ、ちょっと話そうか?」
めんどうなことで巻き込まれたくないので即刻立ち去ろうと試みてみたが、あえなく失敗。リリアがものすごい笑顔でいるようだが若干口がひきつってる。――やばい、これは経験からいうと相当怒っている。
拳か脚一発でも来るかと思ったら、流石にそこまで理不尽でもなく。リリアは息を深くはいた。
「ねぇ、学院長先生。ハルキのこのEXってみたときもないんですが。学院長先生ならなにかしってますか?」
「私も学院長に就任してから長年生きてきましたけど、聴いたときもありませんね……」
まあ、気にしないようにしよう。
二人がそれからため息大会をしてたが、とりあえず逃避することにした。
あの後、属性の剣というのは、宝石が剣になるということらしい。リリアは杖といっていたし、なんとなく納得がいったし、聞いてみればその人にあった武器が適用されるとか何とか。武器を出すには、念じればでてくるらしいからとんだファンタジーだなとか思わなくもないこともない。
まぁ要するに慣れってことですね、わかります。
一応、リリアの推薦ってことと魔力適正と身体能力がよかったこともあり、Aクラスに入ることになるらしい。まぁつまりリリアと同じってことか。
ちなみにリリアはまだ、学院長室。俺のことで、色々と学院長と話しがあるとか何とか。
「あー急に決まったことだが、本日転入生がこのクラスに入ります。急なことだが、どうやらリリアさんの推薦だとかなんとか」
Aクラスのドアの前で担任の先生からいわれたとおりに廊下で待っていたが、リリアの紹介ということでクラスに驚きと期待が生まれたのは廊下にいた俺でも充分伝わった。『あのリリアさんの推薦ってどんな方かな?』とか『あー、すっごい楽しみ』とか期待に満ち溢れた声が聞こえるような気がするが考えたら負けだ。
「まあ、説明するまえに入ってもらったほうが早いか。ハルキ君、入ってきてくれ」
緊張するけど、考えてはいられない。
先生のその声に合わせてドアを開けた途端、騒がしかったクラスが沈黙に変わる。……沈黙が痛い。
「ハルキ・イチハラです、よろしくお願いします」
そういって軽く頭を下げると、所々から「よろしくー」とか「リリアさんとどういう関係なの?」とか聞かれたりとかしたが、特に問題もなく拍手されて迎えられた。
その後、先生に言われたとおりに至急用意された空いている席に座るよういわれた。
窓側に近い後ろ側の席。
その席の隣にもひとつ空席がある、おそらくリリアのだろう。
「…………」
もう反対側席には、金髪の小年が無言で此方を見ていたので、よろしくといって席に着く。返事は返してもらえなかったが、初めてのうちはこういうこともあるかなっと自分で納得することにした。
こうして俺はAクラスに無事に仲間入りすることができた。これからどうなるか楽しみで胸を膨らませ……。しかし、このとき俺は、隣で小年がずっと俺をみていることに気づきもしなかったのはそのためであったのかもしれない。