第0話 【僕のなりたいもの】
「ピッピッピピー!」
ここで試合終了の笛です。
小学生、関東大会準決勝終了です。決勝進出は、松蔭小学校。全国大会の切符を手にしたのは、松蔭小学校。
ぼくらは、負けた。関東大会まで行った。僕がミスをしなければ勝つことができた試合だ。チームメイトの全員が泣き崩れている。僕が原因だ。僕のせいだ。
「くやしい、くやしい、くやしい。」
唇を噛み締めながら、ピッチに崩れる。
僕は、このチームの守護神だった。僕は、この試合以外無失点だ。負けの原因は僕だ。
僕が、ロスタイムのコーナーキックで上がらなければカウンターを喰らわずに、1−1で延長戦まで行けた。ここまで、大事な場面で上がって点は取った。しかし、それは、僕でなくても点になっていたのかもしれない。コーチに背中を叩かれて、みんなが立った。みんな、泣いている。
「お前ら、よくがんばった。コーチは、お前らとここまでこれて本当に嬉しい。」
コーチの目にも涙が見えた。本当は、とてもくやしいはずである。だけど、それを隠している。
「お前らは、今年で小学校卒業だ。来年からは、中学生だ。大人に近づく。全員の夢に近づいていく。サッカーを続けて夢を追うもの、サッカーからは、離れて他のことをするのもいるかも知れない。だけど、お前らの、このチームでの過ごした時間は、どこまでもお前たちの背中を押してくれる。この悔しさを忘れるな!」
「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」
チーム全員が返事をした。保護者からは、拍手が届いた。
そして、みんなが帰路につく。僕は、帰り道も常に泣いていた。
時は流れ、卒業式。小学校最後のサッカーをチームメイトみんなでやった。幸いなことにチームメイトは、みんな同じ中学に進学することが決まっている。
「みんなで、中学でもサッカーしような!」
みんなが頷いた。
これは、僕、幸本陽生の最強のゴールキーパーになるための話。