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四 初天神 他

お正月には 見習奉公に出ていた兄も帰って来て 家族で新年を迎えた

初日の出を拝みながら神様と ご先祖様と おばあちゃん達に感謝した


生まれて初めて初天神のお参りにも行った。

人込みの中を歩く事を心配されたけれど 出店が沢山でていて楽しかった

帰りに おじいちゃんの所に行く途中 八五郎さんと金ちゃんに会った 

二人でこれから初天神へ行くと言っていたのに 私がおじいちゃんの所に行くと言ったら

金ちゃんの目がきらりと光った。 


「あたい おマツちゃんと一緒に大家さんの所へ行く」

「おう 頼むな おマツちゃん

 こいつをつれていくと あれ買え これ買えでお参りどころじゃなくなっちまうんだよ おマツちゃんの分までお参りしてくるからな」


 私のお参りはすんでいるんだけれど 

まあ いいか?



そして また 春がめぐって来た


手習い所の神社の桜が満開だ 

病弱だった私が 初めて見る満開の桜になぜか涙を流してしまったら、みっちゃんが 心配して、お兄さんがこの前の若い衆に仕返しをした話をしてくれた。


寄合の時に怖い物の話になったから、お兄さんは「まんじゅうが怖い」と言って 若い衆からお饅頭を沢山せしめたんだって。

お兄さんが「今度はお茶が怖い」と言ったところでは二人で笑い転げてしまった。


お兄さんはおまんじゅうのお礼だと その後で若い衆にお酒をおごって仲直りしたんだって。 

流石 伊勢屋の若旦那さん これで仲良しになるといいね



手習い所の帰りに 与太さんと熊さんに会った 熊さんの赤ちゃんは長太郎ちょうたろうと名付けたそうだ。おじいちゃんが考えた 長い という字が入っていてなんだか嬉しい。


社の桜が満開だと話したら 長屋で花見に行こう と言いだした。


お花見!なんて聞いたことしかない。

風にあたると風邪をひくからと お花見をしようなんて考えたこともなかったけれど 

二人分の命が入っているせいか 人並には丈夫になったと思う


こういうおねだりは やっぱり おばあちゃんにお願いしよう



ほらね!

お父さんとお母さんは 風邪を引いたら大変だと渋い顏だったけれど 近くならばすぐかえってくれるからと おばあちゃんが押し切ってくれた



いつも手習いに行く神社だけれど 長屋の皆さんもお誘いしての 初めてのお花見にウキウキする

金ちゃんも 長太郎ちゃんでさえ嬉しそうだ。


「大家さん これはかまぼこですか?」

「店賃払わないお前たちには 大根で充分だろ?」


え? なんだか 子供でも心配になるようなことおじいちゃんが言ってる


「わあ あたいの好きな 卵焼き!!! じゃないや たくわんだ」

カメちゃんが すごくガッカリしてる


大丈夫よ 私もお重持ってきたからね

ちゃんと 卵焼きも かまぼこも入っているからね ほら


「ああ おマツちゃんのお重にはホンモノの卵焼き入ってる わーい!!」

「なに!! こっちにもよこせ~!!」

「かまぼこもあるぞ!」

「おおお!!」


盛り上がってよかったわ

あ! 湯呑をあおった留さんが噴出したわ


「大家さん これ お酒じゃなくて お茶?!」

「おちゃけ?!」

留さんが がっかりしているけど この人たちが酔っ払いになるのは危険だって

父さんと母さんが揃って言っていたから これは聞こえないことにしよう


「気分 気分 気分で 酒の味するぞ!」

「そうだなあ おお 酒飲んでる気になって来たよ」

「お茶け でも 酔える気になって来たぞ~」


ねえ みなさん 桜を見ようよ~!!ほら 見て~ 桜吹雪が綺麗だよ

お茶で酔っぱらうのやめて!!


「あ!!おマツちゃん」

「はい!?」

「きっと これから先 良い事があるよ!」

「え?」

「ほら こっちの湯飲み 酒柱がたってる」



うん 私 毎日 とっても幸せです 楽しいです

ありがとうございました


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― 新着の感想 ―
[良い点] 知ってる落語がいっぱい出てきて、とっても面白かったですよ~。 ( *´艸`)
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